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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第四章:世界の果ての七星龍
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最大級の来客

投稿遅くなりました。

今章から章が変わります。



 「――それで、ご希望の品はこちらでよろしいですか?」

 「……はい。よろしいどころか品質も申し分の無い最高のものですね。相変わらず魔境の森はすごい所ですね」


 ここは教会の聖女のお部屋。

 いつものように聖女ジャンヌと対面しているカイセ。

 ただし今回はカイセの用を片付ける為ではない。


 「わざわざお届け頂きありがとうございます。それでは報酬を――」

 

 今回は珍しくジャンヌの用件でやって来ていた。

 何でもこれから向かう先への土産の品に用意しようとしていた果実が、色々と事情が重ねり、今は市場に全くと言っていいほど出回っていないのだそうだ。

 その為、ジャンヌはいくつかの伝手に当たり、その中の一つがカイセであった。

 そしてジャンヌの希望の通り、カイセは魔境の森から目当ての品を手に入れて来た。


 「……多くないか?」


 そうして近所に勝手に(・・・・・・)自生していた果実を収穫したのだが、その報酬にとジャンヌが手渡して来た金額が些か多かった。

 というよりも、果実一つ辺りに十万円相当は流石にやり過ぎではないだろうか?


 「いえ、元々の品の相場に、最高級の質、市場に皆無な事を考えればそれが……多少危険手当のような色も付けてはいますが、それでもさほどの上乗せにはなってませんよ。もしもまだ余剰分をお持ちなのでしたら、帰りにでも何処ぞに売ってみてはどうでしょうか?買い取りゆえにこれよりは安くはなりますがそこまで大きな差にはならないでしょうし、市場に流れればより高く……ですから気にせずにお受け取り下さい。足りないのであれば多少上乗せ交渉は受けますが」

 「いやいいです充分です」


 家の近くに気が付かないうちに生えてた代物を収穫しただけの代物だ。

 たった十分程の手間でこれ以上受け取るのは流石に気が引ける。

 

 「それにしても……これがねぇ?」

 「好みというのは人それぞれです。ちなみに私も遠慮したい側ですが」


 二人が出来れば食すのは避けたいこのフルーツ。

 簡単に例えるならドリアンのように癖のあるフルーツである。

 何処の世界にもその手の物好きは居るものだ。



 「……ところで、聞きたいんだがその手の()は――」


 コンコン――

 

 「聖女様、出発の準備が整いました」

 「分かりました。すぐに行きます」


 ノックの後に聞こえた声には聞き覚えがある。

 確かアーロン家の結婚式の際に、ジャンヌの付き人をしていた少女であったろうか。


 「申し訳ありませんカイセ様。私はそろそろここを出て――」

 「分かった。用事も済んだし俺は帰るわ。気を付けてな」

 「はい、ありがとうございました」


 邪魔にならぬようにカイセは早々に撤収した。

 



 「――いらっしゃいませカイセさん。すいませんが今ちょっと作業中ですので、少し待ってて貰えますか?」


 用事のついで(・・・)に女神空間へとやって来たカイセ。

 肝心の女神はお仕事中のようだったので、ちょっとした要件(・・)だけ済ませてしまおう。


 「あー、ちょっと寄っただけだから気にしないでくれ。コレ(・・)を置いてすぐ帰るから」

 「なんですかそれは?」


 取り出したのは先程のドリアンもどきの余り。

 一つ多く取り過ぎて余らせてしまったのでおすそ分けである。


 「女神なのにこの果実を知らないのか?」

 「女神だって全てを知る訳じゃありませんよ。異常な存在であればともかく、正常な植物類の全てにまでは手が回りませんよ。放置してても問題は無い訳ですし」

 「そうか。これは少し取り過ぎたんで、余った分のお裾分けだ」


 現実には在庫処分。

 自分で取っておいてなんであるが、カイセの好みには合わなかったため押し付けに来た。

 ちなみに味見用に手を付けた一個は、きちんと自分の胃の中に収めた。

 ハッキリ言ってキツかった。


 「そうですか。わざわざありがとうございます」

 「ここに置いておくんで好きにしてくれ。それじゃあ邪魔にならない様にとっとと帰るわ」


 そうして仕事の邪魔にならないようにそそくさと撤収したカイセ。

 上手く不用品の押しつけも成功して満足であった。

 なお、女神のその後の反応までは、当分の間は知る事は無い。




 

 「――えっと、『フルーツを差し入れに行ったら仕事中だったので渡す物だけ渡して撤収した』。これだけでいいか」


 自宅へと戻ったカイセは、取り出した紙にデカデカとその一文だけを書き入れた。

 その書き終えた紙を手順通りに折り、出来たのは鶴の折り紙。

 そのまま魔力を込めると、作り物であるはずの折り鶴が、パタパタと羽根を動かしてテーブルから浮いていく。

 そして一瞬で姿を消した。


 「……今ので〔天使〕に届いたんだよな?」


 今のは黒天使への報告書。

 ポカ女神との接触があった場合、その事実とやり取りをこの特殊な紙に記して提出するという役目をカイセは与えられた。

 実のところ在庫処分を兼ねた差し入れは、このお試しの口実でもあったりした。


 「カイセー、カイセー」


 そんな直後にやって来たジャバ。

 何やら慌てた様子である。


 「どうしたジャバ?」

 「お客さんがくるー」

 「お客?誰だ?」

 「でっかいの!」


 でっかいお客さん。

 当然よく分からない。


 「ジャバ、もう少し詳しく――」


 その時、家の外、つまりは森のざわめきを感じ取ったカイセ。

 直後に気配探知の圏内に入り込んだ特大の気配(・・・・・)

 カイセは慌てて外へと駆け出す。

 そして空を見上げる。


 「あれがお客さんー」

 「……〔龍〕。しかも〔七星龍〕だと?」

 

 空を羽ばたき光を放つ存在。

 それは龍種の頂点足る七体の龍〔七星龍〕の一角。

 邪龍と同格……いや、それ以上の存在。

 "七星龍"の称号を持つ、龍種の最高位の存在であり、この世界で最強を名乗るに相応しい一体。

 【光龍:ホーリレイ】。

 魔境の森の危険な魔物たちも、光龍の来訪には怯え、それぞれの住処に姿を隠した為に森の中にはいつもの気配が一切一斉に消え去った。


 『……其方が邪龍を討ち滅ぼした人間か?』


 《念話》、つまりはテレパシーによる意思の疎通、言葉の送信。

 送り主は上空の光龍。

 どうやらカイセに用事がある、ジャバの言うお客様とはその光龍の事であったようだ。



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