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ギフト【鑑定】だけの俺が、実は最強だったなんて聞いてない!  作者: KeyBow


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第23話 地獄への招待状

 我慢に我慢を重ねた後のトイレは、まさに天国だった。一気に内臓が洗い流されるような錯覚に陥り、思わず「ふああ」と声が出た。


「オッサン、どうした?」

 俺がつい出してしまった声に心配そうに若い兵士が声を掛けてきた。


「悪い悪い。ずっと我慢していたから、間に合って安堵しただけだよ」


「なんだよ」とか「糞かよ」とか「オッサン、変な声出してんじゃねえ」とか、色々言われた。


 オッサンのうめき声で耳を汚した騎士や兵士の皆様・・・本当にごめんなさい・・・


 まあ、当然の反応だろう。

 生き返ったかのような充実感に満たされたまま便所を出ると、数人の騎士たちの視線が痛い。さっき「オッサン」とか聞こえたからな・・・えっと、ほら、ちゃんと手は洗ったぞ!そう心の中で呟くと、一人の騎士が当たり前の質問をしてきた。


「冒険者の姉ちゃんたちはどうしたよ?」


「ああ、無事にボスを倒したので、ドロップを回収したら来ると思いますよ。腹が痛かったから、俺だけ先に・・・」


 言いかけたところでその騎士が心配そうに聞いてきた。


「そんなことよりオッサン、怪我大丈夫か?単なる付き添いじゃなかったのか?」


 別の騎士が訝しんだ表情で聞いてきた。

 あっ!やばい!言われてみれば革鎧は背中がバックリと割れているし、服もあちこち破れていて、更に乾いた血も目に付く。


「いやぁ・・・まとめて出てきた時に、俺の方にも来てちょっと戦ったんだよ。この剣のお陰で俺でも一人前の冒険者のような戦いができたんだ」  


 すると、一人の騎士が俺の腰に差した二本の剣を見た。


「おいおいおいおい、何でオッサンがこんなもん持ってんだよ?ミスリルじゃないのか?俺の1年分の給金でも買えねぇぞ」


「ですよねぇ・・・この剣がなきゃ本当に危なかったんですよ」


 俺は苦笑いで答えた。


「そういやぁ、詮索すんなって言われてるが、ありゃどこぞの貴族だろ?」


 別の騎士が顎でダンジョン入り口の方を指した。


「そうか、貴族様から渡されたやつなんだな。それなら納得だが、オッサン、お貴族様相手に失礼とか無かったか?」


「いや、特に大丈夫だと思いますよ」


 俺は曖昧に答えたが、思い起こすとまるでリーダーの如く命令口調で指示を出してしまっていたことを思い出した。

 不敬罪とか言われないよな?言われないよね?

 言われてから背中に冷や汗が流れた。


「ありゃあ、侯爵以上だろ?確かに装備もこの初心者ダンジョンには不釣り合いだったからな。いいか、オッサン。貴族ってのは面倒だから、あんたも詮索するなよ」


 少し年配の騎士が忠告してきた。


「ああ・・・」


 としか言えなかった。

 俺も貴族の揉め事に巻き込まれるのはまっぴらごめんだ。

 アリア様は俺にとって珍しく対等に接してくれる女性だったが、まあ本来は雲の上の存在だ。ギルドに戻って報告した後はもう二度と会うことはないだろう。

 まだ幼いけれどあの美貌と雰囲気なら、将来、彼女を巡って死人が出るほどのことになるだろうな。ベルナはもう少し愛想が良ければ求婚したいレベルだけどさ・・・でも貴族の娘の従者だもんな。関わらない方が自分の身のためだよな。

 折角2人の女性、1人は少女だけどと出会えたのに・・・


 隊長らしき人物と適当なことを話していると、詰所のドアが静かに開く音がした。

 しかし、その時の俺は詰所の中央付近で、入り口に背を向けて隊長と先ほどのダンジョンでの戦いや、この剣の力について話していた。


 だから詰所に誰が入ってきたのかまでは気が付かなかった。詰所の奥の方にも数名の兵士がいるのが見える。


「ご苦労様でございます」


 隊長の声が聞こえ、その声と同時に奥にいた兵士たちを含め、詰所内の全員が直立不動になった気配を感じた。

 その様子から、背後に現れたのは只者ではないと確信した。


「あっ!もう来たのか!」


 俺はまるで油の切れたブリキの人形のようにぎこちなく首を向けた。そこに立っていたのは、凍てつくような視線を向けるベルナさんと、その後ろに半ば身を隠しこちらを覗き見るアリア様だった。


 二人の間には張り詰めた空気が漂っており、その表情から俺が何かとんでもないことをしでかしたらしいと嫌でも察せられた。一体何が彼女たちをこんなに怒らせているんだ?


 まさか、あの時、ボスを倒した後に出た光る玉のことか?能力玉。この町の初心者ダンジョンで手に入る能力玉は、ほとんど全て俺が鑑定してきたから、その性質については誰よりも詳しいはずだ。ギフトや加護はもちろん、中には人物鑑定が可能な鑑定士もいるが、俺もその一人だ。ギフト、加護、スキルの詳細な鑑定となると、王都にしかない特別な道具が必要になるから、鑑定してもらわないと後々かなり面倒なことになる。それに、その道具を使うと鑑定料も高額になる。無駄な出費は避けたいだろう。特に貴族にとっては、金銭的な負担よりもメンツを潰される方が嫌だろうからな


「ほら、おっさん。お貴族様がお見えになったぞ。色々頑張れよ」


 隊長は状況を全く理解していないのか、あるいは見て見ぬふりをしているとしか思えない口調で俺の背中を軽く叩いてきた。


 隊長の予想外の力強さで、俺の体はベルナさんの方へと押し出された。避けようとしたが間に合わず、ベルナさんのすぐ目の前へ、唇が触れそうな距離まで迫ってしまい、俺は慌ててバランスを取るはめになった。なんとかぶつかるのを避けたが、心臓の鼓動が跳ね上がり冷や汗が背中を伝う。


 間一髪セーフだったが、ベルナさんとその後ろのアリア様の冷たい視線が、俺の失態を責め立てているように感じた。


 次の瞬間ベルナさんは何の言葉も発することなく、意外にも小さな手が、信じられないほどの力で俺を拘束した。よくあんな小さな手であの重そうなメイスをぶん回せるものだと、改めてギフトの凄さを思い知らされる。


 どうせなら治療の時みたいに、もう少し優しく手を握ってくれないかな・・・と、オッサンは思うだけで、口に出せるはずもなかった。

 そして無言で、しかし明確に詰所のドアを指し示した。その顔には一切の感情が宿っていなかった。こりゃあ、言い訳しても無駄だろう。


 俺は文字通り「ドナドナ」される家畜のように、ベルナさんに引きずられるまま、詰所の外へと連れ出された。周囲の騎士や兵士たちの、同情とも嘲笑ともつかない生暖かい視線が背中に突き刺さるようだった。


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