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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第一章:破門された聖女候補
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そしてカイセは動き出す


 「落ち着いた?」

 「一応は……カイセさんが居てくれたおかげで助かってるので。こういう事は言いたくないのですが……何を考えてこんな場所で暮らしているんですか?馬鹿ですか?」


 まぁ一般人の反応としては間違っていないだろう。

 こういう反応を見てしまうと、自分が既に一般人の枠を超えてしまっている事を思い出して、少し悲しくなってしまうが。


 「ここがあの森の中なんですか……だとすると私を助けてくれたというお知り合いの方も普通じゃ無さそうですね。追及はしないですけど」


 元・邪龍、現・子龍のきちんとした龍種なので追及しないのは正解だと思います。


 「そうなると私は……一体どうやって帰ればいいのでしょうか?」


 アリシアの実力を考えれば、この森を一人で歩くのは自殺行為だ。

 最も弱い魔物と遭遇しても瞬殺されてしまう。

 カイセのおかげで人慣れしたジャバが拾ってきてくれたのは、物凄い幸運だったのだと思う。

 

 「そこはまあ大丈夫だよ。俺が送って行くから」

 「さらっと言ってますけど……まぁカイセさんはそういう人なのだと思う事にしましょう」


 何かアリシアのカイセに対する扱いが一周回ってしまって残念な感じになっている気がする。


 「――ところでさ、提案があるんだけど…嫌だったら断って貰ってもいいんだけど、今日はここに泊って行かない?勿論客人としてきちんともてなすよ」


 アリシアを襲った誰か。

 その存在が気になるため、アリシアをこのまますぐに帰してしまっていいものかと考えてしまった。

 アリシアの生存が相手に知られれば、また襲われる可能性もあるかもしれない。

 もしかしたらご実家の家族を巻き込む形になるかも知れない。

 カイセはこのまま真っ直ぐ「じゃあね」と帰す気にはなれなかった。


 「……私がその提案を断ることが出来ないって分かってて言ってませんか?」


 分かってて言ってます。

 アリシアはこの森から自力では帰れない。

 カイセの助力が無ければ、十中八九森の何処かで死んでしまう。

 そのカイセが「ここに残れ」というのなら、従わざる負えない。


 「大丈夫。人道に反する行為はしないと神に誓う」


 あの女神の本性を知る者からすれば、「神に誓う」という言葉ほど信用ならないものは無いと思うが、破門されたとはいえ教会に属していた者であればその誓いはとても重い認識になると思う。


 「……わかりました。お世話になります」

 「うん、少しの間だけどよろしくね」


 こうしてアリシアのお泊りが決まった。

 カイセにとっても初めての人間(・・)のお客人であるため、おもてなしはとても張り切った。


 「――いえ…どれもとても美味しそうな料理ではありますが、この量は流石に食べきれる訳ないですよ?」


 張り切り過ぎて空回りしてた。






 「――うん、ちゃんと寝たな」


 客間へと引っ込んだアリシアの気配が静まった事を確認したカイセは、行動を開始する。


 「さて……この〔発信機〕の送り先は逆探知で特定してるけど……この場所はどうしたものかな」


 アリシアに付けられていたテントウムシ程の大きさの発信機のような機能を持つ〔マジックアイテム〕。

 《隠匿》によって丁寧に隠されていたものではあるが、カイセの看破能力はごまかせず、アリシアをこの部屋に運ぶ前に撤去していたものだ。

 ただし壊してはいない。

 折角の手掛かりなのだ。

 リスクはあるかも知れないが、ここは残しておくことにしよう。


 「問題は、この〔発信機〕を誰が付けたかなんだよな」


 順当に考えればアリシアを襲った面々もしくはその黒幕なのだろう。

 だがこれだけ作りも性能もしっかりした高価なマジックアイテムを使い捨てにするものなのだろうか?

 もしも襲撃のために居場所を把握する目的で付けていたのなら、飛ばす前に回収すればいいのだ。

 仮にアリシアの生死を確認する目的があったのであれば、他にその為の安くて簡単な道具も魔法もあるのだからますます必要ない。 

 これを使う理由も、こうして付けたまま残す必要も、本体の魔力を消費してまで未だに起動し続ける理由もない。


 「……何か違ってる感じがするな。確実にアリシアを殺したいならもっと簡単な方法もあっただろうに。目的は別だったりするのか?」


 そもそも手元で殺してから魔境に《転送》しても良かったのだ。

 転移系は距離が開くほど魔力消費も多くなり、魔法行使の腕前も必要とされる。

 もしもアリシアが襲われた場所から《転移》させたと仮定すると、それこそ一流の《転移魔法使い(テレポーター)》の全力でも足りるか分からない。

 それに比べて、生き物の死体は〔アイテム扱い〕になってしまうため《転移》よりも軽い《転送》で送り込める。

 嫌な言い方ではあるが、生きているか死んでいるかでコストパフォーマンスが大きく変わる。


 「……ここで考えてもキリがないか。それならまぁ行ってみますか」


 カイセは発信機の情報の送り先として特定した場所へと向かう事にした。


 「出来るだけ穏便に、対話で解決できるなら対話で、戦うしかないなら戦う。まずは相手を見極めるとしよう」


 相手が後顧の憂いを断つためにアリシアを襲ったのであれば、こちらも後顧の憂いを断つために行動するまでだ。

 このままアリシアを帰しても、生存を知られ二度目の襲撃が起こる可能性はあるだろう。

 手段は決めていないが、その芽を出来れば詰んでおきたい。


 「どっちにしても、いつかは女神に文句を言う為に〔教会〕に顔を出すつもりだったんだ。今回はその下調べついでに行ってみるか」


 特定したのは〔教会本部〕のとある部屋。

 そこに誰が居るのか分からないし、それ以前に罠の可能性だって無くはない。

 それでもカイセは〔教会〕へと向かう事にした。

 

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