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【完結】淵緑の魔女の苦難~秘密の錬金術師~  作者: 山のタル
第七章:世界大戦へ再び……

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129.王都防衛戦1

先週投稿できずに申し訳ありませんでした……m(_ _)m

 そして翌日、遂にサピエル法国軍がムーア王国の王都の目前に到達した。

 王都に残った6つの騎士団全てが、城壁の前に整列し、目の前に迫ったサピエル法国と“王権派”の混成軍と対峙した。


 ムーア王国軍の数は7~12の6騎士団30万人と、1~6騎士団が防衛兵力として残していった10万人を足した40万人。

 対するサピエル法国軍は、サピエル法国軍40万と裏切った“王権派”の領主軍10万人を足した50万人だ。


 眼前に広がるように布陣するサピエル法国軍と“王権派”の50万の混成軍を、最前線の天幕の外から眺めている人物がいた。金色のセミロングの髪を(なび)かせる目力の強いこの男は、王国軍第7騎士団・団長の『ローソン・レヴェル』である。

 ローソンは今回の防衛戦の総指揮官を任されており、今は敵の僅かな動きすら見逃さないように敵陣の様子を観察していた。


「お疲れさん、ローソン」


 そんなローソンに気さくに話しかけてくる人物がいた。

 視線を動かすことなく声色だけで背後から声をかけてきた人物を特定して、ローソンは返事を返した。


「なんだダレン? 準備が終わったのか?」

「ああ。だから見張りの交代に来たぜ!」


 周囲に漂う緊張感の影響を受け付けていないかの様に気どらない態度をしている彼は、王国軍第9騎士団・団長の『ダレン・バンバー』である。

 ダレンは今回の防衛線で、城門前に整列した王国軍の中央部隊の副官を任せれている。つまりは、ローソンの副官ということだ。

 先程まで中央部隊の編成と最後の調整を行っていたが、それを終えた報告ついでに見張りの交代をしようと、こうして指揮官であるローソンの元にやって来たのだった。


「ああ、助かる」

「それで、敵の様子はどうなんだ?」

「変わらずだ。あそこに布陣してから全く動く気配が無い」


 そう言ってローソンは顎をクイッと動かして眼前の敵陣を指し示した。


「本当だな。……でも、その方が俺達にとって都合がいいんだろう?」

「そうだ。俺達の目的はあくまでも援軍が到着するまでの時間稼ぎだ。王都を防衛をしつつ、奴らをここで足止めするのが国王陛下からのご命令だ」


 ローソンはムーア44世からの命令を反復する様に、ダレンに言い聞かせた。

 しかしダレンはその命令の内容に納得してはいないようだった。


「でもなローソン、俺が気になってるのはそこなんだよ! 時間稼ぎと足止めと防衛が目的なら、なんで俺達は全軍で城門前に布陣してるんだ? 時間稼ぎをするなら籠城することが戦略的には一番得策なんじゃないか?」


 ダレンの言っていることは尤もだった。

 時間稼ぎが目的であれば、攻略までに時間のかかる籠城戦に持ち込むことが一番だ。そうすれば王国軍側の戦力を温存しつつサピエル法国軍の戦力を削ることができ、尚且つ援軍までの時間を最大限稼げる。


 そのはずなのに、全軍を王都から出してサピエル法国軍と対峙させているこの状況が、ダレンは不可解に思っていたのだ。

 そしてローソンも、ダレンと同様の疑問を抱いていた。


「ダレン、お前の言いたいことは俺にも分かる。確かに時間を稼ぐなら籠城戦に持ち込むことが一番だ。

 ……実は俺はその事を国王陛下に聞いたんだが、国王陛下、というより、カンディ殿の考えは違うところにあるらしい」

「と言うと?」

「カンディ殿が言うには、この戦略は敵の選択肢を減らすためらしい。

 籠城戦になれば俺達は王都の外に出ることは出来なくなる。一方でサピエル法国軍は自由な行動が出来る。もしサピエル法国軍が王都攻略を優先せずに、俺達を牽制する最低限の人数を残して王都を無視して貿易都市やプアボム公国に向かえば、援軍到着前に俺達は行動を強いられることになる」

「確かにそれはその通りだが、見てみろローソン。奴らの軍勢は報告によると約50万だ。もしカンディさんの言う通りになったとしても、戦力を割いたら兵力分断になって不利になるのは奴らの方なんじゃないのか?」

「その通りだ」


 ダレンの主張をローソンはあっさりと肯定した。それはローソンもダレンと同じことを考えていたからに他ならない。


「だがカンディ殿はそこに危険があるのではないかと考えているようだ」

「どういうことだ?」

「考えてもみろダレン。サピエル法国軍は二つの国から宣戦布告されて、戦力的にも状況的にも圧倒的に不利な状況に陥ったにも関わらず、こんなにも早く軍を動かして先手を取って戦争を、電撃戦を仕掛けて来たんだぞ? それも“王権派”の連中をあっさり味方に引き込んでだ」

「……つまりサピエル法国には、その不利な状況を覆せるくらい自信のある“何か”がある、ということか?」

「少なくともカンディ殿はそう考えているらしい。だからまずは電撃戦の利点と戦略的選択肢を消す為に、俺達をこうして対峙させて時間を稼ぐと同時に、その思惑も探ろうとしているみたいだ」

「なるほどな」


 サピエル法国軍の戦力は“王権派”を含めても目の前に見える50万しかいない。数だけで言うなら50万と言う数字はプアボム公国全体の兵力よりも多い。

 しかしムーア王国の戦力は、王都の騎士団だけでも60万。ブロキュオン帝国に至っては、100万を超える大軍を有している。

 それらと戦うことを考えれば、50万という数字がどれほど絶望的かは明らかだろう。


 だがそれを分かっていながらも、サピエル法国は現にこうして進軍して来た。それも予想外の速さでだ。まるで、最初から戦争をするつもりで準備でもしていたかのように……。

 もしそうだとしたら、勝算のある“何か”、つまり“切り札”をサピエル法国は隠し持っているとカンディは踏んでいた。

 勿論これが只の自棄糞(やけくそ)の可能性も捨てきれないが、“王権派”がアッサリと寝返っている事実からその確率はかなり低いものであるとカンディを含め、ローソンもダレンも確信していた。


「まあそういうわけだ。さて、俺はお言葉に甘えて少し休ませてもらうとしよう。ダレン、敵陣の僅かな動きも見逃すなよ? 何かあればすぐに呼び起こしてくれ」


 そう言ってローソンは背後の天幕の中へ入り、休憩を取ろうとした。

 しかし、ダレンはローソンを呼び止めた。


「まて、ローソン」

「ん? まだ何かあるのかダレン?」

「……どうやら敵さん、休憩させてくれる気はないようだぜ?」

「何ッ!?」


 ローソンは慌てて天幕に入ろうとしていた体を捻り、ダレンの横に立ち、ダレンの指差す先を凝視した。


 そこには敵陣の中央から、王国軍の方に向かって歩いてくる一人の人物がいた。

 その人物は真っ白で綺麗な装飾が施されたローブに身を包み、ゆっくりと、しかし堂々とした足取りでローソン達の方へと向かって来ていた。

 その人物との距離はまだ遠く、ハッキリと顔を(うかが)い知ることは出来なかったが、ローソンとダレンはその人物の目的を探ろうと必死で目を凝らして観察した。


「どう思うローソン?」

「……背後の敵軍の動きが無いことを見ると、こっちに向かって来ているあれはおそらく使者だろう」

「俺も同意見だが、妙な感じがする……」


 開戦前に使者を通して意思を伝える事はよくあることだ。

 基本的な戦争の暗黙の了解として、使者は情報や意思を伝える役目の者なので手出しは禁止とされている。

 だからあの人物が使者だとするなら、それなりの対応を取る必要がある。そしてその役目は、総指揮官であるローソンがしなければならない。

 しかし最後にダレンが呟いた言葉に、ローソンは思うところがあった。


 ローソンとダレンは騎士団では同期で年齢も近いことがあって仲がいい。しかしその思考回路は真逆なのである。

 理論思考型のローソンと違い、ダレンは直感で物事を捉え思考するタイプだ。そしてダレンの直感は恐ろしいくらいの的中率を誇っている。

 ローソンはそれをよく知っているからこそ、ダレンが呟いた言葉を重要視することにした。


「ダレン、出迎えは頼む。もしあの人物が使者ならば天幕まで通してくれ」

「了解だぜ。……でも、もしアレが使者じゃなかったらどうする?」

「……その時はお前に対応を任せる。責任は俺が取るからお前はお前の直感で行動しろ」

「分かったぜ!」


 ダレンはそう言うと近くの馬に跨り、迅速に行動を開始した。

 それを見送ったローソンは兵達に状況を伝え、いつでも行動を開始できるように準備させるのだった。



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