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アメン  作者: 平 一
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3 正規軍

「アスタロトは〝正義公〟の別名で知られるように生真面目で、使命感の強い種族です。彼女はカイムから提供された記録情報を解析した結果、私達に下された追討勅令や処刑命令が、実は中枢種族バラキエルによる独断と先帝名の潛称による行いだったことを発見しました。バラキエルは国璽(こくじ)、すなわち皇帝認証符号の使用を管理する皇帝秘書官長だったのですが、他の中枢種族と違い、親衛軍や正規軍に有力な従属種族を持っていませんでした。そこで彼女は自らの私兵軍団の司令官カイムに命じ、他種族に先んじて現皇帝を討伐させることにより、枢密院における自らの地位を高めようと謀ったのです。バラキエルの賭けは失敗しました。後に、主戦力を失ったバラキエルは他種族からの攻撃により、滅亡したことが判明しました」


図10:策謀

m挿絵(By みてみん)


「皇帝側近の専横を知った〝正義公〟は、悲憤慷慨(ひふんこうがい)しました。内戦勃発の当初、アスタロトは政治的中立を尊重して、自らの艦隊に対し、中枢種族間の戦闘への介入を禁じていました。しかし彼女は、こうした帝国中央における悪質な策謀の存在と、戦闘の拡大による無政府状態化を前に、もはやいかなる中枢種族にも帝国を統治する能力なしとして、この命令を撤回しました。そして彼女はサタンに対し、状況は極めて困難であるものの、内戦で混乱に陥った正規軍艦隊を糾合し、親衛軍や外周星域内の友好種族とも協力して、壊滅を免れた宙域を防衛するよう進言したのです」


図11:進言

m挿絵(By みてみん)


「時を同じくして、親衛軍のバールゼブル艦隊からも恐ろしい知らせがありました。中枢種族による超新星兵器の使用と、皇帝種族の消息不明が通報されたのです。これらを受けて現皇帝は、帝国の混乱と破壊を終息させるため、やむなく新王朝の創始を宣言しました。彼女は友好的な軍事種族である親衛軍のバールゼブルと正規軍のアスタロトに対し、中心星域の治安回復と敵対勢力の星域外進出阻止を命令しました。また彼女自身はアスモデウスと私を伴って開発途上星域に帰還し、さらには銀河系外周星域にも赴いて、事態の説明と協力要請を行うことを決定しました。これは新型駆動機関を装備した秘匿艦隊の出現や諸侯・軍司令官の分離・独立など、状況は依然として楽観を許さず、両星域における理解と支持が戦争の帰趨と戦後復興を左右すると考えられたためです」


図12:崩壊

m挿絵(By みてみん)


「その後幸いにも、親衛軍種族の多くは内部抗争によって損耗した後に、バールゼブル艦隊の追撃を受けて壊滅または投降しました。当時の親衛艦隊は傀儡(かいらい)化された先帝のもとで、実質的には中枢種族とその系列種族が兵力を拠出して運営されていました。そのため内戦が生じると間もなく、彼女達もまた同士討ちを開始してしまい、バールゼブルの介入と優勢が明らかとなるや、一部の超空間駆動を有する種族のみがアンドロメダ銀河に逃亡したのです」


「一方、正規軍では親衛軍ほど中枢種族による系列化が及んでおらず、またアスタロトが私とカイムの戦闘事件を周知して、先帝なき後の抗争により同胞相討つことの悲劇を強く訴えました。そのため彼女達はその大半が新王朝に帰順して、帝国からの分離を企てた諸侯や軍司令官に対する平定・復帰作戦に参加しました。さらにこの作戦では、アスタロトの技術部門副司令官ヴォラクが姉妹種族のストラス・アミーと心を結び、量子情報戦と戦闘管制のための演算を行っています。これによりアスタロト艦隊は、相手方の通信と探知を妨害しつつ、最適な包囲陣形を形成して降伏を促すことにより、双方の犠牲を最小限に止めることができました」


「なおアスタロトは正規軍の上官として私をサタンの副長官職に推薦した、前任者です。彼女はそれまで長く軍事部門副長官として現皇帝を補佐・警護し、彼女の〝未来あるもの〟への深き愛情と配慮に学んで、深く敬愛の情を抱くに至りました。また私達は地球の文明化に際しても現皇帝を助け、彼女は愛と豊穣の神イシュタル、私は畜産の神アメンとして人類に記憶されました。今や皆様の文明は偉大なる進歩を遂げ、星間社会に参加して多大な貢献をなし得るまでに発展されました。アンドロメダ銀河遠征に先立ち、総司令官として当地を再訪した際は、現在の私と同様に、彼女の胸中もまた感無量の思いに溢れたことでしょう」


図13:女神

m挿絵(By みてみん)

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