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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第五章:めちゃくちゃダンジョン攻略(?)記
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水の聖剣




 「――久しいな、カイセ殿」

 「お久ぶりです、国王様」


 王城へと呼び出されたカイセ。 

 以前同様に通された執務室には、これも以前と同様にこの国の王様【ジルフリード・サーマル】と側近の大臣が待ち構えていた。


 「それでだ…呼んでおいて何ではあるが、こちらも色々と忙しい身でな。早速本題に入らせて貰おう。これを視て欲しい」


 王様の指示で大臣が一つの箱を開き、その中身をカイセに手渡してくる。

 それは一振りの直剣。

 武装解除が前提の王の眼前で相手に武器を手渡すのはどうかとは思うが、腰には非実体の神剣も携えているので今更なのかも知れない。

 そのままカイセは《鑑定》したその剣を見て、自身が呼ばれる理由がこの剣にある事を理解した。




 【水の聖剣 無名】

 〔全ステータス+25〕

 〔水魔法レベル+1〕

 〔水中活動時全ステータス+25〕




 手渡された直剣は、確かに聖剣の名を冠する代物であった。

 未だ名も無き〔水の聖剣〕。

 そこに付随する特殊効果は、真なる聖剣である〔勇者の聖剣〕には数段劣る。

 だがそれでも、剣そのものの質は確かに聖剣に見劣りしないもの。

 そして何より、勇者の聖剣に劣るとしても、特殊効果が三枠も付いている時点で聖剣の名を冠する資格は充分あるだろう。

 人の身で生み出された〔魔剣〕の、最大最高の品質ものでさえ付与された特殊効果はこれより劣る内容のものがニ枠(・・)のみで限度であったはずだ。

 神剣で聖剣を生み出せると知った際にある程度調べた知識なので、それ以降に更新されていなければ今もそれが最高点のはずだ。

 つまりはこの剣がそれ以上の品であると言うのは言うまでもないのだろう。


 「それでだが…カイセ殿、この聖剣(・・)に覚えはないか?」

 「ありません。私はアレ(・・)以降、聖剣の名を冠するものを作り出した覚えはありません。この聖剣は私由来の品ではないと断言させていただきます」


 王様たちが知りたかった事。

 カイセがこの場に呼ばれた理由。

 王様たちはカイセが神剣を持つ事も、それにより聖剣を生み出せる事を知っている。

 だからこそ、この〔水の聖剣〕がカイセ絡みの代物ではないかと確認を取りたかったのだろう。

 

 「ちなみにですが、この剣の出処はお聞きしても?」

 「……悪いが今は答えられない。とは言え、このままいけばいずれは自然と知る事になるだろうが」

 

 後で知る事もあるだろうが、少なくとも現状は明かせない。

 当然カイセはこれ以上の問いを心に留める。


 「それにしても……そうか。案の定(・・・)カイセ殿ではないか。ちなみにだが、この聖剣を真っ当な聖剣(・・・・・・)と見て問題はないと思うか?」

 「何をもって真っ当と判断するか分かりませんけど、経験者(・・・)として言わせて貰うなら……剣としての質は間違いなく聖剣のそれに属する部類ですし、特におかしな作りをしてる訳でもないですから、ある日突然爆発するような事も無いと思います。まぁ水中ボーナスの有用性については議論の余地ありだとは思いますけど……少なくとも私は『これは聖剣ですか?』と問われたら『これは聖剣ですね』と答えるしかないかなと思います」

 「そうか……これはお墨付き(・・・・)になるな」


 仮にもカイセは神剣の担い手で、尚且つ聖剣を生み出せる人物だ。

 その人物が『これは聖剣である』と認定したのだから、一種のお墨付きと捉えてもおかしくは無いだろう。


 「……その、何がどうなるかは知りませんけど、私の名前は出さないでくださいね?」

 「あぁ、それは勿論だ。あくまでも我らの中での認識や捉え方を確定させただけの事だ。カイセ殿に迷惑が掛かるような事にはならない」

 「それならい――」


 そんな会話をしていたその時。

 王様の執務室の扉が唐突に、廊下側から叩くように開かれた。

 

 「――お父様!お話があります!!」


 そして入って来たのは少年と成人男性。

 少年のほうは《鑑定》が弾かれた事を鑑みれば、王様の〔王冠〕の鑑定妨害の力が適用されるような人物だろう。

 だが成人男性の方は対象外だったらしくそのまま暴かれ、そして彼の称号から少年の正体にも辿り着いた。


 ("第三王子の従者"。そしてお父様(・・・)。つまりこの子が第三王子か)


 以前、エルマにちょっかいを掛けたという噂の王子様。

 その当人が目の前の少年であるようだ。


 「……アルフォードよ。黙りなさい」

 「お父様、大事なお話が――」

 「アルフォード!!」


 初めて聞いた国王の怒鳴り声。

 それは異様に重く、そして鋭く力ある声であった。

 

 「我は今、王としての執務の最中であり、招いた客人との話の最中であったのだ。その場に許可も無く押し入り妨害し、客人に無礼を働く。これが本当に王子たるものの振る舞いか?」

 「……ですが、お父様」

 「それと、これも何度言わせれば気が済む?執務中の我は其方の親では無くこの国の王なのだぞ?」

 「……失礼しました、国王様」


 王様にゆっくりと頭を下げる王子。

 だがそれだけでは済まない。


 「謝罪すべき相手は我だけではあるまい?」

 「……迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした」

 「え、あ、いえお構いなく」


 いきなりこちらに振られたので対応が変な事になったカイセ。

 王子も若干不審がるが、しかしそれを気にせずに王様は話を進める。


 「……さてカイセ殿。本当であればもう少しばかり言葉を交わしたかったのだが、本題は既に済んでいる。忙しなく振り回して申し訳ないが、今日はここで締めとさせて貰えないだろうか?」

 「あ、はい。こちらとしては特に問題はありません」

 「そうか、ありがとう。……急な呼び出しに応じてくれた礼に、心ばかりだが土産を用意させてあるゆえ、部屋の外の案内人から受け取って帰ると良い」

 「あ、ありがとうございます。それでは失礼します」


 そうして場に流されるまま、カイセは執務室を後にした。

 その際に、扉が閉まり切る直前の僅かな間に、第三王子が待ちきれずに語りだす声が漏れ出たのだった。


 (……エルマはアレに興味を持たれてるのか。何というか、大変だなぁ)


 そんなシンプルな感想だけが浮かんだカイセは、手土産を受け取るとそのまま真っ直ぐに王城を後にしたのであった。


 (……あ、王子の前で仮面付けてなかったな)


 部屋の中では仮面を外していた為、第三王子に近くで顔を見られてしまった。

 

 (……まぁ、会わなきゃ勝手に忘れてくれるだろ) 


 


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