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一枚上手⑤

軽食販売窓口でロレーヌとナトスがコーヒーを

ミノアがフルーツジュースミックスを

受け取っていると、

アンプレスが後ろから声をかける。

「ソロルが好きな飲み物はなんだ!?」

その問いに反応したナトスは

受け取ったコーヒーを一口飲み言う。

「・・好みすら知らん」

「ミ、ミノアは!?」

「え!?し、知らな・・・あっ!そう言えば昨日“トリシ”ってカクテルを美味しそうに飲んでたよ」

そのやり取りを聞いていた受け取り口の女性ボニーが

感じのいい笑顔を浮かべ言う。

「キュンキュンカクテルですね♪」

「(・・カクテル・・・)酒言葉は?」

ボニーの言葉を聞いたアンプレスが

質問を返すと少し照れくさそうにボニーは答えた。

「確か“このときめきは女神の導き”・・・だったと思います」

それを聞いたアンプレスは

カッコつけた様に渋く言い放った。

「お嬢さん、そいつを二つ貰おうか」

それを後ろで聞いていたナトスが

真顔で言う。

「アン、きっと上手く行くと俺は信じている」

「な、何言ってんだよ・・そんなんじゃない」

ソロルとの事を後押しされたと思ったアンプレスが

赤面しつつ慌てたのを見て

ミノアがナトスに追従する。

「僕の姉貴分のお姉とアンがアレしたら、アンは僕の兄貴分だね」

アンプレスはソロルとの結婚を示唆したような

ミノアの話を聞きさらに慌てる。

「ひ、飛躍しすぎだぞ!そ、そらぁまぁそうなったらそうだが」

その反応を真顔で見つつ

ナトスは言う。

「因みにだがソロちゃんはお小遣いをくれるんだが・・・アンはどうだろうか」

「それはちゃんとやるさ!ナトスもミノアも俺より年下、兄貴分として当然、お小遣いの一つや二つ当たり前じゃないか」

そのやり取りを見ていたロレーヌは

アンプレスのソロルへの気持ちを察し

笑みを浮かべつつ言う。

「ふふふ、あなたたちの周りには、からかいがいのある人が多いこと」

「え?から、からかう?ん?」

アンプレスが頭に?を浮かべていると

ロレーヌが続ける。

「アンプレスさん・・でしたよね?気にしなくて良いわよ、私も応援させてもらうわ」


「・・やはり・・・そんなことが・・・」

ソロルからアキトの話を聞いたベネーが

そう呟くとソロルが疑問を投げかける。

「やはりって・・・なにか知ってたんだすか?」

身を乗り出したソロルに

ベネーは首を振りつつ答える。

「そういうわけではありません、が、私自身がアキトに対し思うところがあり、ある種疑念を抱いていました・・・それだけです」

「・・そ、そうだったんですか・・・」

ベネーは凛とした表情でソロルに言う。

「・・今後想定される事態を把握していますか?」

ソロルはアキトから命を狙われる危険性を

ベネーが言っているのを理解し

真面目な顔で答える。

「わかっています・・」

それを聞いたベネーは言う。

「私たちは明確な証拠がなければ動けないでしょう・・・ほとんどの場合当事者同士のトラブルとして処理される事が多い事案です、でも・・私はあなたの味方です」

ベネーの優しい顔を見たソロルは

心強い仲間を得た気がし

心の荷が少し軽くなった。

「(・・ベネーさん・・・)」

「おまたせした」

そこへアンプレスが“トリシ”を持って

帰って来た。

隣のテーブルにナトス、ミノア、ロレーヌが

座るのも見えた。

「ありがとアン、紹介するわ、こちらの女性はこのギルドのマスターでベネーさんよ」

アンプレスは席に座りながら

挨拶を交わす。

「あぁこの人が、初めまして冒険者アンプレスと言います、縁あってソロルパーティーと行動を共にさせてもらってます」

その言い方に疑問を持ったベネーが質問する。

「私をご存じで?」

「ここへ来る直前“コハキ”でもお名前をお聞きしました、それにベネー・プルカーノと言えばリデニア最強の女生と名高い冒険者ですよ、巷の女性の間では“ベネーさんの輪”とかなんとかで慕われている感じですよね」

ピシ!

ソロル/ユナ/ミュウ「な!?」

一瞬凍り付いたベネーは

ソロル達の反応を見て

アンプレスへ質問する。

「・・ひ、瞳の色からしてアモリアの方だと思いますが・・・あなたの国でもそのような話を?それとも・・今近くに居る女性からお聞きになったのかしら?」

ソロルは“今近くに居る女性”と言うフレーズが

自分達を指していると感じ取り

慌ててそれを否定する。

「そ、そんな訳無いですよ!だって私達はアンの前ではその話していないんですから!」

「ソロル!」

「先輩!!」

「え!?あっ!(しまった!!)」

ユナとミュウが慌てて自分の名前を呼んだことで

自分の言ってしまった事を理解したソロルは

慌てて口をふさいだが、時すでに遅し。

「ほうほうなるほど、つまりアンプレスさんの前では話したことは無いと・・・しかしそれ以外の所では“現象”について議論なさったのですね・・“私達”3人は・・」

怒気を纏い威圧するようなベネーの声に

ソロル達は観念するように肩を落としていた。

ソロル/ユナ/ミュウ「(・・怒られる(のです・・・)」

3人がそう思っていると、

意外な質問が飛んできた。

「・・ソロルパーティーは、それほど強くなったのですね、因みに今のレベルは?」

キョトンとした表情を浮かべつつも

3人は素直に答えた。

「ミュウは82Lvなのです・・」

「私は89Lvです」

最後にソロルが言いにくそうに答える。

「き、90Lv・・・」

ベネーは一瞬目を見開き

驚いたような顔をしたが、

すぐに笑顔をうかべ言う。

「なら、そう簡単に手出しできるものではないですね」

ソロル/ユナ/ミュウ「へ?」

ソロル達はベネーの笑顔、想定外の反応で

面食らったが、それと同時に

心を撫で下ろした。

ナトス/ミノア「(!!)」

この時ミノアとナトスは異変を感じ取る。

『兄さん、多分ロビーにも居た人だ』

「・・・ロレーヌ、お前また良からぬことでもしたのか?」

「?何の事かしら、私はいつだって善良でホワイトだけど」

ロレーヌはナトスの問いの意図が分からなかったが

いつもの調子ではぐらかすように答えた。

するとナトスが言う。

「フ・・今“鑑定”を受けたのを感知した、恐らくお前を尾行していた人物だろう・・本当に身に覚えがないのか?」

「わたしを!?」

ロレーヌは真面目な顔でしばし考え答える。

「・・わからないわ・・・何故わたしを・・・」

「・・・」

「あれ?いなくなったね」

尾行していた人物が

すぐに居なくなったのを知り

ナトスが言う。

「・・俺達と合流する前からお前を尾行していたのは間違いないだろう・・しかしこのタイミングで“鑑定”を仕掛け、早々に居なくなったのを見ると、その目的はロレーヌだけではなく、その周辺、関係者の情報収集、そして俺達をその対象と勘違いし情報を得て目的を達したとこの場を離れた・・・俺たち以外と最近目立った行動をしていないか?」

ロレーヌはナトスの話を聞きながら

最後の質問にピンと来た。

「・・はっ!・・思い当たる節があるわ・・今朝、他の冒険者4人とタービの遺跡に入り60体以上の魔獣を回収したわ・・私は殆ど何もしていないけど、建前上私のパーティーが持ち帰った事になってる・・・」

それを聞いたミノアが急に質問を飛ばす。

「え!?せ、正確には何体?死因の武器も回収できてる?」

食い入るようなミノアに驚きつつも

ロレーヌは答える。

「・・う、うん、外傷は竹串が刺さってただけだし、抜かずにそのままだったと思うわよ、それと確か61体だったと思うけど・・・」

それを聞いたミノアは嬉しそうに言う。

「兄さん!僕たちのポイ捨てが・・」

「あぁ!回収された!環境を破壊したのではないかと気にしていたからな・・」

「だよね!その冒険者にお礼を言わないと」

二人の会話を聞きながら

話しが明後日の方向にそれたことに

頭を抱えたロレーヌはため息を付く。

「はぁ~・・・あれもあなた達の仕業ね、だとしたらあなた達のせいじゃない?私が目を付けられたのは・・・責任取ってよね」

男A「つ、疲れた・・・」

解体員A「げ、激務・・」

突然ギルドの奥から

疲れ果てた男たちがなだれ込んできた。

男B「休憩無は流石にブラック・・」

解体員B「中央に帰りたい・・・」

それを見たベネーが言う。

「いつも言っているでしょ!普通に裏から入ってくるもんじゃありませんよ!」

男C「さ、最短距離を・・今日だけは・・・」

後ろからやって来たエクードが

ベネーに言う。

「騒がしちまってすまねぇ、昼一からぶっ通しで作業させちまってよ、みんなヘロヘロなんだ」

「私もクタクタです、でも・・久しぶりに楽しかったです!」

エクードの後ろから付いてきていた

若い女性がそう言うと

エクードが声を張り上げた。

「ボニー!俺と俺の部下3人、中央からの助っ人5人、計9杯のビールをジョッキで頼む、支払いは俺に付けといてくれ、上司が部下に驕るのは世の常だからよ!」

解体員C「え!マジ!」

解体員D「エクードさんカッコいいっす!」

エクードの後ろでそれを聞いていた

若い女性がエクードにたずねる。

「師匠、私も良いんですか?」

「フィービー・・」

エクードはその女性をフィービーと呼び

続ける。

「良いか、お前は俺の弟子だ、師弟関係において実は由緒正しい風習がある」

「そ、そうなんですね師匠!いったいどのような風習でしょうか?」

「弟子が師匠に対して、“恩返し”や“親孝行”の意味合いでこの場合驕るんだ」

「おぉ~そうだったんですね!当然私は師匠の弟子です!今回驕らせていただきます!」

「そうか、良い心がけだ!因みにだが俺の分を驕るという事は今や9杯分のビール代だ、どうだ?奥がふけぇだろ」

「え!?そ、そうか、確かに話の流れ上そうですね・・なるほど奥が深い・・・肝に銘じます!」

ソロル達がそのやり取りを冷ややかな目で

ジトリと見て居ると、その視線に気づいたエクードが

気にすることなく豪快に声をかけてきた。

「よぉ!ソロルパーティー!」

エクードは歩み寄りソロルの目の前に

解体申請書の写しと契約書を置いた。

「おめぇらの分も解体すんだぜぇ」

それを見ていたフィービーが

慌てたように言う。

「え!?もしかして、223のパジャードックと216のワイドライトの解体を申請していたパーティーですか!?」

エクードは自慢げに答える。

「中央に居るお前もさすがにビックリしただろ、これが“不滅の召喚士”率いるソロルパーティーだ」

「・・はい・・私も久々に心躍りました・・・中央でもお目にかかることなかったので、助っ人で来たかいがあったと本気で思いましたから」

それを聞いてエクードはさらに調子よく言う。

「そーだろそーだろ!こうやってベネーと一緒に居るところを見ると“ベネーさんの輪”って感じだろが」

ピシ!

その発言を聞いたベネー、ソロル、

ユナ、ミュウがフリーズしていると

解体員の一人がビールを持って現れた。

解体員D「エクードさんフィービーさんビールお待たせっす」

「おぉすまねえ」

「どうもです」

エクードはビールを受け取ると

思い出したようにミノアに話しかける。

「そういやぁ小僧、その武器だがもう一度“鑑識眼”で見ても構わねーか?」

小僧と言うフレーズに身に覚えのあった

ミノアがそれに反応し答える。

「え・・あぁ良いですよ」

ミノアは鞘ごと“忍刀”をエクードに渡した。

エクードはフィービーに視線を移し

“忍刀”をフィービーの前に差し出した。

「フィービー、こいつは俺の目では何なのか分からなかった代物だ、お前の“鑑識眼”ならわかるかもしれねぇ、ちょっくら見てみなぇか」

フィービーは“忍刀”を受け取りつつ言う。

「これを?・・・ですか・・・では失礼して(“鑑識眼”)」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

名称:NINTOU(忍刀)  

製法情報/不明

現状態

  別名、魂の雫と呼ばれ膨大な年月をかけ生と死の

  狭間で生成される、魔道具の完成系の一つ。

  神域の魂魄ミノアと強く結びついている。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「(・・・嘘でしょ・・そんなものが存在しうるなんて・・・)」

フィービーが驚愕のあまり絶句していると

それを見たエクードが声をかける。

「やはり見えたか、お前の方が“得意”だとは思ってはいたが・・・その反応、よほどの物が見えたようだな」

フィービーは“忍刀”をミノアに返しつつ

恐る恐る言う。

「・・“忍刀”と呼ばれる魔道具の一種でした・・」

ナトス/ミノア「!!」

「魔道具だぁ?・・・だとしたら普通の製法じゃないな?」

その問いにフィービーは頷きつつ答える。

「・・実際の製法は“不明”とあります・・・」

「同じような物を作る事は可能だと思うか?」

ナトスが突然話に割り込み、

質問を飛ばした。

フィービーはナトスに視線を移すと

その背中にも“忍刀”があるのを見て

驚きを隠せず答える。

「・・も、もしかして、それも“忍刀”ですか?・・・同じものを作るなんて机上の空論、無理ですと答えようと思ったんですが・・実在するなら認めるしかないですね・・・」

「(そういう意味で聞いたわけではないが“机上の空論”・・可能不可能は別として作り方は存在していると見て間違いないか・・・)・・そうか、有意義な情報感謝する」

ナトスがお礼を言うと、

ミノアは“忍刀”を背負いなおした。

するとロレーヌが話を切り出す。

「じゃぁそろそろ私の用件を話してもいいかしら?」

ロレーヌはコーヒーを飲み切ると続ける。

「皆を案内したいところがあるの、一緒に来てくれる?」


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