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【完結】淵緑の魔女の苦難~秘密の錬金術師~  作者: 山のタル
第六章:騒乱前夜

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115.尋問1

 数日後、目的の人物が屋敷を訪ねて来た。


「セレスティアさん! この手紙の事、詳しく話してもらいますよ!」


 息を荒くして応接室に飛び込んで来たのは、私が数日前に呼び出しの手紙を送ったオリヴィエだった。

 事が事だけに、マイン領主軍参謀長のカールステンさんもオリヴィエの付き添いで一緒に来ていた。

 とりあえず、オリヴィエの形相が怖い……。格闘家みたいな体格をしているから、相乗効果で恐ろしさ倍増だ。


「まずは落ち着いてオリヴィエ。話はそれからよ」


 オリヴィエは私の対面に座り、息を大きく吸って呼吸を整える。


「……で、これはどういうことですか?」


 オリヴィエは私が送った手紙を大きく広げて机に置いた。そこにはユノが洗脳した男から聞き出した情報が書かれていた。


「魔獣事件の犯人の背後関係と目的が分かったというのは本当ですか!?」

「本当よ」


 堂々と即答で答える私の態度に、オリヴィエは手紙に書かれている内容が嘘じゃないことを確信したようだ。

 そもそもこれに関して私が嘘を伝える理由がない。私もある意味で事件の関係者なのだから。


「でもその話をする前に、二人に紹介しないといけない人がいるわ。入って!」


 私の呼ぶ声に反応して応接室の扉が開き、二人の人物が応接室に入って来て私の後ろに立った。


「紹介するわ、こっちの兎人(ラビットマン)はユノ。こんな見た目だけど、かつてミューダが弟子として育てた優秀な魔術師で、二人よりもかなり年上よ」

「よろしくね」

「そしてこっちのロープで縛っているのが――」

「リチェといいます。ユノ様の従順な下僕でございます!」


 キラキラした目で元気よく挨拶するリチェ。ユノが手にしているロープに縛られている状態とは思えない明るすぎる態度だった。


「「…………」」


 この訳の分からない状況に、オリヴィエとカールステンさんは無言で私を見た。……まあ、当然の反応だろう。


「ユノ」

「はい。『私が許可するまでしゃべるな!』」

「畏まりました!」


 すると、途端にリチェはピタリと口を閉じて気配も消して、本当の空気のように存在感が薄れていった。


「……説明すると長くなるから簡単に言うけど、このリチェは数日前の夜中に森に侵入して来たから、ユノがそれを返り討ちにして捕らえたのよ。その時に抵抗されない様にユノが洗脳して、こうなったわ……」

「森に侵入されたって、どういうことですかセレスティアさん!?」

「いや、そもそも洗脳って言いましたか今?!」


 簡単に説明しすぎたのか、オリヴィエとカールステンさんが食い気味で迫ってくる。


「わかったわかったから、ちゃんと一つ一つ説明するから二人とも落ち着いて!」


 それから私は、リチェが森に侵入した時の状況を一から説明した。勿論ユノの力に関してもだ。本当ならユノの力はあまり知られていいものではないのだけど、それを話さないことにはしっかり説明できない。

 まあ、二人なら私が何か言わなくても絶対に口外したりはしないから問題はないだろう。




「……成る程、経緯は分かりました」


 複雑な顔をしながらも、今の状況を理解してくれたオリヴィエ。


「それでその男、リチェから聞き出した情報がこの手紙の内容という訳ですね」

「そうよ。私達が聞き出したのはあくまでそこに書いてる簡単なことだけよ。話の内容的に、踏み込んだ事情は私達よりもオリヴィエに任せた方がいいと思って手紙を書いたのよ。だから詳しいことはまだ私も聞いてないから、自分で聞きだして頂戴ね。――ユノ」

「はい。『私達の質問に正直に答えなさい!』」

「なんなりと!」


 ユノの命令で再び再起動した様に存在感を現すリチェ。


「そういえばこれ、質問した内容次第で洗脳が解けたりはしないんですか?」


 ユノの命令通りに動くリチェを見て、カールステンさんが素直な疑問を口にした。


「それは心配ご無用よ。私の洗脳は魂を変質させるもので、私が元に戻さない限り洗脳が解けることはないわ。因みに今リチェには、今までの行動は全て主人である私の命令だったという洗脳を掛けているわ。だから私の言う事には逆らえないのよ」

「なるほど、だったら大丈夫ですね」


 ユノの説明に納得したようで、カールステンさんは尋問を開始した。


「リチェと言いましたか、あなたは何者ですか?」

「ユノ様の下僕でございます!」

「「「「……」」」」


 いやまあ、今の状態のリチェにその質問をしたらそう返すわよね……。

 ユノは呆れた表情で頭を押さえると、小さな溜息を吐いた。


「……『私の下僕』以外で質問に答えなさい」

「分かりました!」


 緊張した空気がある意味で緩んだところで、尋問は仕切り直しとなった。


「それでは改めて、あなたは何者ですか?」

「僕はサピエル法国教皇親衛隊が一人、特殊工作部隊隊長のリチェです」

「教皇親衛隊ですって!?」


 教皇親衛隊という単語に、オリヴィエもカールステンさんも驚愕の表情を浮かべる。その単語はユノがリチェから情報を聞き出した時にも聞いたけど、(うち)には政治関係に詳しい人がいなかったので名前の感じから「高い地位にいる人なんだなぁ」という認識しかしていなかった。


「そんなに驚くことなの?」


 私の素直な疑問にオリヴィエが血相を変えて答えた。


「知らないんですかセレスティアさん!? 教皇親衛隊と言えば、サピエル法国で頂点に立つ教皇の次に地位の高い人達のことです! その名前の通り教皇の周囲を護衛するのが彼らの主な任務ですが、実際は教皇直属の部下で教皇の命令一つでどんな任務でも実行する危険な奴等ですよ!」


 オリヴィエの早口の説明で、このリチェと言う男がサピエル法国の超重要人物だった事実が発覚した。私は背中を汗が流れ落ちる嫌な感覚を感じた。


「答えなさい。その教皇親衛隊が、どうしてこんなところに来たの? 目的は何?」


 カールステンさんが尋問するはずだったのに、いつの間にかオリヴィエが代わりに尋問し始めた。カールステンさんが何も言わないところをみると、オリヴィエに質問させた方が良いと判断したのだろう。


「僕達がここに来たのは、教皇様から『魔獣創造実験』の邪魔をした淵緑の魔女を調査して来いと命令されたからです」

「魔獣創造実験……? 邪魔をしたですって……?」

「はい。ブロキュオン帝国から亡命してきたヘルムクートという男が推し進めた実験のことで、その実験の舞台となったのがストール鉱山です。魔獣を人工的に生み出す実験で、それ自体は成功したのですが、魔獣は最後に討伐されてしまいました。

 その討伐を指揮したのが淵緑の魔女という伝承に伝わる人物だという情報を得たので、僕達がその調査に来たという訳です」

「……因みに、その情報はどうやって手に入れたの?」

「僕と同じ教皇親衛隊で尋問官のサジェスという男がいるのですが、僕達特殊工作部隊がストール鉱山から拉致した魔獣創造実験の時にその場にいた鉱夫をそいつが尋問して情報を手に入れました」

「「なっ!!??」」


 リチェが語った内容に、オリヴィエもカールステンさんも驚愕の表情を浮かべてた。この情報は私も初耳だったのでビックリした。まさかストール鉱山の鉱夫から私の情報を得ていたなんて……。

 でもオリヴィエとカールステンさんの驚きは、私とはベクトルの違うものだったらしい。


「……マイン公爵様、まさかこれって?」

「ええ、そのまさかかもしれないわよ……」


 二人だけで何やら通じ合ったようなやり取りの後、オリヴィエが再びリチェを問いただした。


「……答えなさい。ブロキュオン帝国での失踪者増加の件は、サピエル法国の仕業なの?」

「はい、そうです」


 オリヴィエとカールステンさんの表情が険しいものに変化した。


「やっぱり……」

「ということは、これまでの件も?」

「おそらくね」


 二人だけ納得したような口ぶりで頷く二人。事情を知らない私は完全に蚊帳(かや)の外状態だった。

 だから、興味心からつい口が動いてしまった。


「ねぇ、一体どういうことなの?」


 二人が揃って私の顔を見た。そしてコソコソと、私に聞こえないよに何か打ち合わせをし始めた。


(……あっ、これ、不味いやつだ……)


 私は本能的にそんな予感を感じた。そしてその予感は的中し、私は無意識に口を動かしたことを後悔することになった。


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