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第13話 裏話

警察は当初、窃盗のラパン事件を真面目に取り扱っていなかった。

だから、どのNO.のカードがどの盗品と結びついているかなんて、気に留めなかった。


ちょっとしたものが盗まれて、そこにウサギのカードが置いあった、くらいに思っていたのだ。


そしてそのカードが「御園探偵」のラパンの予告状と似ても似つかなければ、

そのまま闇に葬られる事件だっただろう。


「この消しゴムは・・・?」


三山が消しゴムをつまみ上げた。


「それは、ここの近くの文房具屋で息子が盗った物です」


山村静香が言った。


「先日、どの品をどこで盗ったか息子から聞き出し、一軒一軒お店に電話して謝ったんです。

その消しゴムは、息子が一番初めに盗った物です。間違いありません」

「カードは置かなかったんですか?」

「さあ・・・そこまで聞いてません。当然、置いてると思ってましたし、

警察の方からも、窃盗現場にあったカードは全部で12枚と聞いていましたので、

品物の数と一緒だな、としか思いませんでした」


ここでも餃子の存在は完全に無視されていたわけだ。

本来ならば、盗品は餃子を含めて13個、カードは12枚、である。


武上は腕を組んだ。


「じゃあ、山村遼は、消しゴムを盗った時はカードを置かなかったのか?」

「いや、置いた」


和彦は確信に満ちた声で言った。

そして・・・寿々菜が「あ!」と声を上げた。


「そうか!NO.0のカードですね!?」

「なるほど!」

「ああ!」


山崎と山村夫妻の声も重なる。


残りの面子・・・三山、武上、尾高校長、加山、それになんとなく出て行きそびれた小川は、

訳がわからず、ぽかーんとした。


「NO.0のカード?」

「おい、武上。もうちょっと真面目に『御園探偵』を見ろ」

「そんな暇、あるか」

「まあ、真面目に見てても、かなりのマニアじゃないとNO.0のことなんて知らないか」


和彦は、「御園探偵」の裏話を始めた。


それによると・・・



「御園探偵」の怪盗ラパンは、当初第1弾にのみ登場するはずだった。

ところがいざ放送してみると、思いのほかラパンに人気が出た。

これはいける、とそれ以降の「御園探偵」にも毎回登場することになり、

いつの間にやら御園英志の宿命のライバルになってしまった、


ということである。


「で、話の都合上、ラパンの予告状のウサギの眼帯にNO.を振ることになったんだが、

それが決まったのは第2弾を作っている時で、既に第1弾は放送済みだった。

当然、第1弾のウサギの眼帯にはNO.なんか振っちゃいない。

だから、第2弾のNO.を『1』にして、第1弾はNO.なし・・・じゃ格好がつかないから、

NO.0にしたんだ。『ゼロだから眼帯には何も書いてませんでしたー』ってな。

ま、後からのこじ付けだ」

「ゼロ・・・じゃあ、こないだ放送された第5弾のNO.は『4』なのか?」

「そうだ」

「なるほど。NO.0、1、2、3、4。これで5枚って訳だな。と言うことは・・・」


武上がハッとした。


「山村遼はそれを知っていて、最初に消しゴムを盗った時には、眼帯に数字が書かれていない、

NO.0のカードを置いていったんだな!?」

「そういうことだ。あるだろ、数字の書かれていないカード」


武上は恐る恐るポケットからカードを取り出した。

これだけは他のカードとは違い、ジッパーのついた透明の袋に入っている。

なんと言っても、殺害現場の遺留品だ。


「・・・で?どういうことだ?」

「だから、山村遼は文房具屋にそのNO.0のカードを置いたんだ。で、そこの店主がそれを見つけた」

「おい。和彦、お前どうしてそんなこと知ってるんだ」


和彦は肩をすくめた。


「カードと盗品の数が合わないって知って、『おお。そういや殺害現場のカードは数字がなかったからアレがNO.0ってことか』って気づいた。で、山村遼に『NO.0って知ってるか』って聞いたら・・・」

「和彦!お前勝手に!!」

「サインやったら、喜んでしゃべったぞ?」

「・・・」

「とにかく。山村遼はちゃんとNO.0の裏話を知っていて、文房具屋にそれを置いたって言ったんだ。

だから俺、わざわざ文房具屋に行ったんだぞ?」


忙しいのか暇なのか。

さすが御園探偵の主人公、と言っておこう。


「もしかしたらその文房具屋の店主が犯人かもしれないと思ったんだ。

でもさ、その店主、とても人殺しするような奴には見えねー。

カードはどうした?って聞いたら、全然覚えてないし」

「・・・」

「海賊みたいなウサギのカードだ!って力説したら、ようやく思い出したらしい」

「それで!?」


三山と武上は勢い込んだ。


「あげた、って」

「え?」

「南部小の生徒の落とし物だと思ったから、ここの教師らしい人間が買い物に来た時に渡したってさ」

「ここの・・・教師?」


尾高校長が青ざめる。


「それは・・・誰ですか?」

「さあ」

「さあ?」

「店主も、その教師の名前はもちろん知らないし、顔も覚えてないって」

「・・・そんなんで、どうして南部小の教師って思ったんだ・・・」


武上はため息をついたが、和彦は「そりゃ分かるだろ」と言った。


「ちょうど学校の昼休みにそいつが買い物に来たそうだ」

「それだけで?」

「それと、」


和彦は扉の近くへ視線を移した。


「白衣を着た女だ、って言ってた」







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