動かないのではなく、動けない
「そのやる気はよし。それに応じて、圧を少し与えるぞ。見事、打ち破ってみせろ。まずはそちらは攻撃からだ。では……始め!!」
ムサシ先生が一分間のタイマーを押し、其々の組手が開始させる。
リネットとマクスはセシリーとモモの組手を見る方を選び、私は勿論セシルとムサシ先生の方を選ぶ。
モモがこの授業に絡む事は本来なく、彼女達の組手も気になるところだけど、ここはね。
副作用から回復したヒートも私の頭の上に乗り、二人の行く末を見守ってるぐらいだから。
十秒経過……何も動きがない。
二十秒経過……二人とも動かない。
三十秒経過……
『あんなに息巻いておいて、何をやってるんだ!! 寝てるのか!! 一歩ぐらい踏み出せ!!』
「黙って。彼は動きたくても動けないんだ。それだけ、ムサシ先生の圧が凄いんだから……」
これはムサシ先生と対峙してる、セシルしか分からない事。けど、この場面は【テアワン】でもあって、セシルの心情も書かれてた。
攻撃出来るのはセシルだけなのに、ムサシ先生の圧のよって、反撃とばかりに斬られるイメージを植え付けられてたはず。
「悪くはないな。後退せず、ギリギリのところで耐えてるな。私が一歩踏み出してもいいのだが」
セシルからの返事はない。そんな余裕があるわけがないから。ムサシ先生が一歩踏み出した事でどうするか……これはセシルじゃなく、私が選択肢になる箇所。
【攻撃する】と【動かない】の二択。
【攻撃する】の選択が良いように見えて、正解は逆。パラメーター上昇は【動かない】方。
この場合、【勇気をもって攻撃するんじゃなくて、恐怖に負けて、無謀な攻撃をするから。
【動かない】はセシルの攻撃じゃなく、防御の構えを取ってしまう。そこはムサシ先生に注意されながら、構えが出来た事を褒めていた。
「……一分だ。攻撃は出来なかったが、次の防御で取り返せ。あの場面で動けたのなら、こちらは行けるはずだ」
セシルが選択肢したのは【動かない】。主人公補正があるみたいに、正解を選んでる。ここは喜んでいいところなのか微妙かも。
『はぁ……折角声を掛けてやったのに動けないとはな? ムサシ先生も笑ってるぞ』
「……あれは失笑じゃなく、期待されてるの。一歩も動けなかったけど、手は動いてたんだから」
『そ、そうなのか!? 俺様に勝ったんだ。そうでなくては困るぞ』
ヒートが私の言葉に喜んでるあたり、悪役どころか、良い奴なのが分かるから。
「次に行くぞ。セシリー=エンドールもいいな!!」
ムサシ先生は森の中にいるセシリーに聞こえるよう、大きな声を出した。
すぐに攻守交代。セシリーとモモがどんな風だったのか、マクスとリネットに聞く暇がなかった。
「はじめっ!!」
その言葉と同時にムサシ先生はセシルの頭へと木刀を振り落とす。
その速度はスロー。けど、殺意、圧を掛けられた状態だと、それを解かない限りは速さなんか関係ないから。しかも、攻撃する時の方が殺意が強いイメージがあるわけで……
『防いだ!? 防御したぞ!!』
ムサシ先生の攻撃をセシルは防御した。これも【テアワン】で【動かない】と選択肢を選んだ時にだけ成功するんだけど、その通りになってる。
「よくやった。攻撃を続けていくぞ。腕が動いたのなら、次は足も意識しろ」




