記憶喪失って事で
「ヒート様!! 良かった……目を覚ましたのですね。ですが、もう少し横になっていてください。ヒート様の体質では医務室よりも、体を休ませる方が良いと判断させて頂きました」
「ビックリした……いつの間にいたの……だよ」
モモは気配もなく、私がいる部屋にいた。やっぱり、【テアワン2】の暗殺者としての能力がすでにあるのかも。
「ついさっきです。今回は普通にドアから入ってきたのですが? 流石に倒れたり直後に驚かせるような登場は控えます」
「……という事は、いつも驚かせるような登場を」
そういえば、【テアワン2】でセシルのパーティーに加わった時、世話好きな面もありながら、お茶目なところと……毒舌な面もあったわ。
「……『いつも驚かせるような登場を』? それを今更言うのは……口調も少し変です」
「あっ……」
直近の問題がこれ。セシルの一撃で前世の記憶が戻ったわけじゃなくて、あの場面で入れ替わったわけ。だから、ヒートの過去はメシア様とかモモが語るエピーソード部分以外、全然分からないから。普段のヒートの生活なんて知る良しもない。勿論、ヒートの体質の事なんて……
「す、すまない。記憶喪失なところがある。体質もそうだが、特に過去の事が……断片的なのはあるぞ!! モモとの出逢いも……って、痛い痛い!!」
ヒートの口調に寄せてみたけど、ここは素直に……じゃなくて、記憶喪失という事にしておかないと絶対にボロが出る。モモも細目で怪しむように睨んでから、私の両頬を引っ張る。
「誰かが変装してるわけでもなさそうですね。まぁ……今更ヒート様を誘拐する理由もありませんし。私も一目で本人だと分かりましたが」
「えっ!? それならば、何故俺の頬を引っ張る!?」
モモが頬を引っ張ったのは、誰かがヒートに変装したのかを確認するため……って、モモ自身が否定してるんだけど!!
「臭い台詞を言うからです。ヒート様自身の体より、私の出会いを覚えてるなんて……仕方ないので、分からない事があれば、説明していきます。まずは体質から聞きますか?」
「あっ……ああ。それで頼む。後、俺が寝ている間の出来事を知りたいぞ。学生証を貰ったとか……」
少しデレた感じになってるんだけど……セシルとの冒険時でもここまでは無かったような……頬を引っ張るぐらいは許す程の信頼関係があるのかも。
後、気を失ってた間のイベントが、【テアワン】と同じなのかを確認しておかないと。
戦闘チュートリアルが終了後にあるのは、学生証の入手。
学生証はブレイブ学園の生徒である事を示すだけじゃなく、自身のパラメーターをA〜Eで表示してくれる。それに加えて、一週間の授業予定を提出するのも学生証から。
後は……クラス発表は明日。パートナーとなる召喚もクラス別で行われたはずだから……
クラスは能力別でランクAからEまではある。職業別になるのは二年時から。一年は全体の基礎的な覚えていく。一年時で剣や魔法、回復の特化型の育成するのもあり。その方が確実になりたい職業を選べたりしたんだよね。
セシルはランクEから。昇級するためのテストはあるし、クリア周回すれば、最初から高ランクから始める事も。
メシア様は特別なランクS。周回しても、そのクラスになるのは無理。
ヒートは……セシルと一緒のランクE。最初の戦闘に負けたんだから、当然といえば当然なんだけど……