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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第四章:世界の果ての七星龍
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四章エピローグ/その喧騒は他人事ならず


 「――へぇ、ここが王都なのね」


 王都の町並み。

 門を越え、足を踏み入れたシロはその光景に声を漏らす。


 「()は始めてなんだったか?」

 「そう。お仕事(・・・)で来た時はお城の中だけだもん。外の町並みとかは全然。それに前に来たのもニ百年(・・・)も前の事だし」

 「……あの、カイセさん?今さらっと〔人では無いです宣言〕がされた気がするんですけど?」


 その不注意な言葉を聞き漏らさなかったアリシアが、当然の指摘を突いてくる。  


 「冗談だから気にするな。とりあえずアレの行動発言についていちいち深堀りすると色々と面倒だぞ?」

 「アレ呼ばわりは酷いなぁー。まぁ深くは聞かないで欲しいかな?アリシアちゃん」

 「……そうですね。そうしたいと思います」


 ――王都へと日帰り観光(・・・・・)にやって来た【カイセ】【アリシア】【シロ】。

 休暇で人界へと降りて来た天使シロの『観光したい!』という要望に引きずり込まれたカイセは、旅の道連れ――もとい女性の相手役としてアリシアを巻き込んだ。

 当然ながら天使である事は伏せ、ちょっと訳ありの人物とだけ伝えてある。


 『もしかして天使か悪魔だったりします?』


 ちょっと前にアリシアが言葉にした冗談(フラグ)

 しっかり回収されてしまった事にそこでカイセも気付いたが、とりあえず適当に流して誤魔化してはおいた。

 アリシアも冗談で言ってるので深追いはされなかったが、案外勘の良い子らしい。 


 「あれなに?食べ物?」

 「そうですよ」

 「よし、食べようアリシアちゃん!お姉さん奢るよ」

 「え?あ、はい。ありがとうございます」


 早々に店から香る食べ物の匂いに釣られて流れて行くシロとアリシア。

 シロはこの休暇に合わせて、〔現世滞在プログラム〕なるものを受けて降りて来ているため、現地の貨幣通貨もきちんと所持している。

 どこかで帳尻合わせは行われるのだろうが、そのおかげでカイセの出費は手伝って貰ってるアリシアとの二人分のみで済むので、シロ本人は好きに買い物をすればいいと傍観している。


 「――はい、カイセくんの分」

 

 食べ歩き出来る食べ物をいくつか買って戻って来た二人。

 するとシロはその中の一つをカイセにも差し出して来た。


 「俺の分?」

 「そうだよ。はいどうぞ」


 思えばいつも渡す側か食われる側(・・・・・)だったせいで、誰かに食べ物を分けて貰う経験が少なかった気がする。

 

 「……ありがとう」

 「どういたしまして」


 そして三人はそれらを食べながら、王都の町を適当に散策し始めた。

 

 「――あら?ねぇ、あの騒がしい建物は何?」


 そんな中でシロが見つけて指差した建物。

 確かに何やら騒がしく、多くの人が出入りしていた。


 「あれって……冒険者ギルドの本部ですね」


 アリシアの示す通り、あの建物は〔冒険者ギルド〕。

 冒険者達の仕事の拠点となる管理斡旋所。

 それも王都にある中心地、ギルド本部である。


 「あそこはいつもあんなに賑わってるの?」

 「どうなんでしょうかね?」

 「俺も分からん」


 冒険者には縁遠く、比較対象を知らないのでカイセもアリシアもハッキリとはしないが、建物を出入りする人々が確かに慌てた様子なのが気になる。


 「……へぇ、〔新しいダンジョン〕が出現したんだって」

 「それどうやって知った?」

 「キギョウヒミツってやつかな?まぁ聞き耳立てただけなんだけど」


 当然普通の耳では聞こえる訳も無く、それをさっくりやってみせるシロはやはり天使相応と言うべきなのだろうか。


 「ダンジョン……あ、そうか。周期的にはそろそろでしたね」


 何やら心当たりがあったようなアリシアが呟く。

 カイセとしてもダンジョンに関する最低限の知識は備えているが、〔星の図書館〕は実用性重視で調べていたのでより深い知識は持ち合わせていない。

 なので調べるよりも早いと聞いてみる事にした。


 「ダンジョンの周期って何のだ?」

 「新たなダンジョンの出現周期ですよ。専門家の研究だと、およそ三百年に一度ぐらいで新たなダンジョンが生まれると言われています」


 あくまでも目安が三百年の為、当然誤差もあるようだが、ここ数年程がその目安となる時期だったようだ。

 そしてその予測の通り新たなダンジョンが出現し発見されたようだ。


 「三百年毎にダンジョンが増えるって、微妙にキツイ気がするんだが」

 「まぁ単純に増えるだけなら大変でしょうが、新たなダンジョンが生まれると既存の中で最も古いダンジョンが力を失い始め、十年ほどで完全停止し消滅するらしいので基本は五つ、六つが共存しているのは入れ替え期間(・・・・・・)の今の間だけですよ」

 

 歴史上、ダンジョンの数がそれ以上になった事はないそうだ。

 もちろんあくまでも人類領域での記録な為、世界をくまなく探せばその限りではないのだろうが、少なくとも人の歴史が知る限りはそういうサイクルが存在するようだ。


 「そうなるとギルドが騒いでるのも当然ですね。冒険者にとって新規ダンジョンは宝の山ですから。そのダンジョン固有のドロップ品とかは流通の少ない、希少価値の高い最初こそ最も高額で売るチャンスですし、当然未探索なので浅い階層でも地図や情報が高く売れます。なのでいち早く動き出す準備をと躍起になってるんでしょう」


 未知に対するリスクはあれど、それでもやはり得る物も大きい。

 そもそも冒険者は大なり小なりリスクを背負って活動する者達だ。

 今更未知のダンジョンに尻込みする事も無く、稼ぎ時としてこの騒ぎになるのも当然のように思えて来る。


 「カイセさんはダンジョンには興味ないんですか?」

 「全くない」

 「まぁ興味あったらとっくに冒険者資格取ってどっかに潜ってますよね」

 「それにそもそも、ただ稼ぐだけなら多分あの森散策した方が稼げる」

 「あぁ……」


 魔境の森は既存の五つのダンジョンよりも危険度は高く設定されている。

 危険度イコール稼ぎ場としての優秀さとは行かないが、それでも素材の価値的に稼ぎが多くなりやすいのは確かだろう。

 勿論、あの魔境の森を探索できるだけの力があればの話であるが。


 「そもそも何でダンジョンなんて存在するんだろうな」

 「ダンジョンは〔魔素〕の浄化装置(・・・・)、一種の血液透析(・・・・)みたいなのが一番の役目だよ」

 「魔素の浄化?トウセキ?……初めて聞くお話ですね」


 シロの言葉に対するアリシアの反応。

 それは本当に明かして良い情報だったのかと確認してみたいカイセであったが、より余計な発言が出てきそうだったのであえて触れずに黙る事にした。

 

 「まぁ何にせよ、俺らには関係無い話だな」

 「……あ、カイセくんにお客さんみたいだよ?」

 「え?」

 「ほら」


 シロの指差す先。

 二人の兵士を連れた、見覚えのある男がこちらに近づいてくる。


 「お久しぶりです、カイセ様」

 「……あ、確か三従士の」


 そこに居たのは、魔境の森で勇者ロバートが連れていた三従士の一人であった。


 「その節はお世話になりました。それで……申し訳ないのですが、我々にご同行頂けないでしょうか?」

 

 この時点でカイセは気付いた。

 また面倒ごとがやって来たのだと。


 「カイセ様を王城にご案内したいと思います」




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