ヒート・ヒート
「メシア=ヘルズ。君の召喚は終わったんだ。先に戻っても構わないぞ」
メシア様がいる事で、セシル達が緊張するのではないかと、ムサシ先生は気を使ったわけなんだけど……彼女は首を振り、『興味がある』の一言で、この場に残る事を希望した。
自分以外の召喚に興味があるのかと思ったけど、視線はセシルじゃなく、私の方に向いてる。
【テアワン】の時もメシア様は残ってたけど、視線が何処を向いてるまでは分からなかったから……
彼女はヒートに負けた事があって、体質の事も知ってるかもしれない。それで召喚に失敗するところを見たい?
いやいや!! メシア様はそんな人じゃないから。
『興味がある』と言葉にしたのは、ヒートがどんな相手と契約するかなんだと思う。
彼女に見続けられるだけでドキドキするのに、期待のプレッシャーで押し潰されそう……
「ヒート=ラインバルト!! 後はお前だけだぞ」
「……はっ!! す、すみません」
悶々としてる間にセシル達の召喚が終わってるし。折角、【テアワン】になかったマクスとリネットの呪文を聞けるタイミングだったのに……どれだけ気にしてるのよ。
セシル達が契約したパートナーを見てみる。メシア様のルシフェルのようにすぐに消えず、そのままの姿でいる。
セシルのパートナーは狼。セシリーが竜。最初だから両方とも子供の状態。主人の成長によって、パートナーも進化するし、属性も変化する。
マクスは木の魔物であるトレント。リネットは肩に乗るぐらいの小さな鼠。
二人はメシア様もそうだけど、セシルとセシリーのパートナーとの差に少しガックリしてる感じがする。これもゲームの時では分からなかった事かも。
残念そうな顔をしても、いるだけマシなんだと思うけど……メシア様の期待を裏切る形になるのも嫌だし……
勿論、召喚の儀を拒否する事は無理な話で、私は足取り重く、魔法陣の中へ。
「……あれ?」
魔法陣に足を踏み入れると、不思議な感覚に。体がふわふわしたような……それに誰か……メシア様とは別として、誰かに見られてる感じもある。
「…………せ」
「お…」
それだけじゃなく、全部を聞き取れないけど、聞き慣れたような……誰かの声も頭に響いてもくる。
もしかして……私と契約するパートナーからの声!? 召喚が成功する!?
ヒートの体だとしても、魂? 中身は私に代わってるから、体質とは関係なしにパートナーとなってくれる相手がいるのかも。
私は期待を胸に、魔法陣の中心にある水晶玉に右手で触れてみる。
「我の体にもう一つ宿る心よ、魂よ。未開なる先を切りに開くため、手を取り合おう」
私の頭の中に呪文が駆け巡り、勝手に呪文を口にする。
メシア様のように魔法陣が光を出さず、私自身の体から光が溢れ出し、勝手に左手が前へ突き出す。
「いでよ!! ヒート=ラインバルト!! …………ヒート!?」
自然と契約者の名前を叫んだのはいいものの、ヒートは私の事じゃないの?
ポンっと音がしたと同時に、目の前に現れたのはヒート=ラインバルト……の人形。それも【テアワン】の公式で販売されたヒートのぬいぐるみ!?
『な、何だこれは!? 俺様の体を返せ!!』
ヒートのぬいぐるみは宙に浮いた状態で、自身の体の状態に驚いた後、私に攻撃……小さな体でポカポカと殴ってくる。
頭の中で聞こえてくるのは自分の……ヒートの声。という事は……発した言葉からして本物!?




