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犬
重たい扉が開かれた。その部屋は真っ白な空間。その中央に座る少女が不思議そうに扉を振り向く。
「動物管理局です。その犬を渡しなさい」
黒いスーツを身にまとった大人が、その大きな手を少女に伸ばした。
少女は胸に抱いた一匹の犬をより強く抱く。
「その犬を渡しなさい」
犬に伸ばされた手を少女は払いのけて、その場から逃げ出そうと扉へ走る。
しかし、その扉から別の男が姿を現した。
少女は呆気なくその男に捕らえられて、犬を奪われてしまう。取り返そうと必死に手を伸ばすも、体ごと押し飛ばされて尻餅をついた。
連れていかれる寸前、少女は手を伸ばして名前を呼んだ。
それに対して犬は何かを呟いた。
「シアナ、ボク――」