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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第四章:世界の果ての七星龍
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成長と、浄化の光



 『――なるほどな。アレが騒動の元凶か』

 「……初めて見るけど、あれってもしかして――」

 『アレは【腐屍龍】。〔アンデット〕化した龍種(ドラゴン)……〔ドラゴンゾンビ〕等とも呼ばれる代物だ』


 光龍の背に跨るカイセとジャンヌ。

 空を飛び、そして騒動の地へと辿り着いた三者が見たものは、五体の【腐屍龍(ドラゴンゾンビ)】。

 つまりは〔動く死体〕であった。


 『ふむ、単独で五体と対峙しておるのか。アンデットの弱点は聖・光・火属性。あやつは火属性を持っていたな』

 「ジャバ…だけど使ってない(・・・・・)のか?」


 一対五でドラゴンゾンビと対峙するジャバ。

 動きが緩慢なゾンビに比べ、ジャバは低空ながらも縦横無尽に飛び回る。

 後は隙を見て炎球の一つでも吐き出せば勝てるはずだ。

 だがジャバはそれをしない。

 ただ飛び回り、ドラゴンゾンビの足止めに徹しているようにも見える。


 『なるほど、庇いながらか……あの子龍、火龍水龍(バカども)よりもよっぽど大人ではないか』

 「どういう事だ?」

 『この花畑は風龍にとっては両親の形見や墓標に等しい場所なのだ。あやつはその花畑(形見)を焼き尽くさぬように炎を禁じ、腐った肉が無暗に散ることでまだ無事な草花を枯らす事の無いように物理的な攻撃すら最小限に留め、今以上に被害範囲を広げぬよう、五体全てがその場に留まるように牽制して立ち回ってるようだ』 


 基本食欲優先で、自由奔放な子供龍であるジャバ。

 それがいつのまにやら他者の心情を顧みる事が出来るようになっていた。

 カイセはちょっとばかしジャバの成長に感動していた。


 『……お主はアレの親か何かか?子を育てる親の反応ではないのか、それは?』

 「……そんな事より、一緒にいるはずの肝心の風龍はどうしたんだ?姿が見えないけど」

 『誤魔化したか?まぁ良い。それなら向こうだ』


 光龍の示す先。

 ジャバと風龍の戦いの場から少し離れ、立ち尽くす少女の姿が見える。

 それは風龍の人化体の少女。

 彼女はジャバが戦う姿を、ただ見つめる事しか出来ずにいた。


 「風龍は戦わないのか?あの子も七星龍なんだろ?」

 『こういう言い方はあまりしたくないが、〔風龍:ウインディ〕は歴代の七星龍の中でも最弱の部類に入るだろう。最年少ゆえのステータスの低さは仕方ないにしても、成長速度や伸びしろも少なく、本人の気質も相まって荒事には向かない』


 争い事に向かない星龍。

 ジャバの布団に潜り込んでいた風龍の行動力を知る身としては少々思う所もあるが、そこはまた戦いとは別と考えるべきなのだろう。


 『風龍の才は、むしろ戦後の――』

 「準備出来ました!」

 『その辺りの話は後回しにしよう。まずはアレを片付るとしよう』


 長編詠唱を済ませ、準備万端となった聖女ジャンヌ。

 アンデット退治のエキスパートとも呼べる神職者のお手並み拝見の時間だ。


 「協力ありがとうございます。もう大丈夫です」

 「そう?それじゃあ離すぞ」


 ジャンヌと繋いだ手を離すカイセ。

 ジャンヌが行使しようとしている特大の《浄化魔法》に足りない魔力を、こうして繋いだ手を通して融通していたのだ。

 本来は《儀式魔法》に分類される、大規模な浄化魔法。

 行使そのものはどうにかなっても、流石にジャンヌ一人分の魔力では燃料が足らなかったのだ。


 (俺の魔力量なら充分過ぎるくらいに足りたけど、流石にやり過ぎる(・・・・・)のはなぁ……)


 全属性を持つカイセも、当然浄化魔法は扱える。

 というよりも既に使った経験がある。

 カイセの転生直後に遭遇した邪龍に向けて放った《失われし浄化魔法》。

 あの時は無我夢中で、強力な魔法をとにかく強引に放った結果、あの邪龍の浄化地点その一帯にはその後一年ほどの間ずっとおまけ(・・・)が付いてしまったのだ。


 (結局あの一帯、一年くらいはずっと〔聖域化〕してたからなぁ……流石失われた魔法って感じだったけど、人様の領域でそれをするのは避けたい。他に手が無いならまだしも、こうしてプロが横に居るわけだしな)


 あの時よりも魔法の扱いは格段に慣れて、尚且つ通常の浄化魔法すら扱えるようになっているカイセだが、こうして隣に浄化魔法のプロが存在しているのだからより安全で確実な方に任せるのが良いだろう。


 「さて……それじゃあ後は任せた」

 『ふむ、成長した息子を褒めてやると良い』

 「そのネタやめてくれ……っと」


 役目を終えたカイセは、そのまま光龍の背中から飛び降りた。

 ここは空中。

 当然そのまま落下していく。


 (転生直後を思い出すなぁ……あれはマジで死ぬと思った)


 だが今回は余裕のカイセ。

 自分の意志で飛び降りて、そして着地の準備も万端である。

 途中からは風魔法で減速、そのままゆっくりと着地に成功した。


 「到着っと――」

 「カイセー!!」

 「ぐおッ!?」


 着地早々にジャバに飛びつかれたカイセ。

 先程まで本気で飛び回っていたジャバは、そのままの勢いで一切加減なく最高速度でぶつかって来た。

 ステータス差があろうともそこそこ痛みはあるものだ。


 「カイセ、やっぱりきた!」

 「やっぱりって?」

 「呼んだから!」

 「……あ、結局アレって幻聴でも何でもなかったのか。それとこの立ち回り…ちゃんと援軍が来る計算で徹してたのか」

 「カイセならこいつらもパッと消せる!お花畑傷つけない!」


 カイセに届いたジャバの声。

 距離的にあり得なかったはずの声は、本当にジャバ本人の発したものであったようだ。

 そしてジャバ本人はカイセが来ると信じていたからこそ、花畑を守る為の動きに徹していたようだ。


 「まぁ実際に浄化魔法を使うのは聖じょ――と、そうだった。話は後回しだジャバ!すぐにここを――」

 

 その時、天が白く光り輝く。

 聖女ジャンヌの放つ浄化魔法の光だ。


 「まずはここを離れるぞジャバ。万が一にも邪魔になるわけにも行かないからな」

 「わかった!」


 その場から急ぎ離れるカイセとジャバ。

 そしてそれを確認したかのように、天の光が動き出す。 


 「あ…来るぞ!」


 そして魔法は放たれた。

 動きが緩慢なドラゴンゾンビ達は、逃げる事も出来ずに天から降り注ぐ強烈な光に飲み込まれる。


 「……終わったか」


 そして光が収まると、そこに居たはずの五体のドラゴンゾンビは骨だけを残し綺麗さっぱりと消え去ったのだった。



 

 


これまでの話に、いくつか誤字の御指摘を頂きました。

誤字報告ありがとうございます。

報告は確認の後、順次適用させて頂きました。

こちらでも投稿時に確認はしているのですが、どうしても時々見逃しが出てしまうようです。

今後も気になる点がございましたら気軽に誤字報告をお使いください。

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