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人間性③

ミノアは何処かの建物の屋根で顔を伏せ、

落ち込むようにしゃがみ込んでいた。

「・・・怯えた手段、らしくないか・・・」

ミノアはため息を付くと顔を上げ、

遠くを見つめて思う。

「はぁ・・・(後で皆にも謝罪しよ・・・“NINTOU”置いてきちゃった・・・)」

既に綺麗になっている左手を見ながら

呟いた後、誰かに向かって声を発する。

「保護者か・・・・ごめんなさい急に、他に行くところが思いつかなくて・・」

するとミノアの後ろから声が響く。

「・・気配を感じ来てみれば・・・あなたでしたか」


~民間B型ギルド「オーバー・ザ・リミット」~

~地下トレーニングルーム~


アンプレス「トラウマ?・・」

ミュウ「確かに、対ナトスさんならミノアさんにとって脅威と言えるかもなのですが・・」

ソロル「あんたを守ろうとしたって・・なんか矛盾してない?・・・はっ!」

ソロルは昨夜のミノアとのやり取りを思い出した。

「(“・・僕が殺す、兄さんより先に、兄さんを護るために、この手で”・・ミノアは確かそう言った・・・)」

それをみたナトスが言う。

「・・・何かミノアとの間でやり取りがあったな?」

その質問に対しソロルは質問で返す。

「・・あんたより先に動いたって事?」

「フン・・そういう事だ」

「それってつまりあんたが・・」

ナトスがソロルの質問を肯定したことで

ソロルが再度質問しようとしたが

それを遮るようにナトスは続ける。

「正直俺は自身の思考を1から10まで開示し周囲の説得を試みる事が好きではない、自身の美学に反するとだけ言っておこう、しかし今回はそれをし、ミノアと言う人間の誤解を解こうとしている、その過程で俺と言う人間の説明が必要となるだろう特に“ミノアのトラウマ”についてだが・・・前もって言っておく、ソロちゃん達と良好な関係を築く必要性を“俺達への伝言”からも感じている、さらに俺自身が原因であると自覚している以上ミノアの行動に責任を感じている・・・がだ、俺は俺自身話したくない事は話さない、質問してもらっても構わないが答えない事もある、それで理解が得られないならそれまでだ、それ以上何とかしようとはしないしそれでこの話は終わりだ」

ナトスの前置きを聞いた一同は

その意図を理解できずにいた。

ナトスは続ける。

「ミノアはユートさんに対する危険性を感じ、こう思ったはずだ、“自分が危険性を感じた以上兄さんもそれに気づいているはず”と、そしてさらにこうも考える、“兄さんならさらにその先まで思考が届いているかもしれない”と、ユートさん自身がトラフォールの名を出した瞬間ミノアは大きな誤解をしかなり焦っただろう、なぜならこう思ったからだ“兄さんはユート・トラフォールの悪意を明確に気付いてるかもしれない、だとしたら今すぐにでも切りかかるかもしれない”と」

「ちょ、ちょっと待ってください」

エルガが話し続けるナトスを遮り

割って入る。

「ナトスさんの前置きもあり、疑問を呈していいのか分かりませんが、“質問してもらっても構わない”と言う言葉を素直に受け取り質問させてください」

「質問は一向にかまわない、それに答えるかどうかはわからないがな・・・どうぞ」

ナトスに促され

エルガは続ける。

「今の話も素直に受け取るのであれば、ナトスさんもユートに攻撃していた可能性があったという事ですか?」

「結論から言おう、俺がユートさんに切りかかる事は無かった、それはユートさんに悪意が無い事をトラフォールの名を出した時に理解したからだ」

その答えにアンプレスも疑問を投げかける。

「それは腑に落ちない、明らかにトラフォールの名が出た時にみんなの空気が変わったんだぞ、みんなが危険性を感じた瞬間はあの時だ、ナトスだけ逆だったと言うのか?」

ナトスは一拍置いて答えだす。

「・・・先に俺目線の話をしよう、ミノアはあえて後手に回る判断をする豪胆な人間だと話したが、俺はその真逆と言っていい、あらゆる可能性仮説を視野に入れ先に備えておかないと落ち着かない臆病者だ、基本的に人を信用しない、食事の時に現れたユートさんを見た時も当然そうだ、あの時食事に夢中で会話が出来る状態ではなかったが、話しはしっかり聞いていた、その為既に危険性は視野に入れていた」

「あの時点で!?どうして?」

ユートが聞き返すと

ナトスは一瞬ロレーヌの顔を思い浮かべ

話しを続ける。

「ユートさんがパーティーリーダーであるならば上流階級、家名持ちではないのかと疑っていたからだ、いかに上位の冒険者でも家名持ちではない者とパーティーを組のを良しとしない風潮があると聞いていたからだが・・・ここでのクロイさんとのやり取りを覚えているか?」

ナトスがソロル達に向かってそう言うと

続けて言った。

「年齢の下りで“僕より全然若く見える”に対しソロちゃん達は次々に自身の年齢を口にした、それを受けクロイさんは慌てて自身の年齢を言っただろ」

「え、えぇ、覚えてるわよ」

「自分の年齢を言い忘れてただけだろ?」

ソロルが答えるとユナも追従し、

ミュウが補足した。

「先に女性に年齢を言わせてしまった事に対する非礼を詫びてもいたのです、紳士なのです」

「そうだ、至極全うな反応で違和感がない・・では食事の時ユートさんが名乗った時の事を思えているか?最初にアンが“ユート”だと紹介し“ユート”だと自身で名乗った後、ソロちゃんは何と言った?」

「わ、私は普通にソロル・ノウビシウムと・・・あっ!」

「今だからこそトラフォールである事を知っている、故に違和感を覚えるはずだ、仮に名乗り忘れていたのであればクロイさんがしたように名乗りなおすのが自然、さっき言ったように俺には家名持ちであると言う疑いを持っていた以上あの時点でも違和感を覚えた、だからもう一度名乗る機会を作った、結果“ユート”としか名乗らなかったわけだが、俺目線、ソロちゃん達の事を知っているのでは?と言う疑念もあったユートさんの心証かなり悪い状態だった」

「だとしたらなおさらです、結果ユートがトラフォールであると名乗った時あなたの疑念は確証に変わりユートに対する敵対心が芽生えるはず、アンプレスさんが言ったように私も腑に落ちません」

エルガがそう言うと、

ナトスは一拍置いて話し出す。

「・・・そこに関しても俺の答えから話そう・・・ユートはトラフォールの名前を毛嫌いしていると判断した、ソロちゃん達の様に敵対視していると言っても過言ではないかもしれない、恐らくトラフォールと名乗らない事の方が多く自然なのでは」

ナトスがユートに向かってそう話すと

驚いた表情でユートは答えた。

「そ、その通りだ・・・国内の、特に冒険者相手にはトラフォールを名乗らない事が多い・・・それは悪い噂が絶えない家名だからだ、トラフォールと名乗った事でトラブルになった事も過去にある・・父と兄の影響のせいだが」

それを聞きナトスは続ける。

「重要なのは、何かを騙り隠し嘘をつく行為が、危険な悪意につながるとは限らないという事だ」

ナトスはフィニクシーの顔を一瞬思い浮かべ

話しを続ける。

「目先や枝葉にとらわれる事無く、物事の本質を見ようとした場合“こんなにも心証の良いユートさんが、なぜ今トラフォールの名を口にしたのか?”が、俺目線重要だった」

「心証が良い!?」

エルガが聞き返すと

ナトスは答える。

「最悪だったユートさんへの心証は、ここでのやり取りでかなり回復していた、家名を口にしたあの時には寧ろ一定の信頼を置けるとすら感じていたほどだ、これは俺の価値観・人間性によるもの、特に理解を求める気はない」

ナトスが説明を端折ろうとした時、

アンプレスが同調した。

「いや、俺は理解できる、俺自身もユートとは今回で二度しか顔を合わせていないが、“俺の時”も今回もやり口は一緒・・・俺は嫌いではない・・いや、酒の一つや二つ飲み交わそうと思ったぐらいだから気に入っている方だ」

ナトスとアンプレスに褒められる形となった

ユートは少し照れつつ答える。

「そんなに褒めても何も出ないぞ、それに男に気に入られても嬉しくもなんともない」

「つれない奴だなぁ、あんなに熱い時間を過ごした仲じゃないか♪」

「気持ち悪いい方をするな!殴り合っただけだろ!俺は腕まで折られたんだ!」

調子よく言い放つアンプレスの言葉を

必死に否定するユートに真顔のナトスも言う。

「俺もユートさんが望むなら模擬戦の為、この身を捧げても構わないとすら思っていた」

「や、やめろ・・そんな顔で気持ち悪い言い方するな、それに模擬戦はしない!け、怪我でもしたら明日の任務に支障が出てしまう」

そのやり取りを見ていた

ミュウが言う。

「出たのです・・男たちの謎結託・・・イチャイチャと気持ち悪いのです」

「そ、そうかぁ?・・・」

それを近くで聞いていたユナが

苦笑いを浮かべて言うと、

ソロルは思う。

「(・・クロイさんにも笑顔が戻ってる・・・明らかに雰囲気が良くなった・・・後は)」

ソロルがエルガに視線を向けると

目を閉じ男達に苛ついているような

顔が見えた。

「(ははははは・・大丈夫そうだね・・・ん?)」

ソロルが苦笑いを浮かべエルガを見ていると

両手を広げるのが見えた。

「ユートさん安心していい、ユートさんが攻め俺が受けだ、思う存分攻めてこい、俺は全てを受け止めよう」

「ほ、本当にやめてくれ!全体的に何か言い方が気持ち悪い!」

「俺だって元気いっぱいだ、また俺とでも良い・・」

パン!!

調子づいていて悪ノリしていた男達は、

恐る恐る音の方へ視線を向けた。

そこには合掌し苛ついた表情のエルガが立っていた。

ゴクッ。

ユートが固唾を飲むと、

エルガは話し出した。

「ナトスさんおふざけはこれぐらいにして下さい、あなたがいかなる人物かは大方把握致しましたが、肝心のミノアさんの人間性が未だつかめていません・・・しかしまぁ恐怖し身構えるべき人物では無いのは理解しました・・・いくつか疑問点は残っていますがもう良いでしょう」

その言葉を聞きナトスは目を閉じた。

エルガはソロルに視線を移し

続ける。

「最後にお聞かせ願えますか?アキト・トラフォールとの間で何があったかを、ユート・トラフォールを専属パーティーリーダーとして雇っているギルドマスターとして、知っておきたいと感じています」

話を振られたソロルは

一呼吸おいて答える。


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