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ギフト【鑑定】だけの俺が、実は最強だったなんて聞いてない!  作者: KeyBow


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第11話 『 キング』アンデッドスライム

「 それはいきなりだった。


「きゃっ!」


 ベルナの短い悲鳴と同時に、猪が突進してくるかのような凄まじい勢いで黒い塊が彼女の体に激突した。再出発してから5分ほど魔物の気配がなかったのにだ。


 その瞬間ベルナの体が宙を舞い、俺の頭上を越えるように吹き飛んで行く。ジャンプしても捕らえられない高さだ。

 ならばと、着地予測場所へ駆けようとした瞬間、ベルナの軌道がほんのわずかに変わった気がした。


 驚いたことに何故か更に軌道が変わり、駆け出した俺の方へと向かってくる。

 咄嗟に両腕を伸ばして迫りくるベルナを受け止める。勢いを殺しきれず彼女の体は俺の胸に強くぶつかり、そのままお姫様抱っこの形になった。


「ベルナ大丈夫か?」


 心配して声をかけるとベルナさん顔を上げ、鋭い眼光で俺を睨みつけた。


「いつまで抱いているのですか?」


 その言葉にどうやら無事そうだと判断し、俺は慌てて彼女を降ろした。

 ああ、そうだ。

 さっきまでの戦闘の興奮で、ついベルナを呼び捨てにして調子に乗っていたが、この鬼の形相はまずい。

 これは意識してさん付けに戻し、この場を乗り切るしかない! ダメージから少しふらついて態勢を崩したベルナさんの足元、いや、ベルナさんの足元にはメイスが転がっていた。ふらつきながらメイスを拾うのを心配しながら見ていた。


「行かないのですか?」


 俺はしどろもどろになりつつ、すぐに次のターゲットへと意識を向ける。

 いや、突進してベルナを吹き飛ばした奴を警戒しなきゃだ。


 ・

 ・

 ・


 そいつはどうやらUターンしてきたようで、アリア様に向かっていた。


「アリア右に避けろ!」


 状況を瞬時に判断し、つい命令口調で叫んだが、アリア様は一瞬驚いた表情を見せたものの、素直に俺の言葉に従い体を右に傾けた。


 直後、アリア様のやや左側を先ほどの黒い物体が猛スピードで通り過ぎた。まるで地面を這うかのように、ヌメヌメと空気を滑るように移動していった。


 そいつに対して目を凝らしてよく見ると、図鑑で見たことのあるスライムだった。

 しかし、その恐ろしさは想像を遥かに超えていた。

 スライムは精々手のひらサイズだと思っていたが、そいつは体高1メートル、直径1.2メートルほどの巨大な団子のような形をしていた。こんなものが迫ってきたら、俺だって丸ごと飲み込まれてしまいそうで恐ろし。


「アリアは援護を。ベルナは左から牽制してくれ!」


 俺はアリア様を信じ、ゴブリンがドロップした剣を2本構え、スライムへと駆け出した。

 スライムはヌメヌメとした動きでこちらに向かってくるので、両の剣をクロスさせてその突進を受け止めるも、想像以上の質量と力に、俺は後ろへと押し込まれた。ズルズル、いや、ザザザザザと後退し、背中が冷たいダンジョンの壁に激しくぶつかってようやく止まった。ぐはっ!

 肺の空気が一気に抜け、息が詰まる。


 その瞬間、アリア様の放ったナイフがスライムの体へと飛んでいき・・・深々と突き刺さった。

 しかし、ジュッ!という鈍い音とともに、ナイフはまるで熱い鉄に触れた氷のように、みるみるうちに溶けていった。


 そしてその漆黒の体には何らダメージを負ったようには全く見えない。


 スライムは次の標的をベルナさんに変え、ヌメヌメとした動きで彼女の方へ体を向け、今にも飛びかかろうとしている。


 その時、俺は剣を大きく構えると直ぐに振り抜いた。

 見えない刃がスライムの体表を切り裂くと、パシャリと嫌な音と共に黒い体液がわずかに飛び散り、斬られた箇所から濛々と黒い煙が立ち上った。

 そして鼻を突くような、強烈な腐敗臭が辺りに広がる。


 まずい!こいつはアンデッドだ。


 咄嗟に鑑定スキルを発動したが、表示されたのは『アンデッドスライム(デスキ)』という文字がぼやけて見える程度だった。

 体が黒く、丁度浮かび上がった文字と被りよく見えない。

 正確にはデスキだと思うが、それ以上は見えなかったので、取り敢えずアンデッドスライムだと認識した。


「ベルナ、こいつはアンデッドスライムだ!気を付けろ!」


 俺がそう叫んだ瞬間、ベルナさんの全身が眩い光を放ち始めた。それはギフトを発動する時の独特の光だった。

 確か槌聖だから、聖属性攻撃をするのだろう。

 両手に握られたメイスに、神聖な光がみるみるうちに集約されていく。そしてベルナさんは全身の力を込めて叫んだ。


「はああああああああッ!」


 叫ぶと同時に、右手のメイスがスライムの黒い体を深々と切り裂き、さらに左手のメイスを腕ごと切り裂かれた内部へと強引にねじ込む。


「爆発する!離れろ!」


 よくわからないが、その言葉に危機感を覚え、尻もちをついてしまったアリア様を咄嗟にお姫様抱っこの形で抱き上げると、スライムから全力で距離を取った。

 直後、スライムは激しく蠢き暴れ出し、やがて動きを完全に止めたかと思うと、次の瞬間、ドォン!という低い爆発音と共に腐臭を放つ黒い体液が周囲に激しくまき散らされた。そして吐き気を催すほどの強烈な臭いが辺りを覆ったが、それはまるで嘘のように、数秒後には跡形もなく霧散した。


 抱きかかえられたアリア様が、感嘆したように呟いた。


「流石聖属性ね」


 やはりベルナさんのギフトは聖属性だからアンデッドとは相性が良いのか。

 それにしても俺ではまともに相手もできないような巨大なアンデッドスライムを、いとも容易く倒してしまうなんて・・・出会い頭の戦闘はともかく、ベルナさんって本当に強かったんだな。

 アンデッドスライムの爆発による悪臭が消え去った後、俺は抱きかかえていたアリア様と目が合った。


「ありがとうございます。お陰でまたもや助けられました。こんなところでアンデッドスライム、それもキ『キング』」


 アリア様の言葉は、直後に背後から聞こえた、まるで地獄の底から響いてくるような怒声にかき消され、【き】から先は聞き取れなかったが、やはりキモかったんだな。

 結構気が強い感じを装ってはいるが、そこは若い女性と言うか、まだ15歳ほどの少女だ。つい気持ち悪かったと口に出たのかな?


「貴様、お嬢様から早く離れぬか!」


 振り返るとベルナさんが信じられないほどの鬼の形相でこちらに近づいてきていた。アリア様の言葉は、その怒りのオーラに完全に圧されて、俺の耳には届かなかったが、その剣幕にようやく自分がまだお嬢様抱っこをしていたことに気が付き、慌ててアリア様をそっと地面に降ろした。


 降ろされたアリア様は、どこか恥ずかしそうな、そして少し申し訳なさそうな顔をされていた。


 助けるためとはいえ、お貴族様、それも未婚の女性を抱きかかえるというのは、やはりマズかったらしい。


 ベルナさんの怒りの炎が燃え盛る中、先ほど俺が壁に激突した際に感じた鈍い痛みが、遅ればせながらじわじわと体を蝕んでいることに気がついた。ズキズキと脈打つような痛みに、俺はその場にうずくまった。


「貴様!不用意にお嬢様に触れるなと何度言えば――」


 ベルナさんが俺の肩を掴み、何かを捲し立てているようだが、俺の呼吸は次第に荒くなり、喉の奥が締め付けられるように苦しい。背中の痛みも先ほどより一層激しくなっている。


 堪らず咳き込むと、咄嗟に口元を押さえたその手には鮮やかな赤黒い血が滲んでいた。


「ジェスロ様!毒を受けて!・・・」


 アリア様の悲痛な叫びで、ようやく自分が毒に侵されていることに気がついた。そうか、あの黒い体液には毒があったのか・・・そうと分かれば一刻の猶予もない。ゴホッゴホッと激しく咳き込みながら、意識を集中して【キュア】と心の中で唱えた。ギルド職員として怪我や状態異常に対処するために習得を推奨されている解毒魔法で、ギルドに入った当初に渡された魔導書に記載があった。十五年ほど前に苦労して覚えたが、当時から二日に一度は誰かに使っていたような気がする。

 皆無警戒に毒を受けすぎるんだよ!

 毒を受けた俺が言うと説得力はないよな・・・


 アリア様とベルナさんは酷く狼狽えている様子で、必死に俺の名前を呼び、鎧を脱がそうとしている。


「いや、それ必要ないから・・・」


 弱々しく言おうとするも、上手く声が出ない。

 程なくして体内の毒が浄化されていくのを感じ、俺はゆっくりと体を起こした。するとアリア様とベルナさんは信じられないものを見たかのように、目を丸くして驚いている。


「な、なぜ・・・生きているのですか?」


 ベルナさんがまるで幽霊でも見たかのようなおかしなことを言う。その言葉に俺はハッとなり、ベルナの肩を掴んだ。


「俺はもう大丈夫だけど、あのアンデッドスライムの攻撃、お前も食らったろ?毒は大丈夫なのか?」


 心配して問いかけると、ベルナさんは訝しむようにジトッとした目で俺を見てきた。なんでそんな目を?・・・


 アリア様が少し呆れたような表情で言った。


「ベルナは槌使いとはいえ、聖属性のギフトの持ち主なのですよ。アンデッドに対して有効なだけでなく、毒にも高い耐性があるのです」


 しまった。

 完全に場違いなことを口にしてしまった。聖属性のギフト持ちに対して、毒が有効かどうかなど、考えるまでもないことだった。


「申し訳ありませんでした」


 90度腰を曲げて素直に謝罪した。


「ギルド職員は解毒魔法の習得を推奨されていて、それで解毒しました」


 ついでに今の自分の状況の説明も付け加えた。

 しかし、ベルナさんのジトッとした視線は変わらない。


「そんなバカな・・・あれはただのアンデッドスライムではなく『キング』注)」


 注釈・・・『キング』という言葉は、ベルナが発したが、ジェスロは直前の状況に気を取られ、聞き取れなかった部分です。


 ベルナさんが何かを言いかけている最中、喉に詰まった血の塊が再び込み上げてきて、俺は激しくむせた。ゴホッ!ゴホッ!咄嗟にアリア様が差し出した御椀にウォーターを出し、それで口の中を濯ぐ。


「なんだったけ?」


 まだ何か言いたそうなベルナさんを、俺は手の平を向けてで制した。前方、通路の奥から複数の魔物の気配が急速に近づいてくるのを感じたからだ。二本の剣をしっかりと握りしめ、俺はゆっくりと立ち上がると前方から来る気配に対処するため、意識を前方へ集中した。

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