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【完結】淵緑の魔女の苦難~秘密の錬金術師~  作者: 山のタル
第五章:絡み合う思惑

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77.計画進捗状況

・各硬貨の詳細

青銅貨せいどうか:青銅製の硬貨。一般に大量に出回っている。

↓×10枚

黄銅貨おうどうか:黄銅製の硬貨。青銅貨より価値があるが、こちらも大量に一般に出回っている。

↓×10枚

白銅貨はくどうか:白銅製の硬貨。黄銅貨より価値がある。

↓×10枚

大白銅貨だいはくどうか:白銅貨よりサイズの大きい硬貨。白銅貨より価値が高い。

↓×100枚

銀貨ぎんか:銀製の硬貨。裕福な家庭ではないと中々お目にかかれないほど価値がある硬貨。

↓×10枚

大銀貨だいぎんか:銀貨よりサイズの大きい硬貨。貴族の人達がよく使う。

↓×100枚

金貨きんか:金製の硬貨。大貴族の人達がよく使う、非常に価値の高い硬貨。

↓×10枚

大金貨だいきんか:金貨よりサイズの大きい硬貨。国家運営レベルで使われる硬貨。

↓×100枚

白金貨はっきんか:白金製の硬貨。国家予算並みに価値のある硬貨で、まずお目にかかることは無いほど希少。

 ある日の夜、殆どの家の灯りが消え、多くの人が夢の世界へ旅立つ時間帯に私達は集まっていた。

 私達がいる場所は、以前セレスティア様が貿易都市で購入された拠点の応接間だ。

 集まったメンバーは、私、ニーナ、サムス、クワトル、ティンクのいつもの使用人五人と、最近新しく仲間となったシモンを加えた六人だ。


「みんな集まったわね」


 私はそう言って全員を見渡し、話を始めた。


「早速だけど、先月の収入はどれ程でしたかサムス?」

「はい、先月は全員分合わせて、銀貨1枚と大白銅貨45枚でした」


 そう言ってサムスは、お金が擦れてジャラジャラと音のする革袋をテーブルの上にドンっと置いた。袋の膨らみ方からして、明らかに申告した量より沢山の硬貨が入っているが、多分青銅貨や黄銅貨のような細かいお金は端数として切って言ったのだろう。


「内訳はクワトルとティンクが銀貨1枚と大白銅貨10枚、僕が大白銅貨20枚、カグヅチさんの売上金が大白銅貨8枚、ニーナが大白銅貨7枚になってます」

「今月は多いですね」

「ええ、魔獣討伐の臨時報酬を貰った月を除けば、月最高額を更新しました」


 サムスの話しによると、貿易都市で一般人が一月で稼ぐ平均額は、大白銅貨1~2枚前後らしい。

 それから考えると、サムス達の収入はかなり良い部類に入る。これは全員の努力のお陰だ。


「毎月安定して稼いでいるのはサムスですが、一発の報酬の大きさはクワトルとティンクですわね。それに比べて私は予定より稼げていますけど、三人と比べると少々物足りないですわね」


 ニーナの稼ぎは平均から見れば十分多い方だ。ただし、私達の計画をいち早く達成することを念頭に置いて見たなら、より多いに越したことはない。

 しかし、職場や立場が違えば給料が違うのは当然で、当初はそれを承知でそれぞれの得意分野を活かした仕事先を見つけたはずだ。でも、他より自分の稼ぎが少なくて焦るニーナの気持ちもよく分かる。


「ニーナ、何か収入を増やす当てはあるの?」


 私のこの質問にニーナは少し考えてから答えた。


「正直、現段階では微妙ですわね。美化清掃員としてこれ以上の立場を望むなら、働く側から取り仕切る側に回らないといけないですわ。しかし、入って数ヵ月の若輩者がいくら活躍したところで簡単にはなれないですし、むしろその若輩者が今の立場を任せられていること自体が異例らしいですわ。

 それに、そもそもそんな立場になったら、私自ら掃除をする機会が無くなるので論外ですわね。私自身、今の立ち位置はかなり気に入ってますのよ!

 それと宿屋の方ですが、オーナーからは気に入られていますが、昇給の見込みが無さそうなのでこちらもイマイチですわね」


 つまり、ニーナの現状でこれ以上の収入を見込むのは難しいみたいだ。

 仕事先を増やせれば収入の底上げもできるだろうけど、それをすると絶妙な時間調整で働いていたニーナが屋敷に帰ってくる時間が無くなってしまい、セレスティア様に奉仕することができなくなる。私達はセレスティア様の使用人である以上、それだけはあってはならない。なので、仕事を増やす案は却下だ。


「だったら宿屋を辞めて、新しい仕事を探すのはどうかな? ニーナは手先が器用だから、家具屋さんとかいいんじゃない?」


 ティンクのこの提案は悪くない。昇給の見込みがないならそこを辞めて、それ以上の稼ぎが出せる所で働けばいいと考えるのは普通のことだ。

 私もこの考えには賛成だったが、ニーナとサムスは違う考えのようだ。


「ティンクの意見は尤もですけど、家具屋は止めた方がいいですわね。家具は豪華な物なら貴族やお金持ちにそれなりの値で売れますが、それ以外の大衆向けとなると、安く買えて長く使えるものが主流なりますわ。

 だから、作ったところで大量に売れることは少ないですし、かと言って家具の修理や修繕なども同時に受け持ったとしても、収入の増加は微々たるものにしかならないと思いますわ」

「それと、もし新しい仕事を探すにしても、最低でも宿屋の給料を超えていることが条件です。ニーナが宿屋の仕事で得ている給料は約大白銅貨2枚……。ニーナの仕事は美化清掃員がメインなので、それに合わせたシフトが自由に組め、尚且つ今の宿屋よりも高収入な仕事なんて、簡単に見つかるとは思えませんね」


 確かに二人の言う通りだった。新しい仕事を見つけたとしても、それが宿屋より収入が少なければその分計画が遅れることに繋がりかねない。ニーナが働いていた宿屋は少し高級な宿屋なので、美化清掃員の仕事に合わせて少ししか働いてなくても、そもそもの給料が良かったから月に大白銅貨2枚も稼げていたのだ。

 働く日数が同じで、月に大白銅貨2枚以上を稼げて、ニーナの得意なことが活かせる仕事なんてそうそうあるわけがなかった。


 その後もみんなで話し合ってみたが良い代案は出ず、ニーナの件は一旦保留にすることになった。そして、稼ぎが多く安定いているサムスと、稼ぎは安定してないが一発がデカいクワトルとティンクは現状維持でいくことになった。

 そしてセレスティア様がミーティアという偽名を使って取引契約したカグヅチさんという鬼人の方は、クワトルとティンクの宣伝効果が効いて他のハンター達が店に来ることが多くなったそうだ。その数は日に日に増えているらしく、売り上げも右肩上がりらしい。最近はハンター以外のお客さんも来るようになって、客層にも幅が出始めてきたそうで、こちらも順調だという。


 そうして、お互いの近況に雑談を交えながら話をしていると、サムスが思い出したように突然新しい話題を切り出した。


「そう言えば、この新しい拠点はどういった感じにしますか?」

「どうとは?」


 サムスの言いたい意味が分からず、私は咄嗟に聞き返した。


「今この拠点には僕、ニーナ、クワトル、ティンク、シモン、チェリーの五人と一匹で暮していますが、僕とニーナは仕事で基本的に夜遅くまでいません。クワトルとティンクに至っては、依頼によっては何日も帰らないことが多いです。ということは、拠点の現在の警備はシモンとチェリーに任せている状況です。

 シモンは元軍人だったので腕は立ちますし、念のためにセレスティア様が用意したゴーレムを多数忍ばせているので大抵のことは大丈夫だと思いますが、想定外の何かがあった時にシモンとチェリーだけで対応できるか正直分かりません。まあ、この貿易都市でそんなことを仕出かす輩がいるとは考えにくいですが、万が一が無いとも言い切れません。

 この家は一時的な拠点とはいえ、屋敷に繋がる転移陣や、カグヅチさんの所に卸す沢山の素材やら、他にも世間に知られてはいけない秘密が多くあります」

「つまり、警備面をもう少し強化したいと?」

「端的に言えばそういうことです」


 サムスの言うことは一理ある。サムスは別にシモンとチェリーのことを信頼してないわけではない。ただ、シモンとチェリーの実力はセレスティア様の用意したゴーレムよりも低いので、何かあった時に不安があるだけなのだ。

 シモンもそこは理解しているようで、小さな声で「申し訳ないです……」と言葉を漏らしていた。


「何か具体的な考えはあるの?」

「ええ、つい先ほど思い付いたものがあります」

「それは?」

「ニーナに宿屋を辞めてもらい、空いた日に拠点の警備をしてもらおうと思います」


 サムスの話はこうだ。現状で昇給の見込みがない宿屋の仕事を続ける意味がないので、美化清掃員の仕事はそのままに宿屋を辞めて、仕事の無い時間は拠点の警備やその他の事をニーナに取り仕切らせるつもりらしい。


「私は構いませんが、それをして計画は大丈夫なのですか?」


 ニーナの心配は尤もだが、サムスはそれにどうということはない様子で答えた。


「収入が減る心配は当然ですが、問題ありません。現状を見る限り、計画は予定以上に上手くいっていますし、カグヅチさんの店も繁盛し始めています。こちらの将来性を考えれば、もうしばらくすれば宿屋の収入を上回ると思いますので、ニーナが宿屋を辞めても特に問題はありません。

 それにもし、カグヅチさんが何か失敗して収入が減ることがあれば、その時はニーナに動いてもらえばいいだけです。ニーナにはそうなった時の為の別の方法をそれまでに考えてもらおうと思いますが、いいですか?」


 サムスの話を聞いてニーナは少し考えてから、私に訊ねてきた。


「……アインは、どう思いますか?」


 サムスの考えにおかしな所はなく、ニーナは最終決定をリーダーの私に委ねたようだ。


「サムスがそれでいいと計算しているなら、私もサムスの考えに賛成したいと思います。あとは、あなたがどうしたいかですよ、ニーナ?」


 そう言われてニーナは全員の顔を見回した。全員の表情は「ニーナの判断に任せる」と言った顔で、ニーナの答えを待っていた。


「……分かりました。私もサムスの考えに異存はありませんわ」


 ニーナはサムスの考えに同意したことで、ニーナの今後の行動も決定した。


「決まりね。それじゃあニーナは明日からサムスの言った通りに行動してもらうから、この拠点の警備の全権を任せるわ! それと、もしもの時の為の仕事を考えておいてね!」

「了解しましたわ!」

「そしてシモンはこれからニーナの指示通りに動くこと! チェリーにもそう伝えておいてね」

「はっ! 分かりました!」

「サムス、クワトル、ティンクは今まで通りに行動し、何かあればいつものように私かセレスティア様に直ぐに連絡を取ること!」

「「「了解!」」」

「では、今日はこれで解散!」


 計画に少し修正が入ったものの、概ねいい方向に転がりそうなので一先ずは良かった。


「さて……、マイン公爵様に連れて行かれたセレスティア様に今決まったことを連絡しないと」


 そう言いながら、私は転移陣を使って屋敷へと戻った。


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