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怪談

事実を基にした事故物件の話



 はじめまして、今日は宜しくお願いします。


 取材というのは初めてなので少し緊張してます。もしかしたら分かりにくかったり、話がまとまってなかったりするかもしれません。

 あ、録音してるから大丈夫?それは良かった。


 それでは私の話を始めさせて戴きたいと思います。



 え~と、何から話せばいいんですかね?


 住んでいる所の説明ですか?わかりました。


 私が今住んでいるアパート。アパートの造りは中央にエントランスと階段があり左右に部屋があるタイプです。それが一つの階に四部屋、二階建てで一棟合計八部屋。そうですね、階段二本です。

 建物を正面から見ると、『部屋-階段-部屋・部屋-階段-部屋』となりますね

 間取りは2DK、一階角部屋庭付き。

 玄関入って正面から左手側に短い廊下。右手側に洗面所があってトイレと浴室。浴槽は大きめで身長180cmの男性でも脚を伸ばして入れるサイズは有り、浴室乾燥が可能な為雨の日でも洗濯物を部屋干ししなくとも問題ありません。玄関左手側にはダイニングキッチン、短い廊下を進み左右にドアがありそれぞれの部屋に通じています。ダイニングキッチンと部屋は全て六畳間サイズになります。庭の広さは幅8m、奥行5mと結構広いと思います。

 正直な所都心に電車で30分、乗換無しという中々の物件だと思うのですよ。駅から歩いて15分程の距離で閑静な所です。

 これで家賃は2.5万円。近隣の他の物件の半分くらいの家賃ですね

 え?古く無いですよ。物件探してるときに築5年となってましたから現在丁度10年ですね。

 まぁそうですよね、明らかに怪しい価格設定ですよね。私も不動産屋で物件情報見たときに思いましたもん。これは俗に言う事故物件とやらなんじゃないかと。

 で、不動産屋に聞いたら案の定事故物件で、新築時の入居者だった大学生の女性が部屋で自殺していて、次の入居者は入居後一月経たずに退居。しかも本人ではなく家族から連絡が来て退居手続きらしいです。立地悪くないから直ぐに次の入居者が入ったけど三ヶ月してまた部屋で自殺。その後は何人か入居者があるけど最長でも半年。というか、これが最初の住人で自殺した女子大生。次が三ヶ月で自殺した人。生きてる人はみんな三ヶ月持たない。

 私からすれば女子大生とかまだ若いんだし勿体無いと思ってしまうのですけどね。女子大生という言葉だけでちょっとドキドキしちゃいません?



 話を戻しましょう。不動産屋もあんまりお薦めしてないみたいで、そもそも内見とかも行きたく無いらしくて、私が物件見せてくださいって言ったら押し付け合いが始まって、新人らしき若いお姉さんが案内することになったんですよね。移動中の会話で新卒で今回の契約が初めての担当なんだと言ってましたね。

 見た目は可愛いタイプの方でしたね。え?その話は別に必要ない?そうですか…私は好みだったんですけどねぇ、結構小柄で胸も大きくて…いや、その話詳しくっ!ってなんか食い付き過ぎじゃないですか?話振ったの私ですけど本題進めましょうよ


 では改めて、不動産屋のお姉さんと部屋について内見してたんですけど、どうも後ろから視線を感じる。勿論お姉さんでは無いですよ?隣で部屋について説明してますし。

 夏の昼間、七月の中頃なんで窓を開けて空気は籠ってないし強い位の陽射しなのに何故か寒気を感じる。お姉さんも何か感じてる様で説明しながらも落ち着かない様子。

 アパート・周辺施設の説明を終えてそろそろ部屋を出ようと窓を閉めて鍵を掛けたときふと思い付いて、手を叩いてみようと思ったんですよ。『部屋で強く手を叩いて反響しない場合その部屋には幽霊が居る』というのを昔聞いたことがあったので。

 お姉さんにその話をして、手を叩いて見ることにしました。お姉さんが私の服の裾を掴んでいるのをちょっと可愛いと思いつつ強く手を叩きます。


 パンッ!


 手を叩きました。反響しませんでした。当然なにもない部屋なら反響するはずなのに、全く反響しない。お姉さんが服の裾を掴む力が強くなりました。

 次の瞬間


 パンッ!


 隣の部屋から手を叩く音が聞こえてきました。当然窓は閉めてあるし、施錠もしてある。勿論人がいないのは二人で確認しているし、音の大きさ等から壁や窓の向こう側ではなく室内の、すぐ隣の部屋から発する音であると理解できてしまいました。


 一瞬身体が硬直しましたが服が下に引っ張られて我に返ります。そちらを見るとお姉さんが座り込んでいました。腰が抜けている様でした。それでも私の服を掴んだままなので服が引っ張られたのでした。お姉さんは動けない様なので抱えて部屋を出ます。ドアに鍵を掛けようと振り向くとまだ少し開いていたドアが閉まりました。お姉さんを車に連れていき私が鍵を掛けに行くことに。部屋に引き返すとドアが少し開いてました。

 さっき目の前でドアが閉まるのを見てたのに開いていたんですよ。ドアの前から離れてほんの数秒、長くても十数秒。周囲には誰もいなかった筈です。そもそも、普通の人なら女性を抱えた男性と遭遇したら動きを止めてそっち見るじゃないですか。出てきたドアに入るより何があったのかと人を見ますよね?

少なくともいきなりドアの中に入ろうとはしない。

 それでも一応確認しなきゃと思ってドアを開けようと手を伸ばす。ドアノブを持つと腕が引っ張られる。一瞬ドアが重いのかと考えて力を入れるけどどうやらそうじゃないみたいでした。普通玄関ドアがそんなに重いわけ無いじゃないですか。少なくとも成人男性が意識して力を込めなきゃ開かないなんて事はあり得ない。しかも内見に来たときにお姉さんが開けた時は一般的材質で歪んで開けにくいということもないごく普通の玄関ドアだった。それに力を入れたらそれに合わせて重くなるドアなんて知らない。

 そうです、中から誰かドアを引いてるんです。それが分かった瞬間、目一杯力を込めてドアを開けたらドアの向こうには誰もいない。

 あれ?って思ってドアを持つ手を話したらドアがゆっくりと閉まっていく。閉まっていくドアを見ていてあることに気がついたんです。さっきお姉さん抱えて部屋を出たときドアはもっと速く閉まった事に。

 そして閉まったドアを見て分かったことがもう一つ。このドアは途中で止まらない。

 誰かが、もしくは何かがドアを抑えないとドアが中途半端に開いているという状態にならないんですよね。

 そうです、つまりお姉さんを抱えて部屋を出たとき中から誰かが玄関ドアを引いてドアを閉めた事になるんですよ。その後ドアをほんの少し開けてこっちを窺ってたってことですよね


 で、取り敢えず鍵掛けようとしたんですが、鍵を差し込もうとしたら施錠される音がしたんですよ。私はまだ施錠してない。鍵差し込んですらいないんですから

 そう、中から施錠されたんですよ。

 その後は泣きじゃくるお姉さんの代わりに私が車を運転して少し離れた所に移動してお姉さんが落ち着くまで宥めて不動産屋に戻りました。


 え?その部屋は今どうなっているのかですか?最初に言ったじゃないですか。私が今住んでいるアパートって


 あ、すみませんこの後ちょっと用事があるので今日はここまでで。

 続きはまた後日ということで。はい、メールいただければ。はい、はい、それでは失礼致します







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― 新着の感想 ―
[一言] ゾクゾクする 映画「事故物件」とかの比じゃない
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