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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第三章:貴族の婚活騒動
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パジャマパーティー?

 



 「ふう。さっぱりし――」

 「きゃあッ!?」

 「カイセさん。何で上半身裸で出てくるんですか?」

 「……根本的な話として、何で君たちは人の部屋(・・・・)に勝手に入り込んでるんだよ」


 初日の終わり。

 王都への道程のちょうど中間地点。

 そこにある小さな町の小さな宿を、一行は貸切って一夜を明かす。

 その中で、転移護衛でありながらも男であるために護衛対象と同室には出来ず、その他諸々の理由から護衛対象の隣室を一人で使用する事になったカイセ。

 転移護衛が側に居ない分は、他の女性従者達が数でその穴を補ってくれているため、カイセ自身はまったりと湯浴みをしていたのだが……。

 戻ったカイセの前には、何故かアリシアとエルマの姿があった。


 「とりあえず上着を着てください」

 「着るけど……何か釈然としないな」


 勝手に待ち伏せしていて、いざ目の前にして騒がれるのは何か釈然としない。

 だが肉体を見せびらかす趣味も無いので、そそくさと上着を着て行く。


 「……エルマ。それだと隠れてませんから」

 「――!!」


 両手で顔を覆って、カイセの体を見ない様にしているように(・・・)見えたエルマ。

 だがその手の指の隙間は大きく開き、その間からバッチリと視線はカイセを凝視していた。

 それを指摘され真っ赤になるエルマは、人の枕に顔を埋めて今度こそ顔を隠した。

 そのまましばらく微動だにしなくなった。


 「……で、何をしてるの?」

 「遊びに来ました」

 「……女の子が夜に寝間着姿で男の部屋にやって来るのは大問題だと思うんだけど?」

 「カイセさんの転移護衛と言う立場を考えれば、出来るだけ側に居るほうがより安全だと思いません?その話をしたら渋々ファムさん達も了承してくれましたし。当然部屋の外で待機してますけど」


 扉の向こうにバッチリと気配が確認出来るので知ってます。

 そもそも責任者のファムくらいは使用人として、一緒に中に入ってくれば良いのにとも思う。

 二人を引き取って連れ帰ってくれるのが一番だが。


 「彼女たちにも色々思う所があるのですよ。ちなみにファムさんからの伝言で、『やらかしたら踏み潰す』だそうです」

 「それをわざわざ女の子に伝言させるのもどうなの?」


 元々やらかすつもりはないので問題は無いのだが。


 「とりあえず人のベットを占領するのはやめてくれない?」

 「嫌です。ここのベット、カイセさんの家のベットとはまた違った気持ち良さがあるので、出来る限り堪能していくつもりですから」

 「自分の部屋のベットで堪能してくれ」


 結局人の話を無視して、人のベットでゴロゴロ寝転がるアリシア。


 「……アリシア?カイセ様のベットで寝た事があるの?」


 そこに唐突に反応を示し、真顔でアリシアにすり寄りってゆくエルマが割と怖かった。

 

 「怪我をして保護された際に使わせて貰いました。ちなみにあくまでも、カイセさんのお家の客室(・・)のベットで、カイセさんのベットではありません。当然エルマが考えているような事も一切ありません」

 「――!!」


 それを適当にあしらうアリシア。

 再び枕に顔を埋めて、微動だにしなくなるエルマ。


 「……カイセさん。もういっそエルマの事を貰ってくれませんか?このまま放置すると多分こじらせて――」

 「――!!!」

 「エルマ、いたい……」


 エルマはアリシアの言葉を遮るように、持っていた枕を思いっきりアリシアの顔面に叩き付ける。

 当然見える顔は真っ赤だ。


 「何を恥ずかしがって……初対面で告白して――」

 「――!!――!!!」

 「いたいいたい」


 今度は枕を握ったまま、アリシアに向けて何度も叩き付ける。

 そろそろ真面目に枕さんを解放してやって欲しいものだ。

 ただまぁ、アリシアが今の所色々と雑になっているのは否定しない。


 「……はぁ。真面目な話をしていいか?」

 「――はい!!」


 カイセの言葉に、何故だからベットの上で正座をするエルマ。

 こっちの世界にも正座と言う所作は存在するようだ。


 「この際だからハッキリと宣言しておくと、俺は現状、積極的に誰かとそう言う仲になろうという気持ちは全く無い。いわゆる諸事情がどうこうではなく、ただ単純に俺にそんな気持ちが湧いていない」


 転生やステータス999。

 女神との繋がりや、魔境の森を拠点としている事。

 |そんな事は一切関係ない《・・・・・・・・・・・》。

 どれも色事を敬遠する理由に成り得る事柄でもあるのだろうが、それらは一切理由にはなっていない。


 「俺の故郷では〔草食系〕なんて呼ばれ方もしてたが、まぁ自覚があるくらいには俺はそれであるんだろう。物語や読み物としての恋愛事に興味を持つことはあれど、自分自身の事となると全くその気が湧かない」


 恋愛を題材とする漫画や小説、映画やドラマも多く見た。

 中には感動するものも多くあったが、こと自分の事としては全く燃える事が無かった。

 男である以上は当然ながら生理現象は存在する。

 だが気持ちの問題として、誰かとそう言った関係に成りたいとは思えない。

 もしかすればその内に、自然の流れでそうなる事もあるかも知れないが、現状自分から率先して動く気には全くなれない。


 「そんな訳で、エルマを含めて誰かに告白されたところで、それに応えるつもりは無い」

 「……つまりそれは、私に対して知り合いや友人以上の好意は無いと、異性としては好きでも嫌いでも無いと言う事でしょうか?」

 「まぁ確かに、そう言う事だな」


 別に嫌っている訳ではない。

 友人としての好意は並みにはある。

 だがそれは色恋沙汰のそれとは異なるものだ。


 「……良し!」

 「よし?」


 カイセとしては『好きではない』と宣言したはずなのか、エルマからは何故かやる気に満ちた声が出て来た。


 「カイセさん。『好きでも嫌いでも無い』『興味が無い』が本当に本音なのでしょうけど、お断りするならばハッキリと『嫌い』って言わなきゃだめですよ?」

 「――カイセ様。色恋沙汰に興味が無いのでしたら、私が興味を持たせて見せます」

 「ほら。その解答だと〔恋する乙女〕はむしろこうして燃え上がっちゃいますから」

 

 「好きでも嫌いでもない」「恋愛に興味が無い」では逆効果。

 嫌いでは無いのならば及第点で「これから好きになって貰えば良い」。

 恋愛に興味が無いのなら、「私が興味を持たせればいい」。

 こうしたポジティブで、恋する乙女はやる気に満ちて行く。


 「カイセさんのおかげで、エルマが段々と逞しくなっていってる気がしますね。初対面の第一印象とは大違いです」

 「それは褒めてる?」

 「褒めてはいますけど、若干はたらし(・・・)に対する嫌みも含みますかね?まぁ頑張ってください」


 結局終始雑だったアリシア。

 そして静かに燃える乙女(エルマ)を、カイセは若干思考停止しながら眺めるしかなかった。




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