一番手
「それとだが……攻防以前の問題がある。それは相手との実力差をきちんと判断する事だ。そして、それに応じた動きを正しく出来るか」
突然、モモはムサシ先生から距離を取った。
「殺意、圧を感じ取り、彼女は距離を取ったわけだ。これは間違いじゃない。格上相手だと、圧に呑み込まれて、恐怖で動けなくなる事はある。これを跳ね除ける経験も必要だ。逆に暴走して、突っ込むのも駄目だぞ」
ムサシ先生は解説を終えた後、構えを解いた。アラームが鳴り、丁度三分。そこまで計算された動きだったのかも。
「次はお前達の番だ。誰からでも構わないぞ」
あの組手を見た後で、手を挙げるのは難しいでしょ。
「はい!! 僕がやります。やらせてください」
そんな中、セシルが手を挙げた。流石に主人公っぽさを見せてくれる。
『先を越されたではないか。格好良く、一番手として行くべきだろ』
ヒートは副作用にやられてたけど、喋れるまでに回復してる。やっぱり、回復速度は本来の体と同じなのかも。
「仕方ないだろ。あんなの初めて見たら、普通はビビるでしょ」
話し方もごちゃ混ぜになるぐらいには動揺してる。薙刀部でも組手はあったけど、レベルが全然違うから。動ける気が全然しなかったし……
「私を相手にする方はいますか? こちらから選んでも構いませんが、誰もいないようであれば……」
ムサシ先生の相手はセシルがするとして、モモを相手にするもう一人が必要となるわけで……選ばれるとしたら……私!? モモの視線がこっちを向いてるような……
モモが相手する方が気持ちは楽だけど、手加減をちゃんとしてくれるかどうか不安だったりする。
「武器が弓でも大丈夫ですか? その時はどうすれば……」
先に立候補したのはセシリー。選んだ武器は弓らしく、組手をするにしても、距離を取らないと駄目なわけで……
「どれだけ距離を取って貰って構いません。攻撃時、私は動き続けるので、それを狙ってください。セシリー様もその場から移動しても問題ありません。防御時は矢を撃ち込み、私を近寄せないように」
「その形で問題ないぞ。セシリー=エンドールは最初から森の中に潜んでも構わないぞ。最初から弓の軌道が分かれば、避けるのは容易いからな」
ムサシ先生もモモの案に同意し、セシリーの方を有利にするために、森の中へ移動するよう促した。撃つ相手の場所が分かってるだけで、避けるのが簡単とか嘘だから。ムサシ先生レベルだから言える事だし。
「あの組手を見て、よく挑戦出来たね。入学テストの時と全然違うんだから」
「女性を先に行かせる事になるとは……不甲斐ない。後で私も続くからな。一矢をでも当ててくれ」
マクスもすぐに手を挙げれなかった事を反省し、セシリーを応援してる。
「任せておいて。兄さんに負けてられないし、モモさんをビックリさせるんだから」
セシリーは意気揚々と旧校舎周囲にある森の中に向かう。
リネットとマクスがセシリーの応援をしたんだから、セシルの応援は私がする感じなの? この後、勝負する事になってるんだけど……
「『……ムサシ先生相手でも、一撃は入れろよ』」
『そこは真似なくていいから!!』
ヒートは小さな声でセシルを応援したから、私もそれと同じ言葉を口にした。
「分かってる。君との勝負の前に不甲斐ない真似は出来ないからね」
セシルは私の言葉に応じて、ムサシ先生の前で木刀を構えた。




