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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第四章:世界の果ての七星龍
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騒動の翌日



 「――あ、カイセさん。おはようございます!昨日は何か大変だったみたいですね」


 騒動の翌朝、旅館の部屋を出たカイセは勇者ロバートに遭遇した。


 「……まぁ大変なのは大変だったな。ところで、結局そっちは何処に行ってたんだ?昨日の朝以降、夜になっても見当たらなかったけど」

 「あ、僕らは龍人の方々の修練場にお邪魔していました。ちょっと張り切り過ぎて帰って来るのも遅くなってしまいました」


 何でも勇者組の二人は、この宿の龍人達に教えて貰ったこの里の龍人達の集まる鍛錬の場にお邪魔し、龍人達に揉まれて来ていたようだ。


 (……普通ああいう騒動に遭遇して、問題を解決するのって勇者の役割な気もするんだけどな)


 探偵の元に事件が寄って来るように、勇者こそがああ言った騒動に巻き込まれ解決していくべきだと思うのだが、流石に女神のポカで生まれた平和の象徴的な勇者に望むべき事ではないだろう。

 

 「……そうか、まぁ鍛えようと、強くなろうとするのは確かに大事だな。だけどたまには息抜きも必要だと思うぞ?せっかく容易には来れないような場所に来てるんだし、鍛錬以外にも目を向けていいんじゃないか?」

 「同じことを何度か言われましたけど、僕は僕でしっかりと楽しませて貰っているので気にしないで大丈夫です。龍人の鍛錬って珍しくて面白いんですよ!滝に打たれたり……と、そう言えばカイセさん。今日から開始される予定だった一連の式典・祭事が全部延期になったって、さっき宿の方に言われたんですけど聞きましたか?」

 「聞いてるよ。まぁそれだけ昨日の出来事が大きかったってところだな。俺からは詳しくは語れないが」


 カイセ達には昨日の時点で光龍直々に伝えられた決定事項。

 招かれた客人達が参加する予定だった、〔継承の儀〕を始めとした一連の予定が全て延期となったのだ。

 昨日の出来事を振り返れば、七星龍のうち現役であった六龍の内の半分が、今回の騒動で身動きを取れない状況になってしまっているのだから仕方ないと言えば仕方ない。

 火龍水龍は治療の後にリハビリを。

 肝心の雷龍は厳重拘束、このままいけば資格の剥奪も決定的。

 光龍達も当面は後始末などに追われる以上、このまま予定通りに実施とは行かないようだ。


 「そうなると、僕らはこれからどうなるんでしょうか?」

 「詳しくは後で運営側に聞いてくれ。少なくとも今の俺には分からない」

 「そうですか。ではとりあえず今日の所は、この空いた時間を使ってまた鍛錬場にお邪魔しようと思います」


 暇が出来たのでまた鍛錬場。

 当人が楽しんで行っている以上、カイセとしては何も言うまい。


 「……と、そろそろ出かけなくちゃならないんだが」

 「あ、すいません足止めしてしまって。朝食はいいんですか?」

 「適当に満たしといたから大丈夫。そんじゃまた」

 「はい。いってらっしゃい」


 そうしてロバートと別れたカイセは、その足で集合場所の玄関口にまでやって来る。

 するとそこには既に、本日の同行者の一人の姿があった。

 本日()という気がするが。


 「おはようございますカイセ様」

 「ジャンヌか、おはよう……付き人は?」

 「すぐに来ますよ…ほら」

 「お待たせしました聖女様!――おはようございます、カイセ様」


 荷物を持って駆けて来る付き人リズ。

 リズはジャンヌの隣にいるのがカイセだと気付くと、一瞬だけ視線を尖らせはしたものの、すぐにいつもの付き人としての平坦な対応に切り替えた。

 聖女の付き人としては未だカイセに対する警戒を消しきれないのは無理もないのだろう。

 そもそも信用して貰える要素を提示した覚えがないのだから、これも当然と言えば当然。


 「――皆様、お揃いのようですね。これより光龍様の命により、皆さまを目的地にまでお連れさせて頂きます。どうぞ馬車へとお乗りください」


 予定の三人が揃ったところで、外に控えていた使いの龍人が一同を馬車に招き入れる。


 「それでは出発いたします」


 そして一同を乗せた馬車は、本日の目的地へと向かいだした。


 「――聖女様、こちらを」

 「ありがとうリズ。良ければカイセ様も一緒にどうですか?」


 その車中、リズが手渡し、ジャンヌが開いたのは朝食のお弁当。

 中身はサンドイッチのようだ。


 「いや、朝食は自前で済ませて来てるから必要ない」

 「そうですか。でもこれリズの手作りですよ?」

 「何故そこを推す?」

 「女性の手作りとなれば、男性は無条件で飛びつくものと思ってましたが。見た目や味にも拘らずただその事実だけで」

 「そう言うのが居るのは事実だろうが……」


 そこまで飢えてるのは極一部だと思うので、出来ればその大枠で男全体を括らないで欲しいものだ。


 「何なら今度私が手作りでご用意しましょうか?」

 「聖女の手作りとか、付加価値が強すぎて爆弾染みたものになりそうな気がするんだけど?」

 「まぁ色々な面倒を引き寄せる可能性がゼロではないのは認めます。むしろ魔物寄せの類だと思いますが」

 「そんなの要らん……そんな事よりも、それは早めに食った方が良いんじゃないか?そんなに移動は長くならないって聞いたが」

 「そうですね。では頂きます」


 そして改めて朝食に手を出し始めた聖女ジャンヌ。

 馬車はその間も順調に進み、そして食事が終わる事には本日の目的地へと辿り着いたのだった。



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