ある男の生活
また汚い物を見るような目で見やがって。
またおれのやってることに文句をつけやがって。
またおれを追い出そうとしやがって。
おれはお前らよりいいことをしているんだぞ?
朝から晩までおれが空き缶を集めているのは。
のうのうと平和に家で暮らしている奴らがしていないリサイクルってのを変わりにしてやっているんだ。
感謝こそされてもゴミ袋から空き缶を取り出しているおれをあんな目で見るのは納得がいかないね。
おれがコンビニの弁当をもらってやってるのは。
ただ捨てられるゴミをおれの腹というゴミ箱に入れてやっているだけだ。
感謝こそされても弁当をもらってやるときにいちいちうるさく文句をつけやがるのは納得がいかないね
おれがこの路地裏に住んでいるのは。
誰も使っていないスペースを有効に使ってやっているだけだ。
感謝こそされても……。
まただ、また役所の人間がきやがった。
おれの住処を奪おうと必死なヤツらだ、そんなことするくらいならお前ら他にやることあるだろうってんだ。
だが、そんなことなどお構いなしに、おれに小難しい法律の話とかしてきやがる。
帰りに小声で死ねばいいんだと言ってやがった。
死んでやろうか?
おれが死ねばあんたらは幸せなのか?
いや、違うね。おれが死んでもいいことなんか一つもないぞ?
いつもおれが集めてる空き缶はどうだ?
リサイクルされずに捨てられてしまうだろう。
いつもおれがもらってやっているコンビニ弁当の残りはどうだ?
捨てられて虫どものエサになるだけだ。
いつもおれが住んでいるこの場所におれの死体があったらどうだ?
おまえらは処分するのに困るだろう。
ふん。
結局おれは生きていた方がいい人間なのさ
この世からゴミとされるものを
おれが変わりに処分してやっているのさ
まぁ、個人的にも
このまま死んで役所の人間に死体を片付けさせるってより、これからずっと生き続けて仕返ししてやる方がいいしな。
一石二鳥じゃないか。
役所の人間どもめ
ざまぁみやがれってんだ。