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ギフト【鑑定】だけの俺が、実は最強だったなんて聞いてない!  作者: KeyBow


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第12話 閑話休題:ジェスロの魔法習得奮闘記


 ジェスロが用いる『ヒール』や『キュア』といった回復魔法、そして自身にかける『身体能力向上』の魔法は、ギルド職員に習得が推奨されてはいるも、その習得は極めて困難だった。

 例えそれだけに集中したとしても、半年から1年にも及ぶ過酷な修練が必要なため、多くの冒険者や職員は途中で諦め、ほとんど誰も習得していない。

 一部の神官や魔法学園の生徒など、他の業務から外れて修行に専念できる、ごく一部の恵まれた者だけが扱える、ジェスロの常識とはかけ離れた、世間一般的に高度な魔法なのだ。


 そして何よりも重要なのは、魔力量と強さは基本的に比例するということ。

 生活魔法である『ウォーター』の勢いは、発動者の魔力強度に厳密に比例する。ジェスロが片手で出したウォーターが酒樽の栓を開けたような勢いだったのは、彼自身は自覚していないが、途方もない魔力を持っている証だ。

 彼はそれらをまるで呼吸をするかのように自然に使いこなし、そして自分は『ごく普通』だと信じ込んでいる。そんな【無自覚な強さ】の始まりは、今から20年ほど前、彼がギルドに入ったばかりの頃に遡る――。


 閑話休題:ジェスロの魔法習得奮闘記


 20年前、ギルドに入ったばかりのジェスロはまだ15歳だった。当時のギルドマスターが新入りの職員たちに課した課題は明確だった。


「最初の課題は生活魔法を覚えろ!だ。魔法書には他の魔法もある。まあ、取れないだろうが、興味のあるやつは取ってみろ。魔法学校で3年かかると言われている難題だからな。だが、お前たちにはギルド職員として是非ともこの魔法を身につけてほしい。頑張って課題をクリアしろ」


ギルドマスターがそう話し、激励の言葉を続けている最中、ジェスロはギルドマスターの使いで奥の倉庫へ物を取りに行っていた。

それにより少し戻るのが遅れたが、「ギルド職員として是非ともこの魔法を・・・」と話しているところに戻ってきた。


「おっ!ようやく戻ったか。悪かったな」


 ギルドマスターはジェスロが戻ってきたことに気が付きいたが、名前は覚えていなかった。


「えっと、君の名は?」


「はい、ジェスロです!」


 ジェスロが元気よく答えると、ギルドマスターは小さく頷いた。


「そうか。ジェスロ君、先ほど課題を出したところだ。他の者から詳しく聞いてくれ。じゃあ、マダルト君、頼んだぞ」


 そう言い残し、ギルドマスターは次の業務へと移っていった。


 ジェスロが席に着くと同期の研修生たちは、ニヤニヤしながらまるで嫌がらせのように、不正確な内容を伝えてきた。


「まずは生活魔法を取って。それから他の魔法を覚えろだってさ」


 ジェスロはギルドマスターの言葉の【魔法学校で3年かかる】という難易度や、多くの者が【生活魔法だけで精一杯】と言われていた事実を知らなかった。

 あくまで課題は【生活魔法の習得】だ。


 彼はただ、ギルドマスターが【頑張って課題をクリアしろ】と言ったその言葉を、そして同僚が伝えた【他の魔法も覚えろ】という言葉を、【課題はこの魔導書にある全ての魔法を1年以内に覚えること】と解釈させられてしまったのだ。


 当時の同僚たちは仕事が終わると決まって酒を飲みに行ったり、ある者は娼館に繰り出すのが常だった。

 特に親しかった解体場の仲間たちは、よくジェスロを誘った。


「なあジェスロ、この前娼館に新しい子が入ってさ。今日給料出たからこれから行くんだけど、お前もどうだ?」


 屈託のない誘いだったが、ジェスロはそうした誘いをすべて断り続けた。


「俺、魔法の習得が遅いからさ。飯食ったら勉強しなきゃなんだ」


 そう言って笑う彼に、別の同僚がフォローするように声をかけた。


「あー、そうか、内勤組は大変なんだな。俺らは生活魔法だけでいいって言われたけどよ。頑張れよ!」


 1年数ヶ月後、分厚い魔法書は返却期限を過ぎてもジェスロの手元にあった。ギルドマスターがそのことに気づいたのは、翌年の新採用職員に配るために魔法書を整理していた時だった。


「おい、一冊足りないぞ?」


 ギルドマスターが準備していた魔法書に目を凝らして問うと、近くにいたベテラン職員が首を傾げた。


「ええ?そんなはずは・・・ああ、そういえば、最後の一冊は半年前に帰ってきましたけど、それ以外はもう揃っていたかと。でも、そう言えば、まだ一冊帰って来ていなかったですね」


 その言葉にギルドマスターの顔色が険しくなった。


「おい、それは誰だ?まさか失くしたとは言わんだろうな?」


 ギルドマスターの不機嫌そうな声が聞こえたジェスロは、ビクリと肩を震わせた。


「あの、すいません。俺です」


 恐る恐る名乗り出たジェスロに、ギルドマスターはさらに顔をしかめる。


『皆すごいんだな・・・俺、まだ習得終わっていないのに、皆半年前には習得が終わっていたのか!』


 心の中でしみじみと呟く。


「まだ習得が終わってないのか?早く返却しろ!次の奴らが待ってるんだぞ」


 ジェスロは縮こまりながらも、正直に答えた。


「すいません、まだ習得出来たのがヒールとキュアだけで、もう少しで身体能力向上も取得できそうなんです。なのでもう少しだけ貸していただけるとありがたいのですが・・・」


 ジェスロの言葉を聞いたギルドマスターは、一瞬引き攣ったような笑顔を見せた。そしてどこか諦めたような、それでいて呆れたような顔で、深々とため息をついた。


「はぁ。熱心なのは良いことだ。そう言うことなら急がないから、取得したら返してくれたらいいからな」


 そう言ったきり、ギルドマスターはそれ以上何も言わなかった。その後ジェスロの魔法習得の件は【引き継ぎ事項】として、後任のギルドマスターにも伝えられる重要事項になる。


 同僚たちの励ましを受けながら、ジェスロはひたすら魔法書に向き合い続けた。通常なら3年はかかると言われる内容を、仕事をしながらも毎晩夜中まで勉強する日々。そして、それをわずか1年半程と、驚異的なスピードでの習得を成し遂げたのだった。

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