違った展開になりました
「痛い痛い……俺も好き好んで……なりたかったわけじゃ……ないんだから」
『俺様の体に不満があるのか!! 気持ちは痛い程分かるが、それはそれで許さないぞ!!』
私の言葉が火に油を注いだみたいで、殴るのを止めてくれない。まぁ……小さな体でぬいぐるみのように柔らかく、実際はそこまで痛くないんだけど……
ぬいぐるみから発する声も【テアワン】の……今の私の声と同じだから、ヒート=ラインバルト本人で間違いないでしょ。
「もう一人の己を召喚するとはな。別世界からなのか……特殊であるのは間違いないか。成長すれば……同じ姿になるのか? ……彼の声に答えたはずが、何故すぐに喧嘩をしているのかも意味が分からないが」
ムサシ先生が驚くのも無理はないかも。自分自身を召喚した感じになってるんだから。
「これで全員の召喚の儀が終わったな。授業は明日からだ。今週は基礎を教えていく。そこから自身に必要な授業を選んでいく事になる。今日のところはパートナーの親交を深めておくように。装備になるのも対話が必要だぞ」
この後、ムサシ先生はそう言って、この場を去る。
セシルやセシリーの場合はパートナーの名前を決めた事で片方だけのイヤリングになってくれる。マクスは本、リネットの場合はヘアピンだったはず。
そして、昨日の出来事に対して、セシルはヒートに謝ろうとするんだけど、ヒートは召喚の失敗もあって、彼を敵視……ライバル宣言する場面になる。
【テアワン】一周目のオープニングはここで終了して、予定を決める流れになるはずなんだけど……
「先生も言ってる。契約したんだから、俺の話も……えっ!?」
『なっ!!』
「これ……私に譲って欲しい」
メシア様がいつの間にか私達の側に近付き、ヒートを抱き締めた。勿論、私じゃなくて、ぬいぐるみの彼の方に。
ヒートもビックリして、ぬいぐるみの体がみるみると赤くなっていく。
好きな相手に抱き締められてるわけだから、嬉しさ半分、照れや恥ずかしさがあるのかも……正直、ヒートが羨ましいんだけど!!
途中で限界になったのか、ヒートは意識を失ったみたいにガクッとなってるし……
「メシア=ヘルズ。何をしてるんだ。ソイツは彼のパートナーだ。譲るのは無理な話だぞ。魔力に当てられて、倒れたではないか」
ムサシ先生はメシア様とヒートを引き剥がし、私に渡してきた。そして、メシア様を別の場所に連行していく。
「ヒート=ラインバルト。彼女の魔力をパートナーが肩代わりをして、受けてくれたのかもしれん。とはいえ、体に負担がないとも言い切れない。昨日の事もある。パートナーと共に医務室に行くか、自室で休むになりした方がいいぞ」
「……分かりました」
メシア様が側によったのにも関わらず、私に何も起きない事で、ムサシ先生はヒートが肩代わりしたと勘違いしたみたい。セシル達がいる手前、怪しまれるのも嫌だし、否定もしなかったけど……
セシルは遠慮したのか、私に昨日の出来事の謝罪は無くなったっぽい。
私は医務室じゃなく、ノービスの寮に戻る事に。モモが戻ってる前にヒートと二人で話し合いをしないと。
メシア様を幸せにするためには、彼の協力は必須なんだから。




