モモは激怒する
『という事はだ!! ついに俺様も魔法が使えるわけだな。他の貴族達に馬鹿にされず、メシアにも一歩近付けるぞ。最初に使うのは格好良い炎系だな』
ヒートは可愛らしい手を前に出して、炎系?の魔法を使おうと……
「ちょっと!! こんなところで炎の魔法なんて使おうもんなら」
部屋が炎に包まれて、ノービス寮全焼になるから!! そんな事したら、ブレイブ学園から追い出される事も……
『……どう使うのかが分からないぞ』
「何よそれ……ビックリさせないでよ。というか、寮内で魔法は禁止されてるのを忘れてたわ」
寮内で学生達の喧嘩が発生した場合を考慮して、一部の魔法以外は禁止されてるんだった。許可されてるのは回復と伝達魔法だけ。
『ここに案内された時、そんな説明があったな。だが、今使えないのは普通に分からないからだぞ』
そこは自信満々に言わなくてもいいんだけど……
「明日から基礎訓練が始まるから、そこに魔法の使い方もあるかも。けど、パートナーが参加するのは実技だけだったような……」
【テアワン】の一週間の予定、授業や訓練パートはイベントが無ければ、淡々と進んでいく感じで、実技の時に一緒にパートナーの立ち絵が登場するみたいな……
「メシア様のパートナーみたいに装飾品になったりは出来ないの?」
今は魔法が使えなくても、装飾品となって、能力向上して貰えるだけで助かるんだけど? 授業も装飾品としてなら参加出来ると思うしね。
『……嫌だ。身動きが取れなくなるだろ? 自分の体の装備になるのなんて無理な話だ』
「だって、今のままだと役立た……なんでもない。メシア様のためにも協力してくれないと」
流石に役立たずは言い過ぎかも。あんな姿でもヒートにもプライドがあるわけだし……
「……そこは譲れない。俺様と同じ立場になったら、お前もそうするはずだ」
「うっ……それはそうかもしれないけど」
逆の立場なら私も嫌かもしれない。装備になって、私自身がどんな風に感じるか分からないわけだし。
「メシア様のためなら」
「この姿だからこそ、メシアに認識されるんだ。装備になったら、何とも思われないんだぞ」
「くっ!! アレは確かに羨ましかったけど」
不毛な言い争い。一触触発の雰囲気が部屋に漂ってくる中……
「ヒート様!! ご無事ですか!! 部屋に戻った聞いて、急いで戻って……」
モモが勢いよく、部屋のドアを開いた。Aクラスの召喚の儀を終えて、Eクラスの方を覗きに来たんだろう。その時に私がいなくて、セシル達かムサシ先生に聞いたのかも。
モモの視線はヒートの方へ……メシア様みたいにヒートのぬいぐるみ姿をお気に入りになった感じ……
『……ヤバいヤバい!! ヤバいぞ!! 装飾品になる方法は……分からん!!』
になると思ったのに、ヒートは焦り始めて、嫌がってた装飾品になろうと奮闘し始めたんだけど?
「召喚された偽物風情がヒート様に手を出すなんて!!」
モモもぬいぐるみのヒートを気にいるのかもと思ったけど、その真逆だった。パートナーのくせして、主である私に逆らってるのが許せなかったみたい。
今朝のモモにはなかった右手に巻いた鎖が勝手に動き始めて、蛇の姿に変化。それがモモのパートナーであるオロチ。
ヒートはモモの性格を知ってるし、視線から殺意を感じ取ったのかも。それに加えて、オロチもモモの意思を汲み取って、ヒートを狙ってるみたいに舌をシュルシュルと出してるから。
『こうなったら、お前が俺様の盾になれ。そして、モモを説得しろ』
「えっ!? それはないで……ないだろ」
ヒートは装飾品になる事を諦め、最終手段として、私の背に隠れた。
『俺様の敵には容赦ないところがあるんだよ。そういうところは知らないのか?』
「そんなの知らないから。昔の事も全然……記憶喪失って事にしてるくらいぐらいで」
『……そうだったな。なら、俺様の言う通りに言えばいい』
「わ、分かった」
モモがヒートを大事に想ってるのは知ってるけど、そんな事まで分かるわけないから。モモの事だけじゃなく、ヒート自身の過去の話とかも色々聞いて、擦り合わせていかないと問題が起こりそうだわ。
「何をゴチャゴチャと言ってるのですか? 偽者を守るなんて……操られてるわけですね」
「ま、待った。話を聞いてくれ」
ヒートだけじゃなく、私もヤバくなってる気がするんだけど……ここはヒートの言葉に合わせて、モモを説得する!!
「『この可愛さに嫉妬するのは止めろ』」
「……って!! そうじゃないだろ!!」
ヒートはナルシストな面もあったから、言いそうなだけど、今はその時じゃないでしょ!! 言った後、すぐに後ろを振り返ってしまったから。
というか、モモに接する態度を間違ってる気がするんだけど!!
「目を覚まさせてあげます!!」
モモは右手を掲げ、オロチが大きく口を広げた。




