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四将・アルヴィース

 「いやはや、あの娘も強くなったものだな」


 ロンディルシアの猛攻を無傷で防ぎ切ったレミィの姿を見て、丁度タツミの放った炎弾を魔弾で弾きながらアルヴィースは微かに笑った。


「言っただろ? 彼女の術があんな雑な技一つで破られるわけは無いとさ」


 そう言い返してタツミは両手に生み出した二本の雷の槍をアルヴィースへと投擲する。それをアルヴィースは魔力を纏わせた両手で当然のように弾き飛ばし、二人はまた、睨み合う。


 それにしても緊張感のない戦いだと、大して変化のないアルヴィースの表情を観察しながらタツミは思った。


 二人の戦いは傍から見れば一つの読みの間違いが即敗北へと繋がるギリギリの戦い、強者と強者のぶつかり合う死闘に見えるかもしれない。が、しかし、実際にアルヴィースと戦っているタツミからすれば、この戦闘は違和感の塊でしかなかった。


 使用してくる魔法はどれも魔法初心者が使うような下級のものばかりで、ブラックロータスに属する者達が使うオリジン・アーツと思しき術は一切使っては来ない。かといって、本人の実力が足りないのかと言われればそうではなく、魔法と妖術を織り交ぜた多種多様な攻撃はどれも的確に防がれるのだ。


「あんた。本気で戦う気、無いんだろ」


 これならどうだ、と、百近い雷の矢をアルヴィースの頭上に降らせながら聞く。決して弱くはない、あのリュウカですら一発で気を失う程の雷を秘めた矢だ。そうだというのに、アルヴィースはその場から一歩も動くことなく、まるで埃を掃うような軽い手つきで矢を跳ねのけた。そして微かに笑う。


「フッ。まぁ流石に露骨すぎたか。だがまぁ、なんだ、お前を舐めてかかろうとか、そういうつもりはないんで、誤解を生んでしまっているのならすまない。あそこにいるロンディルシアと違って、私には別に戦う理由がないんでね。何というか、これは時間稼ぎであり、偽装なのさ」


 数発の魔弾がアルヴィースの掌から放たれる。相変わらずどれも弾速は遅く、躱すことは容易い。


「偽装だと?」


「ああ、その通り。もともと私は今回の襲撃に加わる気はなかったんだが。とあるスジからこの島にレミィや元魔王が来るという情報を手に入れてな。私の計画の実行には最適と踏んだのだ。あぁ、勘違いしないでくれよ。計画というのは何もこの国を滅ぼそうとか、そういう類のものではない」


「だからと言ってあんたを見過ごす理由にはならないな。実際にあんたのお仲間のおかげでうちは被害を被っているんだから。それに、僕の役目はこの桜花を守ることなんでね」


 タツミの身体から蒼の炎が溢れ出し、一体の美しい龍の姿となって彼の身体を覆うように蜷局を巻く。


「ここからは全力で行かせてもらう……!」


 タツミの一言で、蒼炎の龍が大きく口を開き、アルヴィースへ目掛けて巨大な蒼い火球を吐いた。


「ふむ……。確かにお前の意見ももっともだ。……それでは私も少しばかり本気で行こうか」


 迫り来る火球を前にアルヴィースは胸元を開き、そこに埋め込まれた眼の姿を露にした。そして両手を火球へと向け、唱えた。


「……原初の大神雷(インドーラ・レイ)


 この戦いで初めて放たれた、アルヴィースのオリジン・アーツ。紫色を帯びた無数の雷の糸は互いに絡まり、捻じれ、ロンディルシアのオリジン・アーツと同様の螺旋の奔流となって火球へと走る。


 直後、炎と雷、互いに熟練した妖術とオリジン・アーツが激突し、一瞬一つの強大なエネルギーの塊となった後、その力は激しい閃光を伴う爆発となって辺り一面を飲み込んだ。

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