ギリギリの時間に起こされました
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「うぅ……昨日は酷い目にあった。まだ打たれたところが痛いぞ」
「誰ですか。ヒート様にそんな怪我を負わしたのは」
「お前だよ!! しかも、ギリギリに起こして……食堂で御飯を食べれなかっただろ」
今日はクラス発表が校門前で掲示され、その後にクラス別で召喚の儀が行われる。
そんな日なのに、目が覚めたのは召喚の儀開始三十分前。
昨日、モモに攻撃を受けた箇所が首だったせいもあって、寝違えた感じになり、ちょっとでも動かすと痛い。セシルから受けた攻撃よりも痛いし、長引いてる。勿論、過去の記憶が戻ってるわけがないから。
「そこは私が食堂でサンドイッチを作っておきましたから」
モモは私が意識を失ってる間に寝間着に着替えさせてたみたいで、急いで制服に着替え中。
モモはヒートの体を見慣れてる感じで、全然動じない。むしろ、私の口にサンドイッチを突っ込んでくるぐらいだから。
こっちとしても、モモの態度に着替えを見られるのが恥ずかしいという気持ちはなくなった。
「おみゃえは……モグモグモグ……着替えなくてもいいのか?」
モモは制服に着替えず、メイド服のまま。確か……私を運んだ時もそうだったけど……
「問題ありません。学園から許可を得てます。学生というよりも、ヒート様のメイド優先ですので。まぁ……ヒート様が制服好きというのであれば……」
「何か試されてる感じがするんだが……その姿が見慣れてるからな」
モモの制服姿は見てみたいけど、制服好きと認識されるのも嫌だし。
「メイド好きなのですね。分かりました」
どっちにしても、そんな目で見られるわけね。
「それは冗談として、この寮から学園まで十五分程。少し急がないと駄目なのですが……記憶は戻りましたか?」
さっきまでとは違って、モモは真面目な顔をこちらに向けてくる。
「いや……昨日と変わらない」
「そうですか……それなら、貴族達のヒート様の視線にご注意を。いえ……気にしては駄目です」
「……俺が没落貴族なのは覚えてる。馬鹿にしてくる貴族がいる事も」
「今回、庶民であるセシル=エンドールに負けた事もあります。没落したとはいえ、庶民が貴族に負けてしまったわけですから」
「なるほど……貴族はプライドが高いからな。嫌な目で見られる事には変わらないんだ。下手に汚名返上のために再戦したりはしない」
ヒートがセシルをライバル視するのは、こういう背景があったのは予想してたから。それに嫌な目で見られるのは現実でもあったから。仕事のパートさん達の方が圧が強いかもしれないし。
「それで良いと思います。庶民達もヒート様をどう見るのか分からない部分がありますから。両方を敵に回すような事はしない方が得策です。……ヒート様は庶民側が性に合ってますよ。私をメイドに置いた時点でそうなんです」
「そ、そうか?」
モモはヒートに言ってるだけなんだけど、私の方が照れてくる。それはヒートとモモの出会い方に関係するものだから……
「そうです。開始まで残り二十分……この時間になると通学路を歩く貴族……学生達も少なくなってるはずです。少し急ぐ事になりますが、出発しましょう」
「……ありがとう」
「れ、礼を言われる事はしてません!! 早く行きますよ」
モモは照れた感じで背中を向けた。彼女が私をギリギリに起こしたのも、貴族や庶民達の視線を少しでも減らすためなんだと思う。
「分かってる。遅刻するわけにもいかないからな」
私とモモは寮内の探索は後にして、外に出る。一応、ノービス寮からブレイブ学園までの通学路の道は覚えてるんだけど、モモが案内役として先頭を進んでいく。




