これから
【3020年1月4日】日本の全国に青白い雪が降った。
ニュースでは大々的に取り上げられブルースノーと呼ばれた。
それから月日が流れ【3月21日】突然日本中の人々の身体に青色の斑点のようなものが写りだした。
感染力も身体の影響もない無い。が、子供にまで引き継いでしまう謎の症状だった。
模様が写らなかった人々は彼らを恐れその症状を(スペック)と名付け斑点模様のある人を隔離島へと隔離することとなった。
その症状は10年経った今でも謎のままで国は何処かの生物兵器ではないかと疑っている。
そして、その斑点は俺の身体にもある。
「まぁ、生活が不自由なわけでもないし身体にもなんの影響もないから問題ないんだけどね」
「にゃぉ~ん」すると、おにぎりが俺の足へとすり寄ってくる。
「ん?大丈夫だよ、悲しくない今はお前がいるからな」
まいったな...。
この猫と出会ったのは俺に斑点模様が出た頃。
俺たち家族はこの斑点のせいで周りの人々に怖がられていた。
外へ出ると周りの目はまるで化け物を見るような目。
母さんは毎日俺に(大丈夫、大丈夫)と頭を撫でてくれた。
俺は子供ながら父さんと母さんに甘えてしまっていた。
父さんは仕事を辞めさせられた。
母さんは近所の人たちから突き放されてしまった。
そして、俺たち家族は家から出ることが無くなった。
父さんは毎日毎日たくさんのお酒を飲み、母さんは大丈夫、大丈夫。としか言わなくなった。
それから数日が過ぎ突然父さんと母さんが前のような優しい笑顔な姿に戻った。
「ゆう、これは家族にとって大切なものよ」
「これはゆうが大きくなった時に渡す予定だったやつだ。大切に持っておきなさい」
そう言ってやさしい笑顔で赤い包みを俺に持たせた。
「そうだ、このお金で何か好きなものでも買っておいで」
「え?いいの!?やった!」
母さんは僕に何枚かのお札を渡す。
「「ゆう、ごめんね(な)」」
「なんで誤るの?僕こんな模様があっても父さんと母さんの子供だしとっても幸せだよ!」
「そっか、ありがとうゆう。気をつけて行ってくるんだよ」
「うん!行ってきまーす!」
俺はこのごめんがどんな意味なのか理解できなかった。
「こんなにお菓子買っちゃった、怒られないかな?」
俺は袋一杯のお菓子を見て怒られないか心配しながら家へと帰る。
と、何故か家の周りに多くの人たちが集まっていた。
「ひどいわねぇ...子供だけ残して死んじゃうなんて」
死んじゃう...?一体だれが死んじゃったの?
「あ、ゆうが来たぞ!気をつけろ噛まれたらゾンビになっちゃうぞ!」
ゾンビになんてならない、触ったって噛んだって感染はしない。
そうやってニュースで言ってるのに!
ねぇ、それより誰が死んじゃったの?ここは僕の家の前だ...よ?
そして俺は見てしまった。父さんと母さんが玄関の前で血を流している姿を
「こんな子一人残してどうするのかしら。本当かわいそう」
そこら中からかわいそうという声が聞こえてくる。
「かわいそうじゃない。かわいそうなんかじゃない!」
(僕は幸せだったよ。父さんと母さんの子供で良かった。忘れないからさ、忘れてないからさ。)
「なあ、この子一人残してもこの後生きていけないだろ?いっそのこと家族3人でって事に」
「ま、待って!それはいくらなんでもやりすぎじゃ…」
「じゃ、あんたはこの子を引き取れるのか!?」
「そ、それは...」
(なんの話をしているの?)僕は何も理解することなく大人たちに囲まれてしまう。
(な、なにこれ?こ、怖いよ!)
「おい、暴れるなよ?お前も親たちと一緒の所へ連れてってやるから」
すると、男の大人たちが僕の手足を掴む。
「や、やめて!放してよ!」が、その瞬間黒い猫飛び込んで来て俺を押さえていた大人たちの手に噛みつく。
「にゃあ!!」
「痛って!この、何しやがる!このクソ猫!」
(この猫今僕を助けた?僕を守ってくれた?)
「君たち!ここで何をやっている!」
僕は声のする方へ顔を向ける。すると、軍服を着た人たちがいた。
「(なんでこんなところに自衛隊が来るんだよ!)べ、別に何もやってないですよ!」
「大人がナイフを持って子供を抑えているのが何もやってないと?」
すると、軍服を着たもう一人の男が駆け寄り耳元で何かを言う。
「隊長、玄関前に男女が血を流した遺体が見つかりました。おそらくその子供の親かと
思われます。それと腕と足にスペックの症状が見られます」
「君たちがやったのか?いや、聞くまでもないか。君たちはやっていないだろう、ナイフにまだ血はついていないしな。」
「あ、あたりまえよ!私たちに人殺しなんてできるわけが」
「だが!君たちは間接的にこの家族を死へと追いやったのだろう!?」
その言葉に場が静まり返る。
誰もが自分たちが何をしたのか何をしようとしていたのかを理解したのだろう。
と、当然軍服を着たおじさんは自分の裾をめくり注射器を左腕にさす。
「隊長!急に何をっ」「黙れ!」
「いいかこれはスペックの症状の人から採取した血だ!ニュースで言われている通りスペックは
感染力が無く人体に何の影響も出ない謎の症状だ。触られようが噛まれようがスペックの症状が現れることはない」
すると、注射器をさした部分に青い斑点模様が現れる。
「ただ一つだけ感染してしまう事が分かった。それはスペックの症状の人の血を体内へ取り込むこと」
周りの人はそれに驚き父さんと母さんの血が付いていないか確かめだす。
「本当に君たちは同じ人間なのか?僕、この症状は君一人だけじゃない。多くの人がこの症状に侵されてしまっている。そして私たちは、そんな症状で悩む人々を隔離島へと保護することなった」
軍服の人たちは僕を車に乗せると共に父さんと母さんも乗せてくれた。
「す、すいません!この猫も一緒じゃ…?」
「動物の保護は任されていないが、その猫はさっき君を助けた猫かい?」
俺はその猫をぎゅっと抱きしめ無言で頷く。
「じゃあ特別に保護するしかないな、猫も君から離れそうもない」
「た、隊長~……。怒られるの僕たちなんですが」
おじさんたちは今がどういう状況なのか、今分かっているスペックの事や色々なことを僕に話した。
それから、僕たちがどういう日々を過ごしてきたのか、優しく聞いてくれた。
しかし、話していると共にどうしてもっと早く助けてくれなかったのか、もう少し早ければ父さんや母さんは生きていたかも知れないのにという思いが僕の心の中を埋めていった。