特異体質
「そうでした!! ヒート様の学生証は学園長から預かってしましたので、先に渡しておきます。その方が体質の説明をしやすいかと。名前が書かれている本人しか開ける事が出来ないようです。中は見てませんので御安心を」
モモは私にブレイブ学園の学生証を渡してきた。表側はブレイブ学園の紋章とヒートの名前。裏側にはスケジュールやパラメーターの確認等の項目があって、そこを押すと開けるようになってる。
「おおっ!! こんな風に確認出来るのか」
【テアワン】だと画面一面が学生証、所謂ステータス画面になって、予定やパラーメータを設定する形になるんだけど、目の前にノートぐらいの大きさの映像が見えるように。
その学生証の映像の下に、他者と共有のON/OFFがあって、OFFの状態。これをONにしたら、モモも私が見ているのを認識出来るんだと思う。
「見る事が出来たようですね。それではヒート様のパラメーターの御確認を。評価はAからEになってるはずです」
それは当然、私も知ってるから。セシルも殆どがEで、入学前の質問の返答次第で、どれか一つがDやCになってた。
「なるほど……って、ちょっと!!」
モモにも私のパラメーターが見えるようにONに変更。
ヒート=ラインバルト
職業 学生
力 E
耐久 D
速度 E
知識 C
魅力 E
技量 E
魔力 F
運 E
「わ……俺の魔力がFになってるんだが!! 最低がEなんだろ!?」
「……私的には先に魅力がEであるところにツッコミを入れると思ったのですが……まぁ……ヒート様のご指摘通り、そこです」
ヒートは若干ナルシストの面もあったけど、そこまで真似るのはちょっと……けど、このパラメーターでおかしい部分は魔力のFだけだから。
「この学生証も使うのも魔力が必要らしく、ヒート様の魔力が全くのゼロというわけではないようです。多分ですが、ヒート様の魔力が特殊であり、この反応になったと、私は判断してます」
「ん……どういう事だ?」
「ヒート様の体は魔法耐性が強いんです。攻撃魔法及び、強化や回復魔法でさえもほぼ効きません。ただ……例外があるとすれば、メシア様ですね。あの人の魔法は群を抜いていて、何度も……」
「はいはいはいはい!! そこは思い出したぞ。魔法が効かないんだった」
そうだ!! 【テアワン】でヒートとは何度も戦う事になるんだけど、魔法攻撃が効いたところで一桁だった。【テアワン2】になると、セシル達の魔法をキャンセルしてくるぐらいだったし……
「最後まで話を聞くと旦那様に教えられませんでしたか? ヒート様の躾も私の仕事ですから」
モモは話の邪魔をされたと、躾とばかりに私の頬を再度引っ張ってくる。
「しゅ……シュマン。思い出した事が嬉しくて」
ここでヒートの隠し設定が分かるのも嬉しいかも。医務室にモモが運ばなかったのも、回復魔法がヒートの体に効かないから。
「そうですか……名前を出しましたが、メシア様の事は覚えていますか?」
モモは頬を引っ張るのを止めて、メシア様の事を尋ねてきた。
「当然だ。メシアさ……メシアは俺の幼馴染だぞ。それに」
「……ですね。ここに来た目的はヒート様が魔法を使えるようになるのもですが、メシア様に勝利する事。彼女と婚約すれば、家の復興も可能です」
モモは私がメシア様の事を覚えてる事に残念そうな顔をしたように見えたんだけど……気の所為?
「魔法を使えるようにか……」
【テアワン】の魔法の授業でヒートと同じになると失敗ばかりだったのも、そのためだったんだ。更にいえば、二年時にはヒートは職業別で剣術の方に行かされてたから……普通の授業では駄目なのかも。
とはいえ、【テアワン2】でヒートをどう成長されたら良いのか、大体目安がついてる。
自身の体の魔法無効化は当然として、相手の補助魔法のキャンセルとか、これが使えるようになったら強いと思うし……
ヒートがメシア様に勝利した事が一度あるのは、この体質があったからなのかもしれない。