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ギフト【鑑定】だけの俺が、実は最強だったなんて聞いてない!  作者: KeyBow


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第7話 ファーストドロップ

 ゴブリンが塵のように霧散し、その跡にはそれなりに大きい緑色の魔石と、切り飛ばされた腕があった場所に、見慣れないブロードソードが落ちていた。ほぼ同時に俺が愛用している剣が、まるで枯れ枝のようにポキリと音を立てて折れてしまった。間違えた。さっき貰ったばかりの剣だったな。


「ドロップですわ」


 アリア様が呟くと、拾い上げた魔石を慣れた手つきで腰につけた異空間収納の袋へとしまった。

 収納袋か。

 やはりお貴族様なんだな。何せあれは、俺が生涯働いた給金ほどの価値らしいからな。


 初心者向けのこのダンジョンでは、ボス部屋以外でアイテムがドロップするのは数年に一度しかないと聞く。と言うか、最後に鑑定したのは2年前だっただろうか。

 奥の方からは新たな魔物の気配が・・・じわじわと迫ってきている。もたもたしている時間はないようだ。


「助けていただき、ありがとうございます」


 ベルナさんが深々と頭を下げた。これまでと打って変わった丁寧な言葉遣いだ。


「戻れないなら、進むしかないですよね」


 俺がそう言うと、ベルナさんは胸を押さえたまま難しい顔をした。いきなりの強敵との遭遇で、彼女も動揺しているのだろう。不意を突かれた一撃の痛みが、まだ引いていないのかもしれない。

 アリア様が心配そうに回復ポーションをベルナさんに差し出した。反射的に受け取ろうとした手を、俺は寸前で止めた。


「今のこの状況で回復ポーションは貴重品です。今はまだ使うべき時じゃないと思います」


 俺がそう言うと、アリア様は眉をひそめた。


「でも、ベルナが苦しそうにしているわ。骨が折れたのじゃないかしら?」


 うーん、こんな時こそ回復魔法を使えば良いのに・・・


「ヒールを使えば良いんじゃないですか?」


 俺が聞くとアリア様もベルナさんも顔を見合わせ、揃って首を横に振った。


「使えないですわよ」


「あの・・・俺はギルド職員なので、ヒールが使えます。その・・・怪我をした箇所、つまり胸を直接触ることになります・・・」


 俺がそう言うと、ベルナさんは一瞬顔を赤らめたが、直ぐに俺の方をキリッと見る。


「お願いします」  


 そして小さく頷くと、治療を受けようとメイド服の上着に手をかけたので俺は慌てて制止した。  


「いや、そこまでしなくても。服の中からでも大丈夫ですよ」


 そう言うと、ベルナさんは少し戸惑った表情をしたが、すぐに意を決したように俺の手を取り、メイド服の中にそっと導いた。初めて触れる柔らかな感触がこんなシチュエーションなのが残念だが、彼女の肌は少し冷たかった。手が胸に触れると、なんとなくそこが痛む患部だと分かった。


「この者に癒やしの力を与え給え・・・ヒール!」


 呪文を唱えると同時に、俺の手から温かい魔力が放出されるのが分かった。別に何でも良い。なおすことをイメージし、意識を切り替える儀式のようなものだ。ベルナさんの顔色はみるみるうちに良くなり、治療が終わると彼女はほっとした表情で服から俺の手を出すと、直ぐに手を離した。


「かたじけない。しかし・・・初心者ダンジョンに、なぜあのようなゴブリンが・・・」


 ベルナさんが改めて感謝の言葉を述べ、続けて信じられないといった表情で呟いた。

 やはり普通のゴブリンより大きかったようだ。

 アリア様は魔石を収納袋にしまったが、次に拾ったブロードソードを俺に差し出してきた。


「ジェスロ様、ドロップ品ですわ。折れた剣の代わりになりませんか?それとこれは、どのような剣かわかりますか?」


「ありがとうございます」 


 俺はそう答えると少し考えた。


「鑑定も魔力を使うので、今は魔力を温存するべきですので、鑑定はここを出てからにしましょう。でも、取り敢えず折れた剣の代わりになると思います」


「そうですわね」


 俺は新たに手に入れたドロップ品の剣を手に取ると軽く振ってみた。すると、鞘もないはずなのにかすかな金属音と共に、まるで空気の刃のようなものが剣先から飛び出し、壁に小さな傷をつけた。

 アリア様とベルナさんは目を丸くしてその光景を見つめているが、俺も驚いた。恐らく同じように剣から出た斬撃が見えたのだろう。


「良さそうですね。これを代わりに渡せば、ギルドマスターに怒られ・・・」


 俺が言いかけると、アリア様は少し不思議そうな顔をして言った。


「ふふふ。すごい方だと思ったのですが、随分小さな事を気になさるのですわね。ギルドマスター殿はジェスロ様がこのような良質な剣を手に入れたと知れば、大いに喜ぶと思いますわ」


「よくわかりませんが、とりあえず大丈夫そうなので先に進みましょう」


 俺は周囲を警戒しながら言ったが、話が噛み合わない。だが、確かにアリア様の言う通り、この状況では些細なことだよな。


 それでもあの様子だと、俺が剣の破損を悟ってトドメを押し付けてしまったとは思っていないようでよかった。冷静な判断か・・・まあ、結果オーライというやつだろう。ほっと胸をなでおろした。


「左手から微かに魔物の気配がするので、右回りで進みますか?」


 魔物の気配から判断してもらうよう、魔物の気配がした方向を告げた。

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