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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第三章:貴族の婚活騒動
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お見合い当日



 「…………」

 「あの…?」

 「…………」


 お見合い当日。

 集合場所であったアリシアの家の前にやって来たカイセ。

 そこに待っていたアリシアの兄、アロンドから無言の圧力を受け続けていた。

 その目は「アリシアに何かあったら殺す」「アリシアを守れ」「お見合いはキッチリ潰せ」と雄弁多弁であった。


 「お待たせしました。おはようございますカイセさん」

 「あぁおはよう。……なるほどな」


 そこへやって来たアリシアは、シンプルなドレスを身に纏っていた。

 デザイン的な好みがシンプル思考のカイセにはとてもいい感じに見えていた。


 「何が成程なんですか?」

 「いや、お見合いならもっと派手なやつとか、元聖職者らしく清楚な感じで来るかと思ったんだけど意外とシンプルだったからな」

 「そういうのは本気の本命や現役の方々が纏うものです。私は断る前提で、現役でも無いのであくまでも普通の平民としてシンプルなものでいいんですよ。新しく仕立てるのも勿体ないですし。それともカイセさんはもっと派手だったり露出が多いものが好みでしたか?」

 「待ってアリシア。そういう発言は本当に待って」


 アロンドの視線がより強く鋭くなる。

 「うちの妹をそんな目で見ていたのか?」とでも言いたそうだ。

 アロンド(シスコン)の前でするような話ではない。


 「……そうですね、失礼しました。ですがそう言うカイセさんもかなりシンプルな服装じゃないですか」

 「俺はそもそもシンプルなのが好みだし、それに俺は付き人・随伴者…あくまでもおまけなんだから主役たちよりも目立つのは駄目だろ。元々装飾品で着飾ってたようなものだから、一通り外せばこんなものだよ」


 纏う装飾品は一つだけ。

 自前のマジックアイテムのみで、その他は全て外した。


 「……安心してください。そこそこ似合ってますよ」

 「そこそこって褒め言葉なのか?」

 「どうでしょうかね?…私の方はどうですか?」

 「うーん、まあまあかな」

 「そこは「似合う」と言っておくのが男の甲斐性では無いですか?」

 「嘘がつけない性格だから」

 「嘘つきですね。今までちょいちょい嘘ついてたじゃないですか」


 そんな感じの他愛もない会話をしながら、約束の刻を待っていた。

 シスコンの視線は完全に無視した。

 そして時間ちょうどに迎え(・・)はやって来た。


 「お待たせして申し訳ございません。どうぞお乗りください」


 やって来た一台の馬車。

 そこから降りてきたのはカイセの知らぬ人物だった。


 「よろしくお願いします……行きましょうカイセさん」

 「ちょっと待て」


 そこをアロンドに静止させられる。

 カイセのほうに用があるようだ。


 「――任せたぞ」

 「……分かった」


 そしてカイセも乗り込み、馬車は目的地に向けて出発する。

 向かうはお見合いの会場。

 貴族アーロン家の屋敷だ。


 (そう言えば馬車は初めてだな。さてさてどんなものかなと)


 いつもは徒歩か《転移》なので、こう言った乗り物に乗るのは初めてだ。 

 現代日本ではあまり経験する機会の無い、異世界らしい乗り物。

 カイセは少し楽しくなっていた。

 ……だがそれも最初だけであった。


 (暇。すこぶる暇)


 馬車の道中。

 遣いもアリシアもただ静かに佇むのみで、最低限の会話しかない。

 ただただ静かで、ただただ暇なのだ。


 (付き人がその空気を壊す訳にはいかないから我慢するとして……だが暇だ)


 目的地までの数時間。

 ただただ静かな時が流れていた。

 ――そして馬車は目的地へと辿り着いた。

 今回初めて足を踏み入れる町、そこにあるアーロン家の屋敷へと。


 「……ボソッ(大きいなぁ)」

 「……ボソッ(貴族の屋敷ですから)」


 目の前にはとても立派なお屋敷。

 これが本物の貴族の屋敷なのか。


 「どうぞ中へ」


 二人は促されるままに中へと案内され、広い部屋へと通される。

 そして相手はすぐにやって来た。


 「よ…ようこそいらっしゃいました!」

 「グリマ様。まずは呼吸と身なりを整えてから――」


 慌てた様子でやって来たのは、件の次男。

 【グリマ・アーロン】と、知った顔であるその従者〔フロスト〕であった。


 

 

 個体名:グリマ・アーロン

 種族:人族

 年齢:18

 職業:貴族

 称号:―


 生命 130

 魔力 080

 身体 110

 魔法 050

 

 魔法(風) Lv.2


 特殊項目:

 鑑定 Lv.2

 強運補正 Lv.2

 言語理解(全) Lv.1

 完全記憶




 ようやく視る事の出来た貴族グリマのステータス。

 特筆すべきところのない平凡な数値とも言えるが、たった一つだけレベル表記のない〔完全記憶〕という項目。

 文字通り、見たものは絶対に忘れないという事のようだ。


 「お招きいただきありがとうございます。私はアリシアと申します。こちらは付き添いをお願いしました友人のカイセ様です」

 「初めまして(・・・・・)、カイセと申します」


 アリシアに合わせて礼をする。


 「そうかよく来た。だが早速で悪いが、アリシア殿と二人きりで話をさせてくれないか?」 


 グリマからの指示。

 それでは付き人としての意味が無いように思うのだが……。


 「分かりました。カイセさん、大丈夫です」


 アリシア本人がそう言うのでは、カイセとしては何も言えない。

 カイセはおまけ。

 状況判断はアリシア任せなのだ。


 「こちらへどうぞ、カイセ殿」

 「……それでは失礼します」


 アリシアとグリマの二人を残して、カイセとフロストは部屋を後にした。

 そしてそのまま別の部屋へと案内される。


 「――カイセ殿、いきなりで申し訳ないのですが、お願い(・・・)したいことがあります」

 「お願いですか?一体何を……」

 「単純な事です。このお見合いが…そして婚姻が成立するように協力して欲しいのです」

 「あ、そういう話なら無理です」


 即答。

 相手には申し訳ないが、そういう話は受ける事は出来ない。

 両者についてしっかり知る者としてのアドバイスならともかく、カイセはグリマについて何も知らない、今回が初対面の相手だ。

 そんな相手の手伝いで、アリシアの心を誘導するつもりはない。


 「報酬はきちんと……いえ、そういう問題ではありませんね。失礼しました」


 言いかけて踏み止まるフロスト。

 お金でどうにかなる問題で無い事は理解しているようだ。

 

 「少し焦ってしまったようです。協力出来ないと言うなら潔く引べきですね」

 「そもそも何でそこまで?好きな人と結ばれて欲しいって考え自体は理解しますけど、わざわざ相手の付き人を買収するような動きまで見せて、そこまで必要なんですか?」

 「それは――」


 何かを語ろうとするフロスト。

 だがその言葉は、外から聞こえた歓声に遮られる。


 「まさかもうお帰りに……」


 次の瞬間、この部屋の扉が開く。


 「グリマ!今帰って……こちらではなかったか。お、久しぶりだなフロスト」

 「お帰りなさいませ〔ダルマ様〕」

 

 フロストが跪く。

 現れたのは【ダルマ・アーロン】。

 件のダンジョン攻略者である長男だ。

 マッチョなフロストよりも更にガタイも良い、複数の意味でアニキと呼べそうな体格だ。


 「あぁ、すまん。客人が居たのか……お初にお目に掛かる。この家の長男で次期当主である〔ダルマ・アーロン〕だ。急な横入りで邪魔して悪かった」

 「いえ…私はカイセと申します。私はあくまでもおまけ、付き添いで来た者ですので、あまり気にされる必要はございません」

 「付き添い……それはグリマの見合い相手のか?弟が見合いをすると聞いて飛んで帰って来たのだが」 

 「ダルマ様。グリマ様は別室にて二人きりでお相手とお話をされています。ですので今は――」

 「そうか!ならば挨拶をしてこねばならないな!」


 そうして人の話を最後まで聞かずに、ダルマは余所の部屋へと向かう。

 

 「お待ちくださいダルマ様!……カイセ殿、申し訳ありませんが」

 「あ、はい。どうぞ行って来てください。というよりも俺もついて行ったほうが良いですか?」

 「……そうですね。お手数ですがお願いします」


 そのままカイセとフロストはダルマの後を追った。


 

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