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【完結】淵緑の魔女の苦難~秘密の錬金術師~  作者: 山のタル
第一章:計画始動

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幕間1-2.見透しの称号を持つ者2

「今日の昼の3時(15時)過ぎの事です。初めて貿易都市に来たと言う5人組が私の所に来たのですが……信じられないことに、“私の能力”が防がれてしまいました」

「なんですと!?」

「……」

「あらら~……」


 三者三様の反応だったが、3人とも驚愕していることは間違いない。


「その5人全員に“見透し”の能力が防がれた。それが本当なら大変な事ですぞ!?」

「いえ、正確に言うなら、防いだのは5人組のリーダーと思われる人物だけです。他の4人とは話が出来なかったので、能力が防がれるかどうかはまだ分かりません」

「……それでもそいつらが危険な存在である可能性が無くなるわけじゃない」

「“隠者(いんじゃ)”の言う通りですね~。たとえ能力を防げるのがそのリーダーだけだったとしても、“見透し”の能力が防がれたという事自体が前代未聞である事に変わりはないです~。……そして他の4人にも能力を防げる可能性がある以上、その5人組が危険な存在かもしれない可能性は無くならないですね~。まあ、能力が通じなかった原因で他に考えられるとすれば~……」


 “智星”はそこまで言って、何故がベルに視線を向けてまま黙ってしまう。

 “智星”が何故そんなことをしているのか、ベルだけは理解していた。


「――どうやら“智星”は『私の能力が(おとろ)えて見透せなくなっていた』可能性を考えているようですね。しかし、これでそのような事が無いのは証明されたと思いますが?」

「流石“見透し”! 私の考えていたことを見透されてしまったわ~!」


 そう言って驚いてみせる“智星”。

 その仕草が下手な芝居の様にワザとらしかったが、実際ワザとなのだからその通りである。


 ベルが彼等に“見透し”と呼ばれているのには理由がある。それは“智星”相手にしてみせたように、『相手の考えていることを見透せる能力』を持っているからに他ならない。

 この能力は、相手が発した言葉の裏に隠している考え、つまり『心の声』を文字として目で見る事が出来るという能力だ。ベルは普段からこの能力を使い、案内所にやって来た人物が貿易都市にとって有害か無害かを見極めているのである。

 ただしこの能力には一つ大きな欠点がある。それはこの能力の発動条件が、()()()()()()()()ことだという事だ。

 つまり言い換えるなら、見透したい相手と会話が出来なければ能力が発動出来ないのである。

 ベルは5人組のリーダーとしか会話が出来なかったので、リーダー以外の4人の心を見透すことが出来なかった。

 だから「他の4人にも能力が防がれるかどうか分からない」と言ったのである。


「なるほど、“見透し”の能力が衰えておらず、健在なのはわかりましたぞ。――しかし、同時に能力が通じなかった事実の証明にもなってしまいましたなぁ」

「……“陽炎(かげろう)”の言う通りだ。その5人組のリーダーとやらが“見透し”の能力をどうやって防いだかは知らないが、そいつらは間違いなく要注意人物だ」


 “陽炎”と呼ばれた白髪の老人と“隠者”と呼ばれた黒ローブの男の言う通り、今の一連の流れでベルの能力が防がれた事は疑いようの無い事実となり、彼等にとって頭が痛くなる結果となった。


「先程“智星”が言った通り、私の能力が防がれたことは今まで一度もありませんでしたし、あり得ませんでした。……しかし、現実としてこんな事になり、私はどう対処していいのか正直分かりません。なので、是非3人の意見を聞かせて欲しいのです。……この事態、どう対処するべきだと思いますか?」


 会話が可能な相手で自分の能力が防がれた事など今まで一度も無かったベルは、あの得体の知れない5人組にどう対処するべきか悩んでいた。

 この緊急ミーティングを開いたのは、3人にこの事実を伝え、どう対処するべきか意見を聞くためである。

 ベルの話を聞いた3人はしばらく考えた後、それぞれの意見を述べ始めた。


「……俺としては、そんな危険な奴等をこの都市で野放しにすることは不味いと考える。……早い内にそいつらを始末するのが良いと思う」

「儂も“隠者”と同じ事を考えましたぞ。……しかし、まずはその5人組がこの都市に何を目的として訪れたのか、それを探るのが先決だと思いますぞ。その結果、この都市に害をもたらすと判断すれば、その時に始末すれば良いのではないですかな?」

「そうですね~。私も“陽炎”と同じく、5人組の目的を先に確かめるのに賛成です~。有害なら始末又は追放、無害なら放置、有用なら利用する。とりあえずそんなところでどうでしょうか~?」


 “隠者”と“陽炎”の意見を“智星”が一つの意見に纏めて、3人に判断を仰ぐ。


「……それもそうですね。私は“智星”の意見に賛成です」

「ふむ、儂もそれで異論は無いですぞ」

「……お前達がそういうなら俺にも異論はない」


 3人とも“智星”の意見に不服は無かったようで、これで彼等の方針が決定した。


「決まりですね~。ではまずは“隠者”に監視をしてもらい、そして私達もできる限りの接触を図って情報を集めましょう~。そして集めた情報を元に、今度はここに居ない4人も含めた『八柱協議(オクタラムナきょうぎ)』で結論を出す事にしましょうか~」

「うむ、それが良さそうですな」

「……わかった」

「わかりました」


 こうして緊急に開かれた会議は、思ったよりもスムーズに終わりを迎える……はずだった。



 ◆     ◆



「ところで、“見透し”~? 行動を開始するにしても、まずはその5人の外見や特徴など教えてくれないかしら~?」


 “智星”に言われて気付いたが、そういえば私はまだ5人がどんな外見をした人物だったかをみんなに伝えていなかった。

 これではあの5人組を探そうにも、手掛かり無しで探す羽目になる所であった。


「そう言えばそうだったわ、ごめんなさい。ええと、外見は5人とも同じ格好で、何の変哲もない新緑色のローブを着ていたわ。リーダーと思われる人物は、“智星”と同じくらいの身長で深い青色のショートヘアーの女性だったわ。他の4人はそれぞれプラチナブロンドの髪で長身の男性、私と背丈が同じくらいの黒髪の男性と青髪の女性、それとコーラルピンクの髪の小柄な少女だったわ。どう、見かけていないかしら?」


 3人は私が伝えた特徴の人物を記憶の中から探し始める。しかし――。


「残念ながら儂は見ていませんな。聞く限りでは、特に目立った格好や特徴をしているわけではないようですし……例え見かけていたとしても、見ただけでは記憶に残りづらいでしょうな」

「……俺も見ていない」


 “陽炎”の言う通り、あの5人組は目立つ格好をしていなかったし、見た目に変わった特徴があるわけでもなく、何処にでも売っていそうな至って普通のローブを着ていた。

 最近ではローブの色もカラフルになってきていて、特に森の中や草木が多い場所で迷彩になってくれる緑系統のローブは人気で、それこそ新緑色も含めて沢山世に出回っている。

 そしてローブを着た人物など、外から人が多く訪れる貿易都市には数えきれないほど存在する。その中から目的の人物を探し出すことなんて、どれだけ時間が掛かるか分からないし、例えもし見かけていたとしても記憶に残ることはまず無いだろう。

 となれば、地道に探すしか手は無さそう……だったのだが――。


「……ちょっといいかしら~?」


 そう言って、“智星”は静かに手を挙げた。


「“智星”どうしましたか? もしかして、何か心当たりがあったのですか?」

「ええ。さっきの5人組の外見を聞いて思い出したんだけど……もしかしたら私、そのリーダーに今日会ってると思うわ~」

「「なっ!!??」」

「……それは本当か、“智星”?」


 “智星”のまさかの発言に、反射的に机に身を乗り出す勢いで立ち上がる私。


「会ったって!? いつ!? 何処でですか!?」

「ちゃんと話すから、落ち着いて“見透し”~」


 “智星”の言葉に冷静さを少し取り戻し、私はすぐに椅子に座り直した。


「ご、ごめんなさい……で、その、会ったと言うのは本当なのですか?」

「確証はないけど~、その人“見透し”が言う外見とドンピシャで一致するのよ~。その人は今日労働組合に来て求人募集を出して行ったの~。それで、その担当をしたのが私という訳よ~」

「労働組合……あっ!?」


 “智星”の労働組合という単語で思い出した。そういえば私は確かに労働組合の場所をあの5人組に教えていた!


「どうかしましたか“見透し”?」


 私は5人組のリーダーが自分のことを地方の商人と言い、「自宅の使用人を募集したいが、出来る場所は無いか?」と聞かれ、労働組合を紹介した事を話した。


「なるほどのぅ。して、その人物の名前は?」

「ごめんなさい、そこまでは聞けなかったわ。でも、募集を出す担当をしたというなら“智星”は名前を聞いたんじゃないですか?」

「ええ、聞いたわよ。名前は確か……“ミーティア”と言っていたわ~」


お待たせしました、貿易都市初日編はこれで終了になります。

この辺りは物語のチュートリアル部分になるので、少し細かく書きました。そのお陰で長くなってしまいましたが…(^_^;)


次回からはもう少し話のテンポ良くして物語を進めれる様する予定です。


只今執筆しています。もうしばらくお時間を…

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