スクールチャンピオン
教師としても、あまり小言はいいたくない。
しかし、授業中までゲームをされては説教をするしかないだろう。
成績が悪ければなおさらだ。
「おまえらなぁ、勉強は大事だってこと、ちゃんとわかってるのか?」
イスに座って質問を投げかける。
職員室のなかでも生徒たちの態度は変わらない。
わかっていないのは確実だろう。
「学校の勉強なんておもしろくねーし」
「方程式とかいつ使うんだよ。ぜんぜん役に立たねーじゃん」
数学がなければ世の中はこんなに便利になっていない。
あらゆる学問が個人と世界の可能性を広げてくれているのだが、そんなことを考えもしない生徒たちの視線は、ずっと机に向いている。
没収したゲームのことしか頭にないらしい。
「おまえらなぁ、ちゃんと現実をみろよ。この世の中、役に立たないものほどおもしろいだろう? お笑い番組や金持ちユーチューバーはどうなる? なにか役に立つか? 役に立つとか立たないとか、そんなことを考えること自体がつまらないし、おまえらだってゲームのためならいくらでも勉強するだろうが。勉強はおもしろいんだよ。知るということはおもしろいんだ。もしもおもしろくないとしたら、きっとなにかの役に立つってことだ。少なくとも進学には役に立つだろうが」
どれだけ語ろうとも伝わらないようだ。
説教の内容や、語り方の上手い下手は問題ではない。
そもそも話を聞いちゃいない。
「苦労されておられますな」
背後から落ちついた低い声がかけられた。
振りかえると、校長先生が立っておられる。
イスから立ちあがり、ここにいたる経緯を説明した。
この二人だけではない。
ゲームによって生活を乱している生徒たちは少なくない。
不甲斐ない指導力をお詫びすると、校長先生は柔和に微笑まれた。
「生徒たちには一度、年季の違いというものを教えてやらないといけませんな」
決意された校長先生は、その後、学業に身の入っていないゲーマーもどきの生徒たちをゲームでボコボコにしていかれた。あらゆるジャンルのゲームで勝利をもぎとっていかれた。大会まで開催して誰が一番強いのかをはっきりさせた。
圧倒的な実力をもつチャンピオンの言葉には誰もが耳をかたむけるものだ。
ただの教師が説教をする必要はなくなった。