毒毒毒?
一時間後……
モモはまだ戻って来てない。ムサシ先生も知ってる事だから、悪巧みを企んでるわけじゃないと思うんだけど……槍の練習に集中出来ないから。
『長いな。もしかして、俺様達の知らぬ間に悪い物でも食べたのか? トイレを覗きにいくわけにもいかないしな』
ヒートはまだトイレに籠もってると思ってるようだけど、モモの事をどう考えてるんだろう? 心配はしてるとは思うんだけど……
「戻りました」
「一体何処に行って……」
モモの方へ振り返ると、その手には大量のおにぎりが載ったプレートを持っていた。
「食堂のお手伝いを少々。料理の腕を落としたくないですし、私とヒート様の食事代にもなりますから。今回は皆様方の分も用意してますので、休憩時にぜひ」
モモが授業を抜け出したのも昼食の準備をするため。バイトみたいな物で、仕事をする代わりに食事代を払わなくていい事に。
これも没落貴族でお金がないからか……モモ様々なんだけど……
「モモが作った料理……楽しみかも」
「ありがたい」
「ラッキー!! ご飯代が浮く浮く!!」
セシリー、マクス、リネットはモモが用意した料理に喜んでる。
「……少し早いが休憩にするか。折角、作った食事をすぐに食べなければ申し訳ないからな。私の分もあるのだろうか」
「勿論です。先にどうぞ」
ムサシ先生は指導を止め、モモが作ったおにぎりを手にして、皆に昼食を食べるよう薦めてくる。
ムサシ先生の好物がおにぎりである事は、【テアワン】のプロフィールで知ってる。モモは作ったのは流石に偶然だと思うけど……
「マクス様」
「リネット様」
「セシリー様」
モモは順々に目の前まで行き、おにぎりを渡していく。勿論、喧嘩を吹っ掛けようとしたセシルに対しても……
「セシル様もどうぞ」
『やるな。あれには痺れ薬が混ぜてるはずだ。皆に渡したのも油断させるため。あっちにはパートナーの力で有利なのを、これで帳消しにする。それ以上の効果があるぞ』
ヒートはペタンコの体じゃなかったら、ウンウンと頷いてそう。
モモがまさかそんな事を……するかも。【テアワン】でヒート関連の邪魔をしてたのはモモだった事もあるわけで……けど、セシルをそんな体にして勝負しても為にならないのは、モモも分かってるはず……だよね? 勝つのが目的じゃないんだから……
「あ、ありがとうございます!!」
セシルはモモから貰ったおにぎりを目の前で食べて見せたが……セシルに何も変化はなさそう。
「ヒート様……お耳を」
『ふっふっふっ!! やはり、そうだろうな』
モモは最後に私の方へ。おにぎりを渡すだけじゃなく、話す事があるみたい。これって……本当にセシルに毒を盛った? 遅効性だから、後から出る毒?
「食堂は貴族達で溢れています。Eランクのヒート様達が行けば、嘲笑の的に。セシル様との勝負に集中して貰うため、この形にしました」
モモは小さな声でそう報告する。学園の食堂は貴族と庶民兼用で、貴族達が占領してるらしく、時間差で庶民が休憩してるのかも。
そういえば……貴族と庶民の溝を無くすイベントの一つに、食堂の事があったのを覚えてる。
「た、助かる。俺だけじゃなく、皆に嫌な思いをさせなくて済んだ。おにぎりもちゃんと頂く」
『そっちか!! 悪くはないが……少し残念だな。モモならば、やってくれると思っていたが』
ヒートは残念そうな感じだけど、私は安心した。
「いつものヒート様ではないですが、これはこれで……。小物、貴方の分も用意してます。そのペラペラな体を早く戻してください」
『丁度、お腹が空いていたところだ。満腹になれば、体が膨らんでくれると助かる。たまに風で飛ばされそうになるからな』
今、ヒートは制服のポケットの中にいる。槍を振る時に邪魔になるし、放っておけば、風で飛ばされそうになるから。
モモはヒートをポケットから取り出し、おにぎりを食べさせてあげ……るんじゃなくて、口の中に捻り込む。ヒートの両手では持ちにくいから仕方ないか。
『一気に入れすぎだ……うっ!! 体が……熱いし、痛いし、痺れるぞ。これは……毒か!!』
ヒートの体は膨らんだのはいいものの、段々と青褪めていく。
「モモ!! 俺のパートナーに何を……」
「小物がそんな体になっているのも、ヒート様に何か迷惑を掛けたのでしょう。その罰として死なない程度の毒……というのは嘘で、魔力回復に必要な色んな薬草を混ぜました。副作用が出たとしても仕方ない事です」
モモはヒートの魔力不足に気付いて、それ用のおにぎりを用意してくれたらしい。気付けば、ヒートの体は宙に浮き始めてめる。副作用に関しては、ヒートへの罰扱いなのかも。




