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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第三章:貴族の婚活騒動
40/224

神眼少女



 個体名:エルマ・アーロン

 種族:人族

 年齢:14

 職業:貴族

 称号:"神眼"


 ~~~~~~~~


 特殊項目:

 直感 Lv.5

 鑑定 Lv.6

 解析 Lv.4

 看破 Lv.7

 千里眼 Lv.6

 鷹の目 Lv.6




 ステータス数値自体は特筆する点は無い。

 気になるのはそのスキル。

 いわゆる〔見破る系〕に〔遠見系〕が高レベルで連なる。

 そして気になるのは"神眼"という称号。

 神の文字が絡むと途端に嫌な予感しかしなくなるのは日頃の行いのせいであろうか。


 「あの……」


 ステータスと思考に気を取られ、目の前の現実を放置していた。

 目の前でカイセの左腕を掴んで離さない少女。

 先程唐突な告白を行った美少女〔エルマ・アーロン〕

 雰囲気は兄二人と全く似ていない、大人しそうな子。

 強いて言うのなら、やはり赤毛混じりの茶髪は揃いである。

 そんな少女が不安そうにカイセの顔を見上げている。


 「――エルマ様!」


 急な出来事でどう対応すべきか迷うカイセ達のもとへ、更に一人の女性がやってくる。

 服装から見ると、どうやらエルマの使用人のようだ。


 「……何者ですか?」


 カイセ達に警戒の意志を示す。

 自身の主に知らぬ男が近づいていれば当然と言えば当然だろうか。


 「大丈夫です!こちらの〔カイセ様〕には私の方から近づいたのです!……その、探していた(・・・・・)お方でして……それと、あちらの〔アリシア様〕は兄様のお見合いのお相手です」

 「……そうでしたか。失礼しました」


 失礼を働いた事に謝罪の意を示して頭を下げる使用人。

 こちらとしてはそこまで気にしていないのだが。


 「エルマ様、でしたらお屋敷に招いてみては――」

 「ううん。ちょっと唐突過ぎたし、お二人も既に用を終えて帰る所だったみたいだから今日は――」


 二人で話を始める。

 さて本当に、この場はどう対応すべきなのだろうか。

 そう考えていれば、事態は向こうから終結していく。


 「――お騒がせして申し訳ありませんでした。本日はこの辺りで失礼させて頂きます。後日改めて仕切り直させて頂ければと……」

 「ああ、はい。分かりました」


 思わず返事をしてしまったが、何をどう仕切り直すのだろうか?


 「ありがとうございます。それではまたお会いしましょう……」

 「……えっと、あの?」


 挨拶は済ませたはずなのに、カイセの腕を離そうとしないエルマ。

 そして数秒後、名残惜しそうにゆっくりと手放していく。


 「……それでは失礼します」


 そして突如現れた少女は、ゆっくりと後ろ髪を引かれながら離れて行った。


 「じー……」

 「どうした?」

 「いえ、なんでもないです」


 今のアリシアの視線は、明らかに何かが込められていた気がする。

 とは言え追及できない空気を感じる。


 「あの子、鑑定持ちでしたか?」

 「あぁそうかアリシアの鑑定だとレベル差があったか。うん、確かに鑑定持ちだったな」


 お互いの自己紹介も無しに名を呼ばれ話が進めば鑑定を疑うのは当然だろう。

 正直、鑑定どころで無い並びをしていたが。

 

 (俺の分は鑑定以外のスキルか、もしくは複合でかな。ステータス数値までは見られてはいないだろうけど)


 本来ならば鑑定レベルの差でカイセの情報が見られる事は無いだろうが、その他のスキルがどこまで働いていたか分からない。

 何かが出来る相手とも思えないが、貴族である以上は一応は警戒しておくべきだろう。


 「結局何だったんだろうか」

 「じー……」

 「だからそれやめて」


 そうしてよく分からない事態に遭遇しながらも、本題を終えたカイセとアリシアは《転移》で村へと帰って行った。




 ――それから一週間後。


 「……来ないなぁ。取引の時間は過ぎたよな」


 いつものお米の取引日。

 いつもなら既にアリシアが来ている時間。

 だが一向に現れる気配はない。

 《転移陣》の改良版再設置はまだだが、指輪はそのままなので問題はないはずだ。


 「……まぁ行ってみるか」


 最近は向こうから来てくれるために甘えていたが、今回は自分から出向く事にした。



 「――コンコン……こんにちは、カイセです」


 アリシアの家の扉をノックするカイセ。

 すると中から走る足音が聞こえてくる。


 「――こんにちは、カイセ様」


 ここはアリシアの実家。

 にも関わらず、中から出てきたのは"神眼"の少女エルマであった。

 ――しかも何故か下着姿だ。


 「エルマ様!何でそんな恰好で出て行くんですか!」

 「恰好……きゃあ!?」


 どうやらエルマは自身の現状に気づいていなかったようだ。

 慌てて腕で体を隠す。 


 「ご…ごめんなさい!カイセ様と聞いてつい……」

 「とにかく中へ!……ボソッ(変態)」


 ぼそりと呟かれたアリシアの言葉と共に、この家の扉は再び閉ざされた。


 「……え、今のって俺が悪いの?」


 そんな事を考えながら、そのまま家の前で待つ事十分。

 再び扉は開かれた。


 「……こんにちは、カイセさん。どうぞ中へ」


 アリシアに招き入れられ、そのまま家に、そしてアリシアの部屋に通される。

 すると、そこに居たのはエルマ……らしき人物。

 適当な箱を頭から被って、部屋の隅に小さく座り込んだ少女らしき存在だった。


 「……エルマ様、何をしているんですか?」

 「その……恥ずかしくて会せる顔が……」

 「なら帰って貰いますか?」

 「それは駄目です!ちょっと待ってください……すーはー……大丈夫です!」

 「箱は取りましょうね」

 「あ、失礼しました」


 そしてようやくエルマが姿を現した。

 当然服は来ている。


 「……こんにちはカイセ様。先程はお見苦しいものをお見せして申し訳ありませんでした」

 「あぁ、いや、別に見苦しくは……気にしなくていい。ところで何でここに?」

 「友達(・・)のお家に遊びに来ました」


 友達……アリシアか。

 この数日でいつの間にそんな話が進んでいたのだろうか。


 「そうですわ。こちらに来る時には渡して欲しいと言われていたものがあるのでした」

 「……ん?俺に?」

 「はい。えーっと……こちらの手紙ですね」


 エルマから手渡されたのは一通の手紙。

 紙質も封蝋も見覚えがある。

 嫌な予感がしつつも、丁寧に開いてゆく。

 そして手紙を読んだ。


 『義妹を泣かせたら承知しませんよ? by聖女』


 要約するとこんな感じであろう。


 「……聖女様と仲良いの?」

 「はい。うちの家とは聖女に成られる前から交流があり、今は兄の婚約者(・・・)なので、私も仲良くさせて頂いてます」


 エルマの兄。

 グリマは先日のお見合いでも分かるように、婚約者はいない。

 つまりは"ダンジョン攻略者"ダルマの噂の婚約者がジャンヌだったと言う事になる。

 それ自体は特に構う事のない話なのだが……。


 「……もしかして今日ここに来たのって」

 「ジャンヌ様のアドバイスです。『今日遊びに行けば良い事があるわよ』というお話だったのでアリシアさんにお願いして今日遊びに来ました。そうしたらカイセ様にもお会いする事が出来ました!」


 これはあれか。

 聖女ジャンヌの情報網には、アリシアとの取引日に関する情報も掴まれているのか。

 身内だけの話だったはずなのだが。


 ――後々聞いてみれば、アリシアと友達になるという話も大元はジャンヌのようだ。

 もちろん最終判断はエルマとアリシア、当事者の意志によるものだ。

 両者が相手と「友達になりたい」「友達になっても良い」と思ったからこそ成立した。

 決して権力や損得だけで繋がった縁ではない。

 だがそのきっかけ自体はジャンヌの与えたもの。


 (……何を考えてるか、確かめに行く必要があるかな?)


 結局その場は、エルマの門限の時間に合わせて適当にお喋りをしてお開きとなった。

 とても良い笑顔で去って行ったエルマ。

 一人で来たのかと思いきや、きっちり村の外には馬車と使用人が控えていた。

 気配は村の中までしか探っていなかったため、見落としていた。

 使用人なのだから、せめて家の外ぐらいには控えていればいいのにと思ったが、そうすると先程の出会い頭の一騒動も知られてしまっていたので、カイセ的にはセーフだったのかもしれない。


 その後、アリシアとの取引を終えて帰宅したカイセ。

 そして翌日。

 話を聞くためにカイセはいつもの教会へと向かった。

 

 

22/6/27

一部誤字を修正しました。

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