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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第四章:世界の果ての七星龍
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光龍とおでかけ



 「――あの方が風龍様…普通の人間の女の子に見えますね」

 「見た目も雰囲気も、二馬鹿とは別の意味で星龍らしく見えないからな」


 朝食の場にて、いつの間にやら増えていた少女の正体について語りあうカイセとジャンヌ。

 【風龍】の人化体である少女。

 つい先程この場の一同の前で自己紹介は済ませたばかりだ。


 「ですが…こう言っては何ですが、あの二龍様方(・・・・・・)と比べればとてもまともで良い子ではないですか?」


 迷惑な火龍と水龍。

 あの二人に比べれば、本当にまとも星龍だと思う。

 自己紹介の挨拶もしっかりしており礼儀も正しい。

 七星龍の中では最年少という風龍だが…一番下がまともなのに、ならば年上のあの二龍は何がどうしてああなったのかと本気で気になる所でもある。


 「……とは言え、コレ(・・)はもう少し自重して欲しいところではあるんだけどな」


 他者にはまだ語らずにいる、昨日の尾行に今朝の添い寝。

 本人曰くあの尾行は、ジャバとの初対面をより良いタイミングでと見計らう為に尾行を続けていた所、躊躇が続いて機を逸し、そのまま夜を迎えてしまったそうだ。

 一応夜は仕方なく引き揚げてはいたようだが、朝一番で誰もがまだ眠る間に来訪。

 我慢できずに部屋に侵入…そのままジャバの布団に忍び込んだそうだ。


 (最後の不法侵入さえなければこっちの印象も悪くはなかったんだがなぁ)


 不法侵入からの布団忍び込み。

 ぶっちゃけ恋愛絡みに関しては、完全に危ない人な気がする。  

 そして今、当の本人たちは――


 「ジャバくん、あーん……美味しい?」

 「もぐもぐもぐ……おいしい!」


 風龍の少女が差し出す食べ物を、ジャバは大口を開けて受け入れていた。

 ちなみに今食べているのは風龍自前のお菓子らしい。


 「……経験上、ジャバの敵意を削ぐにはあんな風に食べ物で釣るのが一番良い。軽い怒りならそで簡単に吹き飛ぶ。まだジャバに抵抗があるなら、美味い食べ物でも常備しとけば失敗した時役に立つんじゃないか?」

 「……覚えておきます」


 実際に、勝手に布団で添い寝していた風龍に、最初はジャバも警戒を示していた。

 だがお近づきのしるしとして差し出した自作の菓子がジャバの壁を一気に取り払った。

 ……とは言えこの餌付け作戦が、彼女の目的である恋仲の達成のための手段として適当かどうかは正直微妙な所ではあるのだが、そこは外野の知った事ではないので気にしないようにしておく。


 「あの、カイセ様」


 そんな事を考えていると、件の風龍がカイセに声を掛けて来た。

 ちょっとだけ身構える。


 「……どうした?」

 「ジャバくんとお出掛けに行きたいのですが……連れ出してもよろしいでしょうか?」

 

 ジャバとお出掛け。

 勘繰るならデートのつもりなのかも知れないが、少なくともジャバにはそのつもりはないだろう。


 「……ジャバ!出掛けるのか?」

 「うん!遊んでくる!」


 とりあえずジャバに拒否するような意志はなさそうなので、ならばカイセに止める理由は無い。


 「とりあえず変な所には連れて行かないようにしてくれ。あとは日が沈む前には帰って来るように」

 「分かりました。ありがとうございます!」


 そうして風龍は再びジャバの元に戻り、そして食事を終えた二人はそのまま出掛けて行ったのであった。

 風龍のなんと楽しそうな笑顔やら。


 「……本物の親御さんみたいでしたね」

 「言っててそれっぽいって自覚はあるからツッコまないでくれ」


 その直後、席を立つカイセ。

 そこにジャンヌは追加でからかう。


 「まさか、後を付けてお二人の様子を陰から見守るつもりでしょうか、お父さん(・・・・)?」

 「何その過保護親……俺は用事があるだけだよ。さっき光龍に誘われて、朝食後にちょっと行くところがあるんだよ」


 今朝の一件の際に光龍から誘いを受けたカイセ。

 光龍いわくカイセに見せたい場所があるのだという。

 そんなわけでこれから光龍とおでかけだ。


 「何なら聖女殿も付いてくるか?」

 「……いきなり出現するなよ。温泉入って待ってるんじゃなかったのか?」

 「勿論入って、そして出てきたところだ。我はあまり長湯は好まないのでな」


 玄関で合流のはずが、先に済ませた光龍が朝食の場へと合流してきた。

 光龍を前にして客人達は静かにかしこまる。

 

 「お出掛けに私もですか…お誘いは嬉しいのですが、いったいどちらへ向かうのでしょうか?そもそもそこは私が同行しても良い場所なのですか?」

 「行き先はここでは明かせぬ。資格に関しては聖女殿なら構わん…いやむしろ聖女にも見せておきたい場所ではあるな。ただ…連れていけるのは其方のみ。其方の従者には留守番して貰う事になる」


 ジャンヌの同行は許されるが、聖女の付き人であるリズの同行は許されなかった。

 一瞬見せてしまった不満そうな表情を悟られぬように隠したリズだが、光龍の目はごまかせなかった。


 「安心せよ。我の誘いで外出する以上、聖女殿には傷一つ付けずに其方の元に送り帰すと約束しよう」

 「……失礼しました。私よりも御強く賢い光龍様と共にあるのであれば、そのような心配も不要でした。お気を使わせてしまい申し訳ありませんでした」

 「よい、気にしていない」


 失礼を働いたと頭を下げるリズ。

 とは言え光龍もこの程度は気にする程でもない。

 むしろ主人を守る従者の立場として当然の心配であっただろう。


 「大丈夫よリズ。――光龍様、そのお誘いを有り難くお受けしたいと思います」


 こうして大急ぎで準備を整えた聖女の同行も決まった。

 ただし未だに行き先は明かされず。

 そのまま光龍に連れられて、カイセとジャンヌは宿を出た。


 「さあ乗るが良い」

 「……え、馬車?というか馬いたの?この里って」


 宿の前に待っていたのは、どう見てもよく知る馬が曳く馬車であった。


 「確かに我ら龍には必要はないだろうが、龍人には飛べぬ者も多く居る。その者たちが使う馬車を、客人用に回したのだ」

 「てっきり歩きか、龍の背に乗っての移動になると思ってた」

 「ここからはさほど遠くは無いからな。細かな道を進む事も考えれば、陸路のほうが手間が少ない。さぁ乗るぞ!」


 そうしてカイセ・ジャンヌ・光龍の三者は、馬車に乗り込み目的地へと向かい出した。

 馬車自体は、以前乗った聖女の馬車と似たような乗り心地であった。


 「……それで、結局何処に行くんだ?」

 「明かすのは着いてからだ。もう十分もすれば付くゆえ、答えはもう少し待つがよい」


 光龍の言葉の通り、馬車はほぼ十分ピッタリに停車した。

 降りるように促され、二人の前に現れたのは〔洞窟の入り口〕であった。


 「馬車はここまで。残りはこの中を五分ほど歩く。ここからは我らだけだ」

  

 馬車と御者の龍人はこの場にて待機。

 光龍を先頭に、ジャンヌとカイセも洞窟の中へと足を踏み入れた。


 「……少し寒いですね」

 「確かに冷えるな。寒いならこれでも羽織っとけ」

 「……ありがとうございます」


 寒さを感じるジャンヌに〔アイテムボックス〕から適当な防寒具を取り出して渡すカイセ。

 確かにこの洞窟は些か寒い。

 寒いのは確かなのだが……


 (何だろうか?寒いのも確か何だけどそれよりも、何か覚えのある雰囲気というか空気と言うか……)

 

 カイセはこの場の寒さよりも、空気や気配と言ったものが気になっていた。

 既視感のある…〔女神空間〕にも似た雰囲気、空気の肌触り。

 かと言ってそのまま女神空間と同質のものでも無い。

 

 (この感覚、前に感じたのは確か……)


 カイセのその疑問の答えは、この後すぐに明かされる事になった。

 

 「着いたぞ」


 洞窟を進み、辿り着いたのは大きな空間。

 そして答えが出る。


 「ここは〔初代勇者〕の隠れ家……〔秘密基地〕と名付けられた場所だ」




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