不意討ちという挨拶
「おっ!?……今日は待ち伏せはないか」
校門前に到着。昨日は貴族の三馬鹿が待ち伏せしてて、モモが撃退してくれたわけで、召喚の儀があった次の日だから、もう一度やってきそうと思ったんだけど……
「モモがいないから、いなかった方が助かるんだけど」
体質のお陰で負けないかもしれないけど、面倒な事になりそうだし、授業に遅刻する可能性が高い。パートナーの勝負だって……
『昨日の三人組か? 俺様も見てたぞ。粘着しそうな奴等だったからな。貴族はプライドが高いから困る』
「どの口が言ってるんだか」
ヒートもセシルとメシア様に粘着してたからね。プライドが高いのもお互い様だから。
『おかしな事を言ったつもりはないぞ? ……三人組がいないのは理由が分かったぞ』
ヒートが指……じゃなくて、腕を指した先には制服を着た女性の後ろ姿が。勿論、その後ろ姿を見間違うわけがない。
「メシア様!? 何でギリギリの時間に」
『メシアの魔力のせいだろ? 強い魔力を持たないと近付けないからな。他の奴等の迷惑を考えたんじゃないか?』
「なるほど!! 流石メシア様は優しいわ」
『様は必要ないと思うが……優しいというより……あまり人と関わりたくないだけだぞ。アイツも色々とあるからな』
ヒートは沁み沁みとした声で話してきた。幼馴染なだけに色々と知ってるのが羨ましい。メシア様の強力な力が関係してると思うけど……そんな中、ヒートだけが普通……メシア様に対する接し方が違ったのかも。
「様に関しては……ヒートが呼び捨てにしてたのなら、慣れていくしかないんだよね。……ヒートとメシア様は幼馴染なんだから、挨拶しても問題ないよね?」
朝の挨拶。互いに『おはよう』を言うのは良い!! メシア様に言われたら、一日元気でいられる。彼女の側に寄れる者の特権でしょ。
『挨拶? 不意討ちを仕掛けるには良い場面だな。茜も分かってるじゃないか?』
「……えっ? 何言ってるわけ? わ……俺が言ってるのは清々しいもので、不意討ちとか物騒な挨拶じゃないから」
『メシアとの挨拶はこれだぞ? 会った時には勝負を仕掛けるようにしてたからな。勝つためには手段を選んでられないだろ?』
挨拶=勝負を仕掛けるになってるの!? メシア様がヒートを撃退する場面は大体がそれだったわけ? それは間違ってる気もするんだけど……
「待って……それって、恒例化してるの!? 流石にそこは考えないと」
メシア様の攻撃を毎回私が受ける事になるんだよね。体力の回復が早くても、毎度ボロボロになるのは嫌なんだけど……彼女の攻撃だからって、ドMでもないから。
『急にそれが無くなったら、メシアも不審がるぞ。このお陰で打たれ強く、体力の回復も早くなったからな』
何度もメシアの攻撃を受けてたなら、打たれ強くもなるし、回復魔法なしで次の場面では元通りになってるんだけど……私自身が体験した事がないから。
『俺様が見本を見せてやる。今回、俺様は宙に浮いてるからな。足音や気配で察知出来ないはずだ!!』
「ちょっ!!」
ヒートは私の言葉も聞かず、メシア様へ突撃を敢行する。そこまでの速さはなく、隠れる素振りもない。真っ直ぐ突き進む。
メシア様の魔力の壁もヒートには効果なし。それだけの魔力を所有してるのか、私の体質が契約によって反映されてるから?
彼女はヒートの接近にまだ気付いてない。これは【テアワン】の時には無理だった、メシア様に一撃を与える事が!?
『取った!!』
ヒートは勝利を勝ち取ったみたいに叫ぶ。勿論、その声はメシア様に聴こえてないはずなんだけど……
「あっ……」
メシア様は後ろを向かず、前を進んでいく。ただ……メシア様のパートナーであるルシフェルが主の危険を察して、ヒートの体を片手で握り潰した。そして、彼女にバレる前にポイッと捨てられてしまった。




