5.落ち込んだりもするけれど、今日もご飯が美味しいです
少し短めですがキリがいいので。
「あ、マイスー!聞いて聞いて、あたしお仕事したんだよー」
「ハル様ー!今何やらすごい勢いでまたDPが減った気がするんですけどー!」
小走りで駆け寄ってきたマイスに、明日のご飯のためにと熱意をかけて練り上げた即席計画を滔々(とうとう)と語っていると、なんかプルプルしだしちゃったんだけど…また感動でもしちゃった?
「しょ、食料用モンスターを一度に十二体も名付けをなさったのですか…?あの、ダンジョン防衛については考えていらっしゃいますか…?」
「ん?だってまだ一月あるんでしょ?」
「恐らくハル様がお考えのようにはDPは増えないですよ…?基本的には食料用モンスターやそれを食べるモンスターなどでダンジョン内に食物連鎖を再現することで配下を養いつつDPの回収を行っていくので、私を含め十八体しかモンスターがいない現状ではそれが見込めないかと…」
「えぇーーーっ!!」
更にマイス曰く、ダンジョンマスターの食事は内容を選びさえしなければ一日三食で1Pの格安セットがあるそうだ。ダンジョンマネージャーは食事の必要がないため、気にしなくていい部分だったみたい。
気合入れてやったのに…そんなぁ…。
「ま、まぁ!名付けしたことで何か有用な特性を得たり、進化に繋がるかもしれませんから!気を落とさずに様子を見ましょう!」
マイスが励ましてくれるけど、なんだか一日の労力が無駄になったみたいでやる気が全然湧いてこない。
地形操作やら召喚やらで気付いたらもう夕方だし。さっき召喚した時に千切れたスケープリザードの尻尾四つをマイスに串焼きにしてもらお。
テーブルに突っ伏してダラダラしてたらマイスが焼けた串焼きを持って来てくれた……うん、良い匂い。
お肉の匂い嗅いだら元気出てきたかも!早速手を合わせて、いっただっきまーす!
パクッ。もぐもぐ…こ、これは!?
「うーまーいーぞーーー!ほら、マイスさんも食べてみなさい!」
「えっ、ハル様口調が!?はぐっ…お、美味しいです!とっても……」
プリプリとした身は脂肪分が少ないのにとってもジューシーで柔らかい!
通販で取り寄せた塩と胡椒を振って焼いただけなのに旨味がすごくて、でもくどくないの!流石説明文に美味って書かれるだけはあるわね!
時間も忘れて噛み締めてたらあっという間に陽が沈んでた。どちらからともなく顔を見合わせて、気が抜けたように笑った。もうなんか可笑しくなってきちゃった。
さて、色々あったけどお風呂入って今日はもう寝ちゃおう。星空を見ながらのバスタイムはすごく神秘的で涼しい夜風がまた気持ち良い。明日からは節約しないとね!
「マイス、ウッディおやすみ」
「おやすみなさいハル様」
マイスはマスターが眠りに就いたのを見届けてから、ダンジョンコアにアクセスする。
仮称:常春の花畑ダンジョンの二日目収益は増加10Pで現在305P。
土地からは3Pでモンスターの余剰魔力で7P、想定よりも多いのは名付けによって格が上がって能力が上昇したお陰だろう。どのような結果を齎すのかは分からないが、ハル様ならなんとかなってしまう気がする。
ほんの少しワクワクしている自分に気付いて、自分の仕事を全うしようとコアから離れる。アルラウネとしての能力が大きく伸びているのは昨日の夜に少し試しただけでも実感できた。今日は魔法能力についての検証をしてみよう。
このダンジョンに密かながらも確かに息づき始めた命の気配を感じながら夜は更けていく。
もこもこ…ぼこっ……
食肉用スケープリザードとても気に入っています。ゆるふわな世界にもってこいではないですか?絵面はトラウマもんかもしれませんが。ピクピクプルプル。
ちなみに、危機レベルに合わせて切り離す尻尾が増えます。気を引くためにめちゃめちゃ動くので、筋肉量も多くて食べ応えあり。美味しそう(ジュルリ)。