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【完結】淵緑の魔女の苦難~秘密の錬金術師~  作者: 山のタル
第一章:計画始動

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14.設定

「あ、セレスティア様、もう大丈夫ですよ」


 私達が貿易都市を出発して貿易都市の輪郭が見えなくなった辺りで、馬車に乗ってからモランと色々話をして仲良くなっていたティンクが、突然私に向かってそう告げてきた。


「やれやれやっとね……一体いつまで見てくるつもりなのかしら? 毎回こんな感じだと嫌になるわね」

「でもセレスティア様はまだマシな方ですよ? あまり貿易都市に来ないセレスティア様より、ずっと貿易都市に居るティンク達はずっと見られてて、気を抜く暇もないくらいだもん」


 感覚の鋭いティンクがこう言ってるのだから、監視の目に相当参っているのだろう。

 しかしこればかりは私でもどうにも出来ないから、時間で解決するしかない。出来ることというと、早い内に監視の目が私達から興味を失うように極力目立つ行動を避けて活動するだけだろう。

 ……そうは分かっていても、それが何時(いつ)になるのかが分からないのが嫌になる。


「……あの、ミーティア様? 先程から一体何のお話しをしてるのですか? ……それにティンクちゃん『セレスティア様』ってどういう事?」


 そういえばモランには「詳しいことは馬車に乗ってから」と言って、まだ()()()私達の事は話してなかった。

 と言っても監視の目があるうちは話せない内容だし、ティンクもその辺は解っててここに来るまでモランとは世間話程度しかしていなかった。

 モランからすれば、いきなり訳の分からない話を始めた私達の会話についてこれなく疑問符を浮かべるのは当然だ。

 それにしても、既にティンクを『ちゃん』付けで呼ぶほどの仲になっているとは、子供のコミュニケーション能力は凄いわね。


「モラン、馬車に乗ってから詳しいことを話すと言ったのは覚えているわね?」

「はい……」

「実は私達は少し事情があって外では……主に貿易都市内でだけど、素性を隠しているの。ああ、別に悪いことをしてるとか後ろめたい事情があるとかいう訳じゃないから安心してね。

 ……ちょっと前に求人募集を出す為に貿易都市を訪れた時に色々あってね、貿易都市側が私達の事を見張ってるみたいなの。それに下手に関わって面倒事になるのは出来れば避けたいから、貿易都市では私達の素性を隠して行動しているのよ」


 私達が素性を隠していた事にモランは少し驚きはしたが、事情があっての事だと説明すると妙にすんなり納得してくれた。


「じゃあ、改めて自己紹介するわね。私の本当の名前は“セレスティア”。モランが今から行く屋敷の主よ。さっき言った通り、訳があって貿易都市では“ミーティア”という仮の名を使っているわ」

「ティンクとクワトルは名前は変えてないからそのままで大丈夫だよ! ティンク達は今はハンターだけど、本当はセレスティア様のお屋敷で働く使用人なの!」

「二人とも今は事情があって貿易都市で働いているけど、時間が出来た暇な時は屋敷に戻って働いているわ。つまり二人ともモランの先輩になるから何かあったら頼りにしなさい」


 私達はモランに改めて自己紹介をした後、資金を稼ぐという私達の計画と貿易都市内で使用している私達それぞれの設定も説明しておいた。


 私達が初めて貿易都市に行ったあの日、案内所の受付で私に何らかの術で干渉しようとしてきたあの受付嬢……屋敷に戻ってミューダに聞いたところ、術の正体は恐らく“見る術”の類いの可能性が高いそうだ。

 記憶か思考か内包している魔力の量かその他の事か……詳しくは分からなかったそうだが、とにかく対象の()()()()()術であるのは間違いないらしい。


 そんな術を使える人が中央塔という重要施設にいるということは、中央塔を訪れる人達を人知れず監視する役割をしているのだということは容易に想像できた。

 ……だがそこに術が効かない者が現れればどうするだろうか?

 普通に考えればそんな怪しい者が来たことを上に報告するだろう。そして今度は直接的な干渉、もしくは監視をしてくるはずだ。……そして実際、今そうなっている。

 監視されているところで変な動きをしてしまえば計画の進行が厄介な事になる可能性が極めて高かったので、今は当初から作っていた当たり障りのないキャラ設定を活かし、私達の存在を誤魔化してやり過ごそうとしている所である。


 設定の内容だが、私はプアボム公国辺境で活動しているミーティアという名の地方商人で、貿易都市には屋敷の新しい使用人を探しに来た。

 そのついでに、貿易都市で(あきな)いの手を新しく広げられないかを探りに来たということにしている。

 ニーナ、サムス、クワトル、ティンクの四人はミーティアの知り合いで、貿易都市での生活に憧れてた四人はミーティアが貿易都市に行くことを知って付いて来たという設定になっている。

 この大陸では自分の夢、主に仕事の成功を夢見て、それを叶えるためにあらゆる人や物や技術が集まる貿易都市に出て来る田舎者はかなり多いらしい。

 そこで、ニーナ達四人もそれぞれの夢を目指してやって来た田舎者という設定にしたのである。


「――という訳で、モランは抜けた四人の使用人の穴埋めをしてもらう事になるわ。やることは沢山あるけど、焦らずに一つずつ覚えていってちょうだい」

「はい、よろしくお願いします!」


 一通りの説明を終え、私はモランと改めて握手を交わした。

 これで本当の意味で私達はモランという少女を新しい使用人として迎え入れることになった。


 モランが本格的に仕事を始めるのは屋敷に着いてからになる。なのでそれまでにティンクやクワトルから屋敷で働くための基礎を聞いておくようにと言っておいた。

 このまま順調に進めば、屋敷にはあと三日ほどで到着するだろう。

 クワトルとティンクとモランはお互いに話し合ていることだし、その間に私は屋敷に戻ってから再開する予定の研究や、やってみたい実験を紙に纏めておくことにした。


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