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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第三章:貴族の婚活騒動
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三章エピローグ/そして幕間のベルが鳴る



 「こんにちはー」

 「お邪魔しています、カイセ様」

 「あぁ、うん。こんばんは。――それで、何でうちに来てるの?」


 転移護衛の仕事を終えてから数日後。

 午前中の畑仕事を終えたカイセが家の中へと戻ると、そこには何故かアリシアとエルマの姿があった。


 「今日取引じゃないよな?」

 「無いですね。なのでただ遊びに来ました」

 「……そっちは?」

 「どうやら例の王子様がアポ無し訪問に来ると言う情報が入ったらしくて、うちに逃げて来たようです」

 

 そんな逃げて来た当事者は初めて訪れたカイセの家の中を、興味津々にキョロキョロと眺めていた。

 本当にヤバそうなものはアイテムボックスの中なので、見られて困るようなものは多分無い。

 だから見られても問題はないはずだが。


 「……まぁ良いか。昼飯食うつもりなんだが、そっちは――」

 「ごちそうになります」


 カイセが言い切る前に食い込むアリシア。

 まるで待ってましたと言わんばかりだ。

 

 「あ、えっと……御馳走になります」


 申し訳無さそうにしているエルマ。

 この正反対の反応の二人は、足して二で割るくらいがちょうどいい気もする。

 それが無理でもアリシアはもう少しエルマの反応に寄ってもいいと思う。 


 「カイセー」


 そんなタイミングで、ジャバが専用通路を通って姿を現した。

 ペット用の出入り口みたいなものだが、ジャバも随分慣れたものだ。


 「ひゃあッ!?」

 「ジャバちゃんこっちー」


 突然の来訪者に驚くエルマ。

 その隣で、いつものようにジャバを抱きかかえるアリシア。


 「龍の子供!?」

 「ジャバちゃんです」


 鑑定持ちのエルマには、全てでは無くともジャバの大半のステータスは見えているはずだ。

 邪龍絡みの物騒な称号は全て消えているはずなので問題は無いが、そもそも龍の子供が無警戒で目の前に居る事自体が驚くべき事だろう。


 「敵意出さなきゃ害はないから大丈夫。言葉は分からないだろうけど、基本無害どころか敵以外には無警戒過ぎるくらいだから安心していい」

 

 カイセやアリシアと違い、《言語理解》を持たないエルマはジャバの言葉を理解できないだろう。

 だがジャバを抱えているアリシアの様子を見ていれば、警戒はしても敵対はしないはずだ。

 

 「よしよしー」

 「わっふー」


 と言うより、何やらアリシアの撫でスキルが上がっている気がする。

 ジャバは気持ちよさそうに身を任せている。

 正直、完全にペット扱いなのだが良いのだろうか元邪龍。


 「エルマも触ります?」

 「え、いやでも――」

 「それ」


 不意打ちでジャバを押し付けるアリシア。

 ジャバも一瞬ピクリとしたが、害が無いのを理解したのか再びまったりしている。

 エルマはそのままゆっくりと撫でてみる。


 「……龍の子供ってこんな感触なんですね。初めて触りました」


 当然普通は触れる機会などは無い。

 率先して出逢おうとも思わないような存在だ。

 ――そんな感じで客人達が戯れている間に、カイセは台所に向かって昼食の準備を始めた。

 

 (……とりあえず問題無さそうだから良いか)


 王都からの帰り道も問題は無く、それ以降も、今日に至るまでに再び襲撃などの問題が起きた様子も無い。

 渡した指輪の備えが発動した形跡もない。

 それが認定の影響なのかは分からないが、平穏無事に過ごせているのならそれは良い事だ。

 何事も平和に越したことは無い。

 面倒事など一生訪れない方が良いに決まっているのだ。

 

 ――等と思っていれば、そんな気持ちをへし折る報せが、二人の帰宅後にやって来る。


 (……光ってる?)


 以前女神に押し付けられた〔クリスタル〕。

 その光は、神託用の〔投影装置〕から放たれていた。


 『助けてくださいカイセさん!!』


 その一言だけを伝えて、使い捨てのクリスタルは砕け散った。

 声の主は当然女神。

 それが助けを求めている。


 「……今日は早寝するか」


 触らぬ神に祟りなし。

 文字通り触れずに居るのが安全だろう。

 とりあえず懸念材料であったクリスタルが砕けてくれたのは良かったと思いつつ、何も聞かなかったことにして既読スルーを……


 『こな――たら――なっても――しりません――ね?』


 砕けたクリスタルから無理矢理に聞こえる追加の残響。

 カイセは溜息を吐きつつ、夕食も後回しにして出かける事にした。



 

 「視察が来ます!」

 「そうか、それじゃあおつかれ」


 要件も聞いたので、そのまま帰ろうとするカイセ。

 当然女神は呼び止める。


 「待って!これカイセさんにも影響ある問題だから!ちゃんと話を聞いて!!」


 呼び止めると言うよりは縋りつく女神。

 渋々ではあるが、無関係で無いと言われれば話だけでも聞いてみるしかない。

 カイセは一応の覚悟を決めた。


 「……視察って?」

 「神様としてのお仕事の視察です。『仕事はちゃんとやってるか?』『違反行為は無いか?』『トラブルは起きてないか?』等を確認する為に、〔天使〕が一人派遣されて来ます!」

 「天使……神様の部下か。それの何が不味い……いや、ほぼほぼアウトか」


 それ自体は至極真っ当に聞こえる。

 だが女神の普段の仕事振りを振り返れば、それは定例行事では無くもはや家宅捜索にも等しい重要度だ。


 「大いに不味いです!私の今までのポカがバレれば何を言われるか……下手をするとクビや左遷にも――」

 「やったぜ」


 それは大いに喜ぶべき事だ。

 毎度何かしらポカをする女神はクビになり、別の神様が管理者になってくれれば、面倒事も未然に回避できる。

 天使さんには早くやって来て欲しいものだ。。


 「駄目なんです!特にカイセさんの処遇に関しては!」


 すると女神は、何も無い空間から数枚の紙束を取り出す。

 その内容を確認しつつ、全てをカイセに手渡す。


 「これは?」

 「管理者として就任してから、今までに私がポカした記録(・・・・・・)です」

 「おいこら待て」


 全部で四枚。

 全てミスの一覧。

 その一枚一枚にリスト化された〔めがポカの履歴〕。

 カイセが知るもの以外にも、更に多くのポカが記されていた。


 「……このアルファベットは?」

 「それぞれの重要度です」


 カイセがS。

 アリシアはB+。

 勇者がB-。

 エルマがA。


 「カイセさんの場合は前世終わらせてしまいましたからね。その上で更に重ねてしまいましたから……」


 ポカの筆頭がカイセの一件。

 その他カイセの知らないポカは、その大半がDからCと言ったところだろう。

 他は本当に些細なものばかりではあるが、流石にこれを天使に見せればタダでは済まないだろう。


 「C以下の案件に関しては記録として残してはいますが、B-以上……つまりは皆さんの関わった案件は記録から削除しています」

 「隠蔽?」

 「……それもありますが、その件がばれると上からの〔調整〕が入る可能性が…特にカイセさんに関しては、下手をすると特例の剥奪…つまりはカイセさんの魂を即座に回収し、そのまま輪廻の輪(正規ルート)に放り込まれる可能性が……」

 「それってまた死ぬって事?」


 頷く女神。

 元々賠償として手にしたのが今の異世界人生なのだが、それも途中で打ち切り。 

 普通の神様・管理者様は、例えミスで現地生命に迷惑を掛けようとも、賠償などと言う手段は取らないと言う。

 『ミスで死んじゃった?ごめんね、来世頑張ってね』と言うような感じになるらしい。

 神様ロクでもない。


 「だからカイセさん!今の生活・人生が惜しいのなら、私に協力をしてください!!私がこのまま管理者であり続ければ、カイセさんの特例も安寧です!」


 事の発端がカイセを隠蔽の共犯者として誘い込んでくる。

 と言うよりも『このままだと人生終わりますよ?』と脅しをかけて来る。


 「……何をすればいいの?」


 正直、カイセに拒否権は無いようなものだった。

 

 「それでは【職場見学】をしましょう!!」

 「――ん?」





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