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ギフト【鑑定】だけの俺が、実は最強だったなんて聞いてない!  作者: KeyBow


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第26話 順番スキップ

 馬車はゆっくり街へと続く石畳の上を走り始めたが、その揺れは僅かだった。街から初心者ダンジョンまでの間の道は、かなりの手間を掛けて整備されている。


 アリア様とベルナさんの能力玉の鑑定結果は、二人のギフトはどちらも素晴らしいものだったが、俺自身は良いのを得られなかったのかもしれない。

 左手に感じた割れたような感触が、アリア様の言う通り、俺の手に現れた能力玉が床に打ち付けられた時に割れたのか?確かにそんなタイミングで光を見たと言われると、見た気もする。いや、待てよ。


 身体が熱くなったのは、あの時――ゴブリンナイトとの戦闘で吹き飛ばされ、ダンジョンの床に叩きつけられた瞬間だったはずだ。


 あの光も、きっとポーションとか色々ポケットに入れてたものが全部割れて、混ざり合って光ったんだろう。後で確認できないが、レベルがあると言われていて、それが上がったと思われる時にそうなるらしい。


 らしいというのは、その熱さを感じた後、スキルの威力が上がっていたり、体のキレが良くなっているからだ。アリア様の言う「落下時」に身体が熱くなったのも、きっとそのせいだろう。俺的には能力玉はダンジョンを出てトイレに向かい中、波に耐える時に力が入り握り潰した。

 だが、とてもではないが事実を告げるわけには行かない。

 うん、これでよくわからないことの辻褄が合う。俺が得たギフトが戦闘系だったらうれしいな。


 往路と同じ四人掛けの馬車で、俺は進行方向と背を向けたドア側の席に座り、窓の外を眺めていた。向かいにはベルナさんとアリア様が静かに窓の外を見つめている。隣のシートのことは完全に意識の外だった。


 その時だった。突然、何かに袖を引っ張られたような感覚がした。なんだ?と疑問に思い、反射的にそちらを振り向こうとした、その瞬間だった。


「先輩?・・・」


 すぐ隣、しかも耳元で突然声をかけられた。

 明るく聞き覚えのあるその声に、俺は同時に体を強張らせ、驚きのあまり勢いよく立ち上がろうとした。


「うわっ!?」


 しかし、狭い馬車の中だ。頭上空間などほとんどない。立ち上がりかけた瞬間、後頭部が天井に思い切り激突した。


 ごんっ!


 鈍い衝撃が走り、思わず頭を押さえて小さくうめいた。


「一体何事だ?」


「いったあ!」


 後頭部をさすりながら顔を上げると、すぐ隣で目を丸くしたニーナが心配そうにこちらを見上げていた。


「せ、先輩、だ、大丈夫ですか?すみません、つい驚かせてしまったようで・・・・」


 何故かここにニーナがいる。予想外の事態に、後頭部の痛みよりも強い驚愕が俺を襲った。


「に、ニーナ・・・!?なんでお前がここにいるんだ?確か先にギルドに帰るんじゃなかったか・・・?」


 俺は頭を押さえながら信じられないといった目でニーナを見つめた。


「もー!先輩こそ、一体何を考えてるんですか!」


 突然の剣幕に、俺は少したじろいだ。


「え?な、何がだ?」


「アリア様とベルナさんの話ですよ!!先輩にとって命に関わる危険な上位種がいるボス部屋に入ったんですって!?他の冒険者の方たちはもっと早く戻ってきたって言うのに!先輩たちのパーティだけ、ずいぶんと時間がかかったっていたじゃないですか!執事さんと二人で待っていましたけど、もしかしたら何か大変なことがあったんじゃないかって、ずっと気が気じゃなかったんですよ!」


 ニーナの目から小さな涙が溢れ出した・・・

 彼女は本当に心配してくれていたらしい。


「大丈夫だったよニーナ。ほら、俺はここにいるじゃないか」


 小さく微笑んでそう言うと、ニーナは袖で目を拭いそして突然、また怒ったような表情で俺を睨みつけた。


「バカ!バカバカバカバカ!心配したんですよ!先輩は非戦闘系で、弱いんですからね!下手をしたら本当に死んでたかもしれないのに、一体何をやっているんですか!しかもこの鎧、バックリ切れているじゃないですか!それに服に血がついているって、ケガをしたんでしょ?大丈夫なんですか?」


 その突然の叱責と涙に俺は完全に言葉を失ってしまったが、見かねたベルナさんが静かに口を開いた。


「ニーナさん、その辺にしてやってはもらえないだろうか?ダンジョン内でイレギュラーな事態が発生したのだ。ジェスロ殿がいなければ、我ら2人はどうなっていたことか・・・今生きているのはジェスロ殿のおかげと言っても過言ではないのだ」


 しかし、ニーナはベルナさんの言葉を全く信じようとしなかった。


「そんなの嘘です!先輩がそんなに役に立つわけないじゃないですか!いつも受付で、怖い受付嬢の先輩方にツバを吐かれても、ヘラヘラして笑ってやり過ごすような人なんですよ!そんな嘘で私を騙そうったって、そうはいきませんから!」


 険悪な雰囲気が漂う中、アリア様が穏やかな声で割って入った。


「まあまあ、ニーナさんとおっしゃいましたわね。落ち着いてください。わたくしもジェスロ様が少なくとも見た目よりずっと、その・・・頼りない雰囲気とは裏腹に、強いお方だということはこの目で確かに見ましたのよ」


「アリア様まで・・・!」


 ニーナは納得がいかない目でアリア様を見つめた。


「それよりもですよ!ギルドの受付で書類の整理位しかまともにできないような先輩が、何でわざわざ王都に行かなきゃならないんですか!?先輩にも仕事があるんですよ」


 アリア様はニーナの疑問に小さく首を傾げ、少し夢見るような目で言った。


「わたくしの人生はジェスロ様に賭けるしかないのです。ジェスロ様には是非ともわたくしの守護者になってもらわねば困るのです」


 アリア様の突然の言葉に、ニーナは完全に意味が分からず目を丸くしてキョトンとした。


「守護者?受付でいつも私からお菓子を貰ってニコニコしてるような先輩が、アリア様の?・・・無理ですよ!いつもギルドの受付の怖い先輩たちにいじめられて、ヘラヘラしてるじゃないですか!ツバを吐かれても笑顔を向けているんですよ!そんな先輩が王都になんか行ったら、あっという間にトラブルに巻き込まれますよ!一体誰がこんな駄目な先輩を守るんって言うんですか!」


 ニーナの具体的な反論に、俺は内心でため息をついた。


「おいおい、それだとまるで俺が救いようのないダメ人間じゃないか・・・」


 しかし、ベルナさんは静かに口を開いた。


「それはよくわからないが、確かに女性に対する気遣いは皆無だな。それはともかく、仮にジェスロ殿が手を上げたとしたら、その受付嬢は間違いなく死ぬことになるだろう。恐らく手を上げないように自分を抑えるのに作り笑いをしていたのだと思うぞ。君はすっかり演技に騙されているのだと思う」 


 ベルナさんの突然の言葉に、ニーナは目を丸くした。

 

「えっ?そんな・・・でも先輩はトラブルに巻き込まれる体質で、常に周りはトラブルだらけなんですよ!私がいなきゃとっくに道端に転がっているはずですよ!」


「なあニーナ、俺ってトラブル体質なの?」


 小さく呟く俺に、ニーナは信じられないといった表情で言った。


「えっ!?先輩、まさか今まで自覚してなかったんですか!?・・・」


 俺は何故かニーナにジト目を向けられた・・・


 しかし、いたたまれない状態の中、街に着いたようで馬車の速度が落ちた。

 入街手続きの長い列が見えたが、アリア様の身分のおかげか、長い入場待ちの列を無視してスムーズに街の中へと入っていく。


「先輩!凄いですよ!並んでいる人の横を抜けて行きますよ!」


 ニーナは無邪気に笑っていたが、並んでいる人ごめんなさい・・・オッサンの心は順番をスキップしたことにちょっと痛んだよ。だから顔をみられないように外はチラ見しかしなかったんだ。だけど、さすがベルナさんもアリア様もさも当然と言ったようでやり過ごす。門番がやたらと畏まっていたようだけど、ニーナのはしゃぐ声に何を話しているのかほとんどわからなかった。


 それにしても袖を引っ張られるまでニーナのことに気が付かなかったが、2人の反応から気が付かなかったのは俺だけか?

 疲れが溜まっているのかな・・・

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