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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第四章:世界の果ての七星龍
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星龍会議と恋する風龍




 「――さて、全員揃ったな。それでは〔星龍会議〕を始めよう。まずはそれぞれの客人の――」

 「待った光龍。話を始める前に確認をしたいのだけど良いかしら?」

 「なんだ土龍?」

 「全員揃ったと言うけど……この場には半分の姿しか見当たらないのようだけど?」


 〔星龍会議〕と呼ばれた集いの場。

 その会場となる特殊な部屋。

 ここは七星龍のみが入ることの許された場所。

 円形のテーブルには、七つの椅子が備え付けられているが、現在四つの空席が存在する。

 会議の始まった現時点で、集った星龍は三体のみであった。


 「これじゃから最近の若者どもは……」


 白髪の老人。

 現七星龍の中で最高齢である【雷龍:サンディア】の人化体は、この状況に小さく愚痴を零す。

 

 「若者がどうとか言うつもりもないのだけど、確かに揃ったのは高齢な三人で、居ないのは若い三人よね」

 

 金髪ロングな美熟女。

 【土龍:ソエル】がその事実を確認した。


 「……〔火〕と〔水〕は我が預かっているゆえ、今はここには出て来れぬ」


 そう疲れたように語るのは、星龍の長である【光龍:ホーリレイ】。

 この場に揃った三人は、確かに七星龍の中でも古い者たちであった。


 「〔火〕と〔水〕が光龍の世話に……と言う事は、また何かをやらかしたのかしら?」

 「その通りだ。内容は馬鹿らしいゆえにこの場では語りはしないが、現在あやつらにはいつも以上の反省を促しておる。明日の最終会議には参加させるゆえ、今は無視しておいてくれ」

 「まぁ奴らの担当案件は既に片付いたものゆえ構わぬが……では〔風〕はどうした?」


 不在の四席のうち、〔火〕と〔水〕は光龍の管理下にある。

 そして〔闇〕はまだ任命前で、そもそもが空席。

 となると残るは〔風〕の一席のみである。


 「〔風〕は我も知らんが、今日は参加出来ぬとだけ連絡は来ている。むしろお主らは何か知らぬか?」

 「知らんな」

 「知らないわ」


 揃って行方は知らぬと言う。

 果たして風龍はいずこに?


 「……もしかして、また悪い癖(・・・)が出たのかしら?」

 「あやつの惚れ癖(・・・)の事か?まぁ無いとは言えないのう」


 〔火〕と〔水〕の二龍に比べれば、風龍はかなり常識を弁えた存在である。

 だが一点だけ困ったところがあった。

 それが〔惚れ癖〕。

 簡単に言えば惚れやすい(・・・・・)のである。

 彼女の中にある基準を満たす相手には即座に惚れる。

 そして仕事もそっちのけで、惚れた相手に付き纏う癖がある。

 今回もそれだとすれば、一報を入れてあるだけ多少マシな事例であろう。

 それさえなければまともな龍であるのだが、その一点が発動している間は、火と水の二龍のように厄介な存在として捉えられてしまう。


 「またアレなのか?だが里の有望株には一通り惚れ通したのではないのか?」

 「そうじゃの。アレの好みそうな龍種・龍人は一通り過ぎたはずじゃ……もしや客人にでも惚れたのではないのか?」


 嫌な想像をと頭に手を当てる雷龍。

 だがその可能性を土龍が否定する。


 「いやそれは無いんじゃない?当然好みの都合もあるでしょうけど、アレが惚れこむ絶対条件(・・・・)として〔龍の因子〕は外せない。あの子はまず因子の力強さに目を付け、そこから外見や内面的な好みと照らして惚れこむ……つまりは龍系統種族以外はそもそも査定対象にすらならないはずよ?」

 「儂の客人は〔ドワーフ族〕。土の客人は〔エルフ族〕だったか?他の客人はどうだ?」

 「我と火と水はどれも〔人族〕だ。風の所は確か〔妖精族〕だったはず。いずれにせよ〔龍の因子〕は持ちえない」


 それぞれの招待客。

 その種族の中に〔龍の因子〕を持ちえる可能性のある種族は含まれていなかった。

 当然、先祖の中に龍種の何かと交わった者が居れば可能性もゼロではないだろうが、その程度に薄い因子は、風龍は見向きもしないだろう。


 「なら客人にちょっかいを出す事は無いだろう」

 「そうだと言いたいのだが…実は心当たりが一つあるのだ」


 そう切り出したのは、他でもない光龍であった。


 「それはどういう事なの?」

 「確かに招待した者には〔龍の因子〕を持つ者はいないだろう。だがその者に付いて来た(・・・・・)者達の中に、明確に〔龍の因子〕を持つ者が一人おるのだ」

 「それはどんな者なの?」

 「子龍だ。里の外に暮らす龍種。我の招いた客人が、完全なる龍種である子龍を連れとしてここへと来ている。まだ子供だと考えていたが、もしやと…ちょっと待っておれ……こやつだ」

 

 すると光龍は、手元の球体に手を乗せる。

 そして魔力と共に記憶(・・)を流し込むと、円形テーブルの中央に、一枚の絵が出現する。

 それは紛れもなく、子龍であるジャバの姿であった。


 「……いや、光龍よ。これはもう確定ではないのか?」

 「そうよね。疎い光龍には分からないかもだけど、どう見ても〔風〕が好みそうな龍よね?見た目は確かにまだ若そうだけど、成龍に成れば好みのド真ん中…青田買いにはちょうど良いくらいかしら?」


 二龍揃って既に確信を持った、この場に居ない風龍の行き先。

 光龍はため息を付く。


 「はぁ……そうか、お主らが揃ってそう言うのなら確定的なのだろう。明日の朝一で様子を見てくることにしよう。あの子龍を出汁に使ったのは早計であったろうか……」




 ――そして翌朝。


 「で、今ここに至ると?」

 「そう言う事だな」

 「……出来ればそう言う話は先にしておいて欲しかったな。昨日隠れてのはこの子(・・・)だったのか」


 早朝からやって来た光龍に、早速愚痴を零すカイセ。

 朝から直面した問題に光龍の来訪。

 身なりを整える暇の無かったカイセの髪は寝癖の付いたままだった。

 そして揃う二人の視線の先には――


 「ん……んー…」

 「すー…すー…」


 ジャバが眠っていた布団に横たわる二人(・・)

 一人は本来の布団の使用者であるジャバ。

 そしてもう一人は、全く見知らぬ女の子。


 「子龍は寝苦しそうじゃな」

 「いやまぁあれだけぎゅーって抱きしめられた状態なら当然だと思うけどな」


 少女はジャバを抱き枕にし、幸せそうに眠る。

 対して抱き枕ジャバは、とても寝苦しそうな寝顔と寝息だ。

 そこまで苦しいのなら起きれば良いとも思うのだが。


 ――朝起きて、ジャバの様子を見れば見知らぬ少女と共に眠る光景。

 光龍にその正体と理由を説明して貰うまで、一体どんな反応をすればいいのか戸惑いを隠せなかった。


 「ジャバに惚れた風龍ねぇ……それであの子はどうすればいいの?」

 「済まぬが出来る限り普通に接して欲しい。ああなると想う相手と無理矢理に引き剥がそうとすればすると程に頑なに、そして燃える性質なのだ。なので其方は有事以外は見守るに徹して欲しい」


 正直面倒な性質である。


 「ジャバ本人が付きまとわれる状況を嫌がったら?」

 「アレも想う相手の言葉であれば割と受け入れる。もちろん他人が言わせた言葉と判断されればその限りではないが、子龍が本心からアレを拒むのであればひとまずは大人しく引き下がるだろう。要するに、当人達の成り行きに任せておけ」

 「……そこはまぁジャバの様子を見ながらだな」


 そうして何故か七星龍の一角である風龍の少女が、カイセ一行…厳密にはジャバに付きまとう事になったのだった。


  

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