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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

天使のおしごと2

作者: 神宮真夜

初めましての方は初めまして。


稚拙な表現で申し訳ございませんが皆様の暇つぶしになればと思います。


タイトルに「2」と入っているのは別ジャンルにて単体の「1話目」がある為です。


繋がりは全くありませんのですみませんが別話としております。


私の名前は『りん

小学五年生の女の子。


髪は黒のセミロングで身長体重は普通。

どこにでも居るような平凡な人間。


ただちょっと違う事が一つある。



それは私が虐められっ子って事。

机に落書き、モノを隠される、汚い物や嫌な物を引き出しや靴箱に入れられる。

そんなのは当たり前。

休憩時間は毎回女子トイレで複数人に囲まれ嫌なことを言われたり叩かれた。

教科書やノートは悪口や落書きだらけとなり、学校に持っていく物で無事なものは一つもないと思う。


相談しようかと何度も思ったけど、お母さんは毎日お仕事忙しいみたいだし、お父さんは何処か遠くで働いてるみたいで家に帰って来ない。

仕返しが怖くて先生にも言えない。


どうしようもなかった。



もう学校に行きたくない。

毎日が怖い。

何を言われるのか、何をされるのか。


私はまだ五年生。

来年もあると思うともう……。





日曜日の晴れた日。


私はビルの最上階に来ていた。

ここは工事しているけど、日曜日はお休みみたいで誰もいない。

簡単に忍び込めた。


飛び降りが一番苦しくなさそうだよね?

きっと飛び降りて目を瞑っていれば直ぐに……。


そして私は屋上の縁に立った。

怖いから下は見ない。


最後に空を見上げる、綺麗な青空だ。

そして私は初めて見る事になる。


美しい純白の羽を持つ……天使。



「え?」

「?」


天使は私の方を見て不思議そうに首を傾げた。


私と同じ肩までのセミロングの髪。

だけど金色に輝いてふわりとして柔からそう。

そこらへんのアイドルなんかよりよっぽど可愛くて、青い瞳が外国の人の様だ。


「貴方、今から飛び降りるの?」


見た目同様可愛らしい声。


「あ、う、うん」


私は聞かれるがまま頷いた。


「どうして?」


天使が再度聞いて来た。


「虐められてて……」

「ふ〜ん、貴方虐められているのね?」


天使はパタパタと飛ぶと私の後ろ、ビルの屋上に降りてきた。


「どうして虐められているの?」


天使が興味津々といった感じに聞いてきた。


「え? どうして……」


分かんない。

私どうして虐められているの?


「分かんない」

私は正直に答えた。


「理由とかないの?」


天使が再び尋ねる。


私は考えた。

私はどうして虐められているの?


何か悪い事をした覚えはないし、誰かを騙したわけでもないし……平凡な私が目立つ様な事は何一つ無い。

成績も体型も何もかも平凡。

それなりにテレビも見るし、みんなの話題を聞いているとついていけない訳でもない。

……話に参加はさせてもらえないけど。


「ごめんなさい。 分からないわ」


考えた末の答えを天使に返す。


「ふ〜ん、理由が分かんないのに虐められて飛び降りるのね?」

「別に……理由なんて。 それに!」


天使の言い方にイラッとして私の語気が強くなる。


「虐められているのは変わんないし! もう耐えられないの!!」


天使は少し申し訳無さそうな顔をして、


「あ、ごめんなさい。 怒らせたいとかじゃないの、ただ私達の世界にいじめとかは無いから……」

「……」

「どんな風に虐められているかとか聞きたかっただけなのよ」


どうやら本当にただ聞きたいだけらしい。

天使の様子を見るに好奇心的なものの様だ。


「わかったわ」


どうせ最後だし……私は何をされたか教えてあげた。


その都度天使から質問が飛んでくる。


「どうして何もしないの?」

「どうして命令を聞くの?」

「相手の方が偉いの?」

「何か恩があるの?」


恩なんてない、偉いとかもない、ただ……苛めの中心にいる『夏恋かれん』が私に対して言って来て、周りも一緒になって虐めてくるのだ。


「その人は偉いの?」

「偉くはないよ、でもクラスの中心的な人なの」

「何でクラスの中心的な人なの?」

「可愛くて明るくて気が強くて、でもって頭も良くてスポーツもできるし凄いモテるし……。 だからみんなから人気があって……」

「そんな人がどうして苛めをしてるの?」

「分かんない」

「そんな人にどうして貴女が狙われるの?」

「だから分かんないってば!」


私は天使を睨みつける。


「私にはそんな事できるのにどうしてしないの?」

「うるさいうるさい! あっちは沢山仲間がいるのよ? 仕返しされれば私一人どうしょうもないじゃない!」



天使が……私の耳に口を寄せた。

そして小声で話しかける。


「私が……貴方の願いを叶えてあげましょうか?」

「え?」

「死ぬ前に願いを一つ叶えてあげる」


願い……を?


「さぁ、どんなお願いをする? いじめられないように? それとも仕返し?」


天使はその場でくるりと回って見せる。

軽やかに回るその姿はまるで妖精のダンスの様だ。


「い、虐められたくない」


私の目から涙が零れ落ちる。

キラキラと太陽の光を反射しながらそれは下のコンクリートに落ちて跡をつける。


「分かったわ。 私がその願い叶えてあげる!」


天使は微笑むと私に向かってこう言った。


「私は天使のトルテ。 貴方のお名前は?」

「鈴」

「なるほど、じゃあ鈴。 学校には普通に行くといいわ、イジメられないようにするから」


天使の言葉だ。

私は一も二もなく頷いて信じた。





そして休みが明け、私はいつもどおり学校に行った。

だけど……、


「ねぇ、鈴? 今日も分かってるよね?」


靴箱で上履きを履き替えている私に、夏恋ちゃんが意地悪そうな笑みを浮かべて話し掛けてきた。


「……うん」


結局何も変わらないんだ。

天使とか言ってたけど……考えてみたらそんなものがいるわけ無い。

私は……自分の妄想で都合の良い天使なんてものを作り上げていたのかも知れない。


トボトボと教室に向かい入ると、クラスメイトから一斉に憐れみの視線が注がれる。

そうしていつもの日常が始まった。


そう……思ってた。




「よし、出欠は全員問題ないな。 それでは今日は朝の連絡事項の前に、転校生を紹介する。 入ってきてくれ」


先生はそう言うと黒板に名前を書き始める。

それと同時に転校生が入って来た。



(え? あれって!)


天使あまつか トルテ』


黒板に書かれた名前、そして頭を下げる可愛らしい女のコ。

羽は見えないが、それは間違いなく昨日の天使トルテだった。


「よろしくお願いいたしますね」


そう言って可愛らしく微笑む彼女は誰が見てもこのクラスで一番の美少女だった。




朝礼が終わると彼女は大勢のクラスメイトに囲まれていた。


外国人の様な出で立ちと可愛い姿。

そして日本語も普通に話せると分かるや、みんなが(特に男子)我先にと挨拶や紹介を始めた。


しかしトルテはそんなクラスメイトには見向きもせず、真っ直ぐ私の方へ来ると、


「おはよー、鈴」

「あ、う、うん。 おはよう」


よく分からないまま挨拶を返す。

それを見たクラスメイト達は、


「え、トルテちゃんって鈴さんと知り合いなの?」

「知り合いどころか親友だよ!」


弾けんばかりの笑顔でそう返すと、


「だから皆さんも鈴と仲良くしてくれると嬉しいな」


素敵な笑顔をみんなに向けた。




……その日から少しずつ私の周りが変わり始めた。

まず最初は男子達。


トルテに取り入る為、私にも優しくし始めた。

トルテも常に私の側に居たため、私に対しての虐めもほぼ無くなりつつあった。


虐めと言うのは不思議なもので、今度は逆に虐めをしていた夏恋がクラスで浮くようになりつつあった。


私に近寄ってきたクラスメイトは、みんな口々に、


「やりたくないけど虐めに参加しないと私が虐めれるから……本当は夏恋が嫌いだった」


等といかに夏恋が酷い事していて悪い奴かを言い始めた。




トルテがクラスに来てから二週間程経った頃、その時には私への虐めはほぼ無くなっていた。

そして私も虐めがなくなったことで安堵しながら登校していた。


そんな時だった。


「夏恋さん、ちょっと良い?」


トルテが夏恋に話し掛けたのだ。

私の親友と宣言したトルテが、私を虐めていた夏恋に声を掛けたことで、クラスが静まり返る。


何が起こるんだろうと緊張した空気の中、


「今日夏恋の家に遊びに行ってもいい? 鈴と一緒に」

「え?」

「えぇ?」


トルテの言葉に私も夏恋もビックリして言葉を失う。

そんな私達に構わず、


「今日の放課後伺うね〜」


そう言って話をさっさと打ち切って私の方へ戻って来た。

そして私の方へ戻ると、


「鈴もね? 私と一緒に行こう」


(何を考えているんだろう?)


そう思う私に微笑んで見せたのだった。






ごく普通の二階建て、そこが夏恋の家だった。

古くもなく新しくもないが、綺麗に掃除されており、庭も手入れが行き届いている。


ピンポ~ン


典型的なチャイムの音が聞こえ、しばらくするとドアが開かれた。


「……」

「こんにちは! 遊びに来たよ」


不機嫌そうな夏恋にトルテが笑顔で声を掛け、


「お邪魔しまーす」


夏恋がなにか言う前に彼女を押し退け家に入っていく。


「ちょ、ちょっと!」


夏恋が慌てて止めに入った時には、靴を脱いで家に上がり込んでいた。



「ねーねー! 夏恋ちゃんのお部屋に行こうよ!」

「なんで貴方なんかを部屋に……」

「こっちでいいの?」

「聞きなさいよ!」


トルテはトントンと階段を上がって行く。

夏恋が慌てて後を追い、私も仕方なく二人について行った。



私が二階につくと、トルテと夏恋は可愛らしく装飾された部屋にいた。

全体的にピンク系で統一されており、宿題をしていたのか机の上には筆記用具やプリントが出ている。

タンスやベッド、飾られている棚等は綺麗に整理整頓されていた。


「……それで、一体何の用?」


夏恋が刺々しい言い方でトルテに詰め寄る。

トルテは涼しい顔で、


「私ね、色々貴方に聞きたいことがあったの!」

「……じゃあさっさと聞いて! そして帰って!」


不貞腐れたような顔をしてベッドに座り込む夏恋。


「鈴に聞いたわ。 貴女が虐めの中心的存在だって」


夏恋の険しい眼差しが私に向けられ……私は縮み上がる。


「鈴、あなた……」

「ああ! 誤解しないで欲しいの、夏恋ちゃん」


トルテが取り繕うように、


「虐めた事についてはいいの、それより聞きたいのはどうして虐めをしていたのかって理由なの」

「……」

「鈴に聞いたわ。 夏恋ちゃんはクラスでも人気者だって。 頭も良くてスポーツも出来て可愛くて明るいって」

「……」

「そんな貴女がわざわざ彼女を虐める理由か分からないの。 鈴も分からないらしいのよ」


夏恋はバツの悪そうな顔をすると、チラリと私に視線を向けた。

そして……重そうにその口を開いた。


「鈴が……大輔君の好きな人だから……」

「え?」


大輔君が……私を好き!?


初めて聞いた内容に、


「まさか……だって私なんて」

「そうやって知らないフリとかさいてー」

「夏恋ちゃん、待って! 私本当に……」

「それに知ってるとか知らないとかもどうでいいの。 大輔君があなたを好き、それがムカつくの!」


言ってしまったからなのか、夏恋は私に向かってまくしたてる。


「で、でもどうして大輔君が?」


私は未だに分からない……大輔君は同じクラスメイトだけど、特別なにかあった訳じゃないのに……。


「大輔君が言ってたのよ! 以前傘を忘れたら鈴が貸してくれて嬉しかったって」

「?」


思い出せないけど……そんなことしたかな?


「大輔君が傘を忘れて困っていた時、貴女自分の傘を貸して雨の中を走って帰ったでしょ?」


……思い出した。


大輔君は成績優秀スポーツ万能で格好良く、真面目だけど男女問わず明るく人気の男の子だ。

私と絡む事なんて殆ど無かったけど、あの日、学校の玄関先で雨空を見上げて困ってたから、私の傘を貸したんだった。


「一緒に入る?」

って聞かれたけど、私は恥ずかしくて……首を振って雨の中を駆け出した。

そして見事に次の日熱を出して寝込んだった。


「でも、どうしてそれくらいで……」

「大輔君にとっては鈴の対応は初めてだったって……相合い傘を恥ずかしがって断るあなたの姿や、そのせいで休ませてしまった負い目とか……よく分かんないけど」


夏恋は再び射抜くような視線を私に向け、


「でも、結果として大輔君はあなたを好きになった。 私の方があなたよりも色々上なのに、なのに大輔君はあなたを好きになった!」


……夏恋ちゃんが言うのはよく分かんないけど、私が悪い事をしたからではなく、八つ当たりみたいな感じ……なの?


「わ、私そんな事で虐められていたの!?」


声が詰まり鼻がツーンとした。

今にも涙が出てきそうだ。

なんにも悪いことしてないのに、私はどうしてあんな辛い目に!!


「そんな事って何よ! 私にとっては大事なんだから!」

「そんなの知らない! 私関係ないじゃん!!」

「関係あるわよ!」


今までの私の辛さは何だったの?

必死に耐えて……自殺まで考えたのに、その理由がこんな事なんて!!


気が付くと私は夏恋に掴み掛かっていた。


「何するのよ!!」


夏恋ちゃんも私の顔や首に掴み掛かる!

私達は取っ組み合い、二人並んで廊下に転がり出るとお互いを叩きあった!


「やったわね!」

「そっちだって!」


私の頬を夏恋が引っ掻き痛みが走った!

私もお返しとばかりにやり返す!


しかし……私より力が強く、スポーツ万能な夏恋ちゃん。

最後の最後に私はお腹を蹴飛ばされた。


私はゴロゴロ転がりながら……フッと浮遊感を感じた。





「あぁ!!」


夏恋が信じられないものを見た様に固まる。

蹴飛ばした鈴の体が、階段の方に転がり……姿が消えた。


瞬間!! ドカ! ゴロバタン!!


階段の下から色んな音が一遍に聞こえた。


「あ……あぁ……」


恐る恐る階段の下を覗く夏恋の目に、ねじ曲がった鈴の体が見えた。


「す……すず?」


呼び掛けるもピクリともしない。





「う~ん、どうしよう?」


不意に夏恋の背後で声が聞こえ……振り返ると白い翼をパタパタさせているトルテが宙に浮いていた。


「え? あ、な、何!?」


夏恋の質問は聞こえていない様で、


「仲直りさせてから命を頂く予定だったけど……まぁ、いいかなぁ?」

「あ、あなた一体……」


訳が分からず泣き笑いのような顔をする夏恋に、


「私? 私は死神様に遣える天使トルテ」

「し、死神? 天使?」


トルテは夏恋には見向きもせず、


「一応『虐められなくなった』し……お願い完了として良いよね!」


トルテの翼が黒く染まって行く。

現実離れしたトルテの存在を目の当たりにした夏恋は、真っ青になりガクガク震え出した。


「夏恋ちゃん、私行くね? 虐めの理由教えてくれてありがとう。 みんなの記憶から私の事消しておくから安心してみんなの中心的存在続けてね」


トルテは窓を開けるとそのまま空へ羽ばたいていく。

夏恋は怯えた目でそれを見送るのだった……。





公園の滑り台の上でトルテは暇そうに足をブラブラさせていた。

ベンチに座るお年寄りのラジオからニュースが流れてくる。


「……のニュースです。 〇〇県〇〇市の小学校で同じクラスの女の子を自宅で殺害するという事件が起こりました。 小学五年生の女の子が犯人と見られ、引っ掻き傷などから喧嘩による……」


しかしトルテの耳には入っておらず、膨れ面をしている。


(うぅ〜死神様も真面目なんだから! 願い事をしっかり叶えて死んでもらえなんて!)


「人間の心って難しいんだけどなぁ……」


そう呟いてまたもや頬を膨らませるのだった。


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