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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

アキの巣コロリ

作者: 潮路

意味がわかると怖い話(甘口)

 夏。

 山に囲まれた盆地に生息する私にとっては、クモ、ハチ、アリ、ハエなどといった虫がこぞって列をなす不快な時期である。

 部屋に常備してある電気式の蚊取り線香、各種害虫に対するスプレー缶が無くなってしまえば、私は一日を持たずして、憤死してしまうだろう。


 切れかけている氷殺系殺虫剤「エターナルフォースブリザード」を補充しに、私はドラッグストアに向かった。


 幸運なことに、目的のものはすぐに見つかった。ついでにネット上で評価されていた害虫対策グッズを幾つか合わせて、買い物カゴへと入れていく。


 この夏も平穏にしのぐことが出来ると、安堵しようとしたその時、私の足は止まった。


 あれは確か…


 私の目の前にある商品は「アキの巣コロリ」と呼ばれるスプレー缶であった。

 ネット上では「ヤバい」「最終兵器」などとただならぬ評価が付けられていた代物だ。


 アキなどという虫は聞いたことがない。

 周りの知り合いに聞いても「知らない」としか返ってこなかった。

 ネット住民の意見を聞こうにも「ヤバい」としか返答がない。

 害虫のあだ名か何かだろうか。

 それとも、最近発見された新種か、変異種の類なのか。

 謎は深まるばかりだが、商品が出ている以上、コロリする必要のある虫には違いない。


 私は、そのスプレー缶も買い物カゴに入れた。


 買ってみたはいいが、「アキの巣コロリ」には説明文が書かれていない。漆黒のメタリックボディには、商品名である「ボンバイエ」のみがデカデカと載っている。


 玄関口に巣を作り始めたクモに向かって噴射してみるが、効果はない。

 それは他の害虫についても同様であった。

 やはり、アキという虫が出てくるのを待つしかないのか。

 と言っても、アキの正体が分からない以上、相当気長に待たなくてはならないと思った。


 しかし、幸か不幸か、威力を試す機会は想像よりも遥かに早く訪れた。

 体調を崩してしまい、仕事を早退した日、私は食事中のアキと遭遇することになったのだ。


 アキは想像以上に大きかった。見た目からしてどうやらオスのようである。

 ただ、大きさに似合わず臆病なようで、私を見るなり、後ずさりを始めた。


 私はすかさず、ボンバイエを振りかけた。

 殺虫剤のメカニズムは様々あるが、どうやらボンバイエは、神経を破壊して麻痺状態にさせることにより、呼吸を不能にして殺すものらしい。


 煙を吸い込んだアキは仰向けに倒れ込み、口から泡を吐きつつ、手足をばたつかせるが、じきに動きは散漫となり、そして停止した。


 ピクリとも動かなくなったことを確認した私は、アキの死骸をゴミ袋にいれた。

 その後、ボンバイエのレビュー欄に「ヤバい」とだけ書き込みをした。 

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