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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第一章:破門された聖女候補
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一章エピローグ/そして次なる騒動へ



 「カ・イ・セ・さ・ん!!何で一回目から来てくれないんですか!「実は騙されたんじゃないか?」って心配になったじゃないですか!!」

 「――え、あぁスマン!ちょっと作るのに手間取っちゃって、時間過ぎてるのに気が付かなかった」


 あれから二週間後。

 アリシアは例の《転移》アイテムを使って、再びカイセの家を訪れていた。


 「何を作って……クンクン。あの、それを分けてくれたら許して上げます」

 「許しに懺悔ではなく対価を求める元聖女候補ってどうなんだろうな?安心しろ。元々お土産として用意してた物だから、〔取引〕の枠とは別に持って帰っていいから」

 「――!!貴方は神ですか?」

 「それも元聖女候補の言葉とは思えないな」


 それと出来ればあの女神と一緒にはしないでほしい。


 「――さて、こっちは後数分待ってくれ。その前に〔取引〕の方を確認してしまおう」

 「はい。それッ!はいどうぞ。〔お米:十キロ〕です」

 「……ほい確かに。それじゃあこっちもどうぞ」

 「……ふっふふふ」


 カイセの渡した袋の中身を見て、アリシアが不敵な笑みを零す。


 アリシアを実家へと送り届けた際に二人が結んだ〔取引〕は物々交換。

 アリシアはお米を、カイセはハチミツやらジャムやらを適当に見繕った詰め合わせを。

 それぞれ相手が必要としている食材を交換し合う〔取引〕だ。

 ペースは二週に一度。

 こうして決まった時間に二人は会う事になっている。


 「……でも、本当に良いんですか?この交換、品数はともかく質の面でカイセさんのほうが価値が上だと思うんですけど」

 

 アリシアの指摘通り、カイセの提供している品々は町中では高級品や上物として扱われるものだ。

 単純に利益を優先するのなら、この品々を町で売り、そのお金でお米を買ったほうが安く済むはずだ。


 「まぁそうなんだけど……これを町中に売りに行くのは面倒も引き寄せそうだからねぇ」

 「まぁ商人からすれば良い獲物に見えそうですよね」


 カイセはあまり人前で目立つことはしたくはない。

 「出処不明の上質なものを売りに来る男」など、繰り返していたら絶対にマークされる。

 避けられる面倒事は極力避けるに限る。

 だがそうなるとお金が用意できないため、こうして物々交換を提案したのだ。

 

 「まぁその辺りは気にしないでくれ。俺にとってはお米はそれだけ価値のある物だし、逆にそのハチミツやらは定期的に手に入る物だから」


 実はこのハチミツ、森に住む〔蜜蜂〕の魔物から直接分けて貰っているものなのだ。

 〔言語理解(全)Lv.10〕は、知性ある魔物との意思疎通も可能にしてくれた。

 最初こそ敵対されてはいたが、カイセが魔力を提供する事を条件に定期的にハチミツを届けてくれる事になった。

 カイセのカンスト魔力は上質らしく、魔力も食すことが出来るその蜜蜂にとっては御馳走に近い物であったらしい。

 その結果、〔蜜蜂〕との物々交換の関係が出来上がった。

 そして今では《召喚契約》まで交わしてしまったほどだ。

 カイセ自身も、交換で消費するくらいの魔力消費であったら負担はほぼ無いため、このハチミツは実質無料とも言えなくはない。

 いつかはきちんとお金を得る必要が出てくるかもしれないが、今は物々交換の選択肢が生きているので、手を出す必要が無い。

 

 「まぁその差分は手間賃とでも思って受け取ってくれて構わないよ」

 「……分かりました。それでは遠慮なく受け取ります」


 そもそもアリシアが食べ物関係で遠慮した事はあっただろうか?

 

 「ありがとうございます。カイセさんのおかげでこれからの我が家の食生活は、朝はパンにジャムやらハチミツでリッチに、昼は適度に、夜はお米でガッツリ、そして時折おやつまで食べられる……そんな理想的な食卓になりそうです!」


 今までは朝米・昼米・夜米だったようなので、まぁいくら何でも飽きそうではあるな。

 地球とは違い、おかずも味付けもパターンが限られる。

 アリシアの理想も、結局は慣れてしまえばそれまでではあるのだが、食の選択肢が増えるのは良い事なので特に水を差すことはない。

 ちなみにハチミツ以外の交換品は、飽きない様にちょっとずつ変化を持たせるつもりだ。

 これは相手の為と言うより、「飽きたのでもう要らないです」と言われないための対策だ。


 「ところで、こっちは良いんですけど二週間毎にお米十キロは一人だと多くないですか?」

 「まぁ最初は炊き方とか色々試すから、無駄にするつもりはないけど失敗の可能性も込みな訳で、あと仮に余ってもペロッと平らげてくれそうなヤツが知り合いに居るから腐らせることはないと思うよ。もしもの時は仕入れを減らすし」

 「となると私的にもそのお知り合いの方にはぜひ頑張って平らげて欲しいですね。ところでその方は私を森で見つけてくれた方と同じ方ですか?こうして定期的にお会いすると言う縁も出来てしまいましたし、せっかくなのでその方にもご挨拶をしておきたいのですが、お礼も言いたいですし」


 アリシアをジャバと会わすかぁ。

 ジャバのほうは問題ないだろうが、子供とはいえ龍を見たアリシアの反応がどうなるか。


 「まぁ機会があればな」


 などと言ってると、その機会はすぐに来てしまいそうだった。


 「(カイセー)」


 そのジャバからの《遠話(テレバシー)》だ。

 気配は……家のすぐ外か?


 「ごめん、ちょっと出てくる。お土産出来るまでそこのお茶は自由に飲んでいいから」

 「はーい。いってらっしゃーい」


 カイセが家の外へ出ると、ジャバが待っていた。


 「(カイセー)」


 カイセが目の前に居るのに、わざわざ《遠話》を使って話すジャバ。

 ジャバは何か(・・)を咥えているため、直接話が出来ないようだ。


 「どうしたジャバ。一体何を咥え……」

 

 カイセが近づくと、その何か(・・)は判明した。


 「……ジャバ、ソイツ(・・・)はどうした?」

 「(お土産ー、襲ってきたから獲物取ったー)」


 ジャバが咥えていたのは、見紛う事なき〔人間〕であった。

 どうやらジャバに襲い掛かり、返り討ちにあったようだ。


 「……生きてるな。さてどうしたものか?」


 こうしてカイセのもとに、新たなる面倒が舞い込むこととなった。 

  

  


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