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新感覚『般若心経』 〜蒼龍くん物語スピンオフ〜  作者: 佐藤 堅明


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2/10

第二話:カモメの視点:おじいちゃんの影を追って

孫カモメの「悟り」は、決して高尚な修行の末に得たものではありませんでした。

度重なる不運と、おじいちゃんの自慢話……。

今回は、彼がなぜこれほどまでに冷ややかな「スルー技術」を身につけるに至ったのか、その裏側を少しだけ覗いてみましょう。

 おじさんの怒鳴り声を聞きながら、オレはただ、沼の底でゆらゆらと揺れる泥を眺めていた。

 かつてのオレなら、きっと一緒にパニックになっていただろう。自慢の純白の羽をむしられた時や、三日三晩探してようやく見つけた特大の魚を、横からトンビに掠め取られたあの時のようにな。


 オレは今、旅の途中で行方不明になったおじいちゃんカモメを探して、世界中を飛び回っている。

 あのおじいちゃんは、口を開けば「あの時の夕焼けと蒼龍くんは最高だった」と、孫のオレが耳にタコ……いや、耳にカモメの玉子ができるほど自慢話を繰り返していた。

「一期一会」だの「おもてなし」だの、カモメの分際で高尚なことを言っていたけれど、結局はただの寄り道好きの隠居じいさんだ。


 そんなおじいちゃんを追う旅路は、散々だった。

 期待しては裏切られ、欲張っては横取りされる。

 そんな日々を繰り返すうちに、オレはふと気づいたんだ。

「ああ、やれやれ。世界に期待するから腹が立つんだな」ってね。


 羽が抜けたのは、ただの「現象」だ。

 魚を取られたのは、単なる「移動」だ。

 そこに「不幸だ」とか「あいつが憎い」とかいう余計なトッピングをしなければ、心はいつだってからっぽのままでいられる。

 風は吹き、腹は減り、太陽は勝手に昇る。

 世界はただ、そこにあるだけ。それ以上でも以下でもない。


 だから今のオレには、泥沼に首まで浸かっているゴキブリだって、嫌悪の対象にはならない。

 そこに「汚い」というラベルを貼らなければ、ただの効率的なタンパク源だ。

 ……ほら、よく見ると美味しそうだろう?


「……あの、聞いていますか? 私はあなたのその、小馬鹿にしたような沈黙が一番不愉快なんです!」


 おじさんのシャリホが、泥だらけの手でまた手帳にカリカリと恨み言を書き込んでいる。

 やれやれ。

 このおじさんは、まだ「自分は特別だ」という分厚い設定資料集を大事そうに抱えて、泥の中で震えている。

 その設定資料を全部燃やしちまえば、今すぐ心は軽くなるのに。


 オレは首を少しすくめて、シャリホを見下ろした。

 まずは、そのパンパンに膨らんだ「食い意地」と「宝石への執着」から、少しずつ削ってやるとするか。


「おじさん。その手帳、後で読み返して『怒りのリピート再生』でもするつもりかい? ……やれやれだぜ」

孫カモメが手に入れた「空」の境地は、実はサバイバルの中から生まれた超・合理主義でした。

 おじいちゃんカモメが愛した「一期一会」の世界。そこに辿り着くためには、まずシャリホのような「ドロドロの執着」を捨てなければなりません。

 

次回、第三話。いよいよ商人のシャリホの「俺様プライド」が暴かれます。

 実家の財力でオネーチャンたちを侍らせていた彼が、なぜこれほどまでに「イライラの天才」になってしまったのか。その甘やかされた過去を掘り下げます。お楽しみに。

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