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ギフト【鑑定】だけの俺が、実は最強だったなんて聞いてない!  作者: KeyBow


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第9話 ドロップ

 俺は両断されたゴブリンが霧のように消えていくのを見終わると、手にしたブロードソードを改めて見てつぶやいた。


「こりゃあ、とんでもない拾い物をしたな」


 魔物は霧散し始めると数秒で完全に消滅し、その跡には核となる魔石が残る。そして稀にアイテムをドロップすることもある。もっともドロップアイテムだと思って拾い上げたら、実は魔物がどこかの冒険者から奪ったものだった、なんて話も聞いたことがあるが。


 一方、俺の言葉を聞いたアリア様とベルナさんは、目を丸くしてこちらを見ている。特にベルナさんは先ほど言いかけていた言葉を完全に忘れてしまったかのように、ただただ驚愕の表情を浮かべていた。


「ジェスロ様、今の斬撃は?」


 ベルナさんがようやく言葉を発したが、その声には先ほどの緊迫感はもうなく、純粋な驚きが滲み出ている。


「ああ、あれか?最初に倒したゴブリンが落とした剣の力だろうな。鑑定はまだしていないけど、とんでもない代物みたいだぞ」


「いえ、どう見てもスラッシュのような斬撃を飛ばすスキルにしか見えませんでしたわ」


 俺がそう答えるとベルナさんは少し訝しんだ表情で否定した。


「ああ、そのことか。確かに俺も最近ほんの少しだけ魔力が放出できるようになったんだ。でもまだこう、放つだけで・・・多分当たっても多少よろけさせる程度だと思うぞ。だからあれはこの剣の力だろう」


「ええ、確かにジェスロ様の言われる魔力放出とは明らかに違うものでしたわね」


 アリア様は頷くと俺の言葉を肯定してくれた。素直で良い子だ!


「そうだろ?やっぱりこの剣が持っている力なんだよ!俺なんかでもあんなでかい魔物とまともに戦えるようになるだなんてさ、すごいよな!」


 俺が子供のように興奮して新しい剣をキラキラした目で見つめていると、アリア様とベルナさんは思わず顔を見合わせて苦笑した。


「あっ・・・すみません。ついため口になって・・・」


 自分の言葉遣いに気がつき、慌てて謝罪するとアリア様は手を振って言った。


「ええ、別に構いませんわ。今はそんな些細なことを気にしている余裕はありませんもの。ちょっと意外でしたけれども」


 ベルナさんも頷いた。


「ええ、ジェスロ様の興奮も、もっともだと思います。それに今は仲間として見ていただきたいので、ベルナの言う通りしゃべり方は気になさらないで下さい」


 ベルナさんは先ほどの魔物のいた場所を振り返り、何か言いかけた。


「しかし・・・あれは・・・ビッグラット・・・いや、キ 『ングラットでは?』注)」


 その時、俺は思わず手を叩いた。


 注釈・・・『』内は実際に発せられたが、ジェスロが手を叩いたことによりジェスロの耳に入らなかった部分です。


「いや、やっぱりあれはビッグラットだよ!間違いない。俺、図鑑でちゃんと見たんだ。体毛の色も耳の形もさ」


 しまった。告げてからそう言えば、ベルナさんが『キ』となにか言いかけてたのを止めちまったな。そうか、あのラット確かにちょっとキモかったから『キモかった』と言おうとしたんだな。「キ」という音は聞こえていたし、きっとそうだ。うん。


 アリア様は少し不思議そうな顔で俺を見た。


「そうなのですか?」


「ああ、間違いないって!仕事柄見る魔物図鑑にあった体色や形だしな。思ったより大きかったが、稀に一回りくらい巨大な個体もいるらしいぞ!」


 俺は強引にそう言い切った。

 そうそう、先ほどのビッグラットの魔石は、アリア様がもう収納袋にサッと入れている。叶わぬ夢とは言え、収納袋というのは羨ましいな。


「アリア様、ゴブリンの方は俺が見ますが、ビッグラットが何か落としていなかったでしょうか?ベルナ、悪いが周りを見ていてくれ」


 俺はそう言いながら、今しがたゴブリンが落とした2本目の剣を手に取って見ていたが、最初のとうりふたつだ。

 他には既にアリア様が回収した魔石以外はない。 


 するとアリア様が手に何かを持ってこちらに来た。


「スキル玉のようですね」


「そのようですわ。鑑定しますか?」


「今の状況を考えると、今鑑定してこの場で誰かが使う方が生存率が上がると思います」


 俺はアリア様からそのスキル玉を受け取ると、早速鑑定スキルを使った。


「これは【スロート】スキルですね。投げるスローの『スロー』に浮かせる『フロート』のロトを組み合わせたネーミングだと言われています」


 アリア様が首を傾げながら


「スロートですか?変わったお名前ですわね。ところで、どのようなスキルなのでしょうか?」


「内容ですが、そうですね、非力な女性がうちのギルドマスターのような筋肉ムキムキマンよりも、強く正確に物を投げられるようになります。しかもこのスキルは、上に掲げて投げればえらい勢いで飛んでいくんですよ!ナイフなんか飛ばすと、人なんか簡単に死にますよ」


「それはすごいのでは?」


「ええ、まあそうなんですが、それでもスキル玉の中では一番安い部類なんですよ。とは言え、相場としてはとは俺の年収が軽く飛びますけどね」


 そう付け加えると、アリア様は少し驚いたように目を丸くした。これでこのスキル玉がそれほど希少なものではない、ということが伝わっただろう。精々俺の年収だが、B級以上の冒険者ならそれほど高額ではない。


「それと、スキル玉はそれなりに希少なものとはいえ、戦力を上げることが優先ですから。アリア様かベルナさんが取得されるのが良いかと思います。そしてこの剣はさっき倒したゴブリンが落としたものですが、最初の剣はギルドに渡さないといけないので、代わりにこれを頂ければ俺としては嬉しいです」


「そのような貴重なものを、あっさりと譲ってくださるとは・・・」


 俺の提案にベルナさんは難しい顔をして腕を組みながら発した。


「よろしいのですか?」


 アリア様が少し訝しんだ表情をして尋ねてきた。


「はい。俺の方は最初の剣の能力で斬撃を飛ばせますから。それにこの剣はお二方の体格からすると、やや大きいとは思いますので」


 俺はそう答えたが、実のところ双剣使いに憧れがある。それにアリア様かベルナさんの戦力増強に繋がるなら、その方がずっと有意義だ。


 ベルナさんの言う通り、剣の価値は未知数だが、能力的にかなり高価だと思うが、ベルナさんが静かに口を開いた。


「そういう事でしたら、アリア様がそのスキルを習得されるべきかと存じます。攻撃スキルになりますので。私が前衛、アリア様が後衛、ジェスロ様は状況に応じて臨機応変がよろしいかと思います」


 俺も同意見なので頷く。


 アリア様は少し考えてから、ベルナさんの言葉に同意した。


「確かにベルナの言う通りですわね。ジェスロ様、ありがとうございます。ありがたくこのスキル玉を使わせていただきますわ」


 アリア様はそう言うと、躊躇することなくスキル玉を地面に軽く叩きつけた。パリンという小さな音と共に、淡い光がアリア様を包み込み、その光はゆっくりとアリア様の胸へと吸い込まれていった。スキルが正常に習得された証拠だろう。


「ありがとうございますジェスロ様。ベルナもありがとう」

 

 これで予期せぬ形で手に入れたスキル玉はアリア様の手に、そして最初と今倒したゴブリンが落とした剣は俺が使うことになった。この新たな力が、今後の探索でどのように役立つのか、今から少し楽しみだ。


「皆ケガはないですか!?無ければそろそろ先に進みませんか?」


 さあ、出発しないかと声を掛けるとアリア様から提案が出た。


「次に魔物の気配がしたら、今度は私とベルナで対処を試みましょう」


 ベルナさんも無言で頷いている。俺も甘えてばかりはいられない。彼女たちの試験とは言え、イレギュラーが起こっている以上、俺も三人目の仲間として積極的に戦わないといけないなと思った。そう、これまでのように彼女たちが戦っている相手の視界外から襲うようなのではなく、正々堂々と真正面から。

 冒険者ではない俺がFランクとは言え、魔物と戦うのは恐ろしいが、この剣の力があればFランクの魔物となら良い勝負が出来そうだ。


 ただ勘違いしてはいけない。俺が強くなったのではなく、あくまでも剣の力で倒せたに過ぎない。

 俺が新人冒険者にずっと言ってきたことだが、強くなったと思った時が一番やばい。偶々うまく言ったりして実力がついたと勘違いし、格上に挑んで死んだやつの話はよく聞く。

 石橋を叩いて渡るくらいでちょうどよい。

 賭けに出るのは、そうだな、もう後がなく、生きるか?死ぬしかない?そんな状況での起死回生だけだぞ!と。

 俺が普段から新人に伝えている事を失念しかけてどうする!と心の中で突っ込むしかなかった。

 頭で分かっていても、いざ現場に出ると違うんだなと、色々教えてもやらかす奴らがいても、俺の話を聞いていない訳ではないのだと身を持って知ることとなった。


【実はオレ強いんじゃね?】と一瞬思ったが、ビッグラットを真っ二つにしたのはどうやらスラッシュ系のスキルか、それ相応の力だとベルナさんが言っていた。


 俺はスラッシュなど使えないから、あれを倒したのが俺自身の力だと・・・・一瞬頭をよぎったなんて恥ずかしくて言えない。

 気が付いてよかった!気を引き締めて行こう!


 俺たちが再び歩き始めるときの隊列は・・・先頭はベルナさん、中央にアリア様、俺は殿を務めるので先ほどと変化はない。


 取り敢えず魔物の気配は近くにないのもあり、先ほどまでの緊迫感は薄れた。


 とは言え、俺たちの心には新たな警戒心が芽生えていた。このダンジョンが普段通りの初心者向けではないように変貌した可能性があり、生きて帰るのが困難な可能性が顔を覗かせ始めていたからだ。


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