クラス分けと召喚
「ヒート様の体質に関しては以上です。その体質の原因を学園で調べるのも良いと思います。下手に魔法を学ぶよりも、その体質を上手く使えた方がいいかと」
モモもそれは分かってるみたいで、私に教えてくれた。多分、ここでヒートはモモの言葉を聞かず、魔法の授業を多目に取ったのかもしれない。
「そうだな。弱い魔法を使えるようになるよりも、この体質を利用する戦闘をした方が強くなれるか」
「……ヒート様は魔法に固執したところもあったのですが。頭を打って、成長しました?」
「それは流石に言い過ぎだぞ」
酷い言われようだけど、ヒートは魔法が使えない事で嫌な目で見られた事がある。家が没落したのも関係があるみたいな感じだし。他の貴族に馬鹿にされるシーンもあったから。
「他に報告する事ですが、朝に入学テストによるクラス分けが校門前で掲示されます。そこからクラスに別れて、パートナーとなる召喚を行う予定らしいです。召喚に関してはどうですか?」
「召喚もどんなのか分かってるんだが……」
クラス分けと召喚。ここまでが【テアワン】のオープニングになる。
召喚。この世界の生物だけでなく、異世界からでも自身に合った相手を呼び出す儀式。
メシア様でいえば大天使。
セシルとセシリーは狼か竜。属性は選択次第。
召喚されたパートナーは常に共にあり、主人の装備、装飾品としてパラメーターを増幅させる事も。
主人の成長に従って、パートナーも成長する。それはセシルのパートナーだけじゃなく、攻略キャラ達も同じだった。メシア様の場合は【テアワン2】で……
そして、肝心のヒートは……召喚に失敗してる。誰もヒートの呼び掛けに答えてくれなかった。これも彼の魔力に関係するのか……【テアワン2】でもヒートは召喚するパートナーを得てなかったから。
パートナーがいないのもあって、他の貴族から更に馬鹿にされる場面があるんだけど、【テアワン】の最後にはパートナーなしでもBまで行き、見返す形にはなるんだけど……
失敗するのが分かってるのに、召喚の儀に参加しないと駄目なのが嫌過ぎる。詠唱するのが恥ずかしいというか……
「ヒート様が失敗しても、メイドである私がいますので御安心を」
「気持ちは嬉しいのだが、モモとパートナーとは全然違うから」
モモは私が召喚に不安を持ってるのが分かったように言ってくれるんだけど、モモもパートナーを所持するからね。
「ふぅ……気分転換に寮内を見て回ってくる。どんな場所なのか確認したいし」
窓から外を見てみるとオレンジ色の空が暗くなり、夜になりそう。景色が木々で溢れかえってるのはノービス寮はブレイブ学園から少し離れた森の中にあるから。
といっても、学園の敷地内。森には茸や木の実等があり、採取する事も可能。
多分、この時間はセシル達は部屋に行き、相部屋の相手と会話して、寮内の探索して一日目が終わったのは覚えてる。学園や貴族のノーブル寮に行くのは無理だったはず。
この寮探索でノービス寮にいる攻略キャラ達とすれ違うイベントがあるから。
それに……ゲームで見るのと実際で見るのとは全然違うはずだから。生の攻略キャラ達もすぐに見たい気持ちもあるし……
「駄目です。記憶も不完全なら、今日のところは安静にしておかないと。私が同室である限り、ヒート様に無理はさせませんから」
部屋から外へ出ようとすると、モモが立ち塞がる。地味にモモと同じ部屋だという事も確認出来たわけなんだけど……
「頭痛は無くなったし、記憶も徐々に思い出してくるかもだろ?」
実際問題、私がヒートになった時点で記憶が無いんだから、思い出す事自体が無理な話かも……
「私としては一気に思い出して欲しいぐらいで……そういえば、強い衝撃で記憶を失ったのなら、もう一度同じようにすれば」
「ちょっと待て……何故、手をワキワキと動かしてるんだ?」
モモは立ち塞がるのを止めて、ジワジワと距離を詰めてくるんだけど!!
「大丈夫です。失敗しても、ゆっくり寝れるだけなので」
モモがその言葉を発した後、私の目の前から消えて、一瞬にして背後へ……
そこからは意識が無くなってしまった……