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めがぽか転生 ~女神のポカに振り回される俺たちの異世界人生~  作者: 東 純司
第二章:聖剣依存の凡人勇者
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事情聴取



 「何というか……今後は初めての場所に《転移》するのは控えようかな」


 王都へと向かう三度の《転移》。

 ハッキリって散々であった。

 

 「一度目は襲撃中の盗賊。二度目は〔ゴブリン〕の群れ。そして三度目(いま)も盗賊。俺の《転移》先が厄介ごとの湧きスポットにでも設定されてるんじゃないかって疑う遭遇率だぞ」


 二度目の転移先ではゴブリンの群れが待ち構えていた。

 ステータスが100に届くかも怪しいゴブリンは魔境の森では生き残れない為、存在は知っていたが実物と遭遇するのはこれが初めてであった。

 突然の乱入者に興奮状態のゴブリンを取り逃がすと被害者が出る可能性がある以上、殲滅は仕方ないと言えば仕方ないのだが若干申し訳なかった。


 「で、コイツらはどうするかなぁ……」


 そして三度目の転移先であるこの場所。

 今回は被害者もおらず、どうやら待ち伏せていた一団であったようなので、荒事前にまとめて眠らせる事に成功した。

 ただ問題なのは、任せる相手が居ない以上はカイセがコイツらの始末をしなければならないという点だ。

 

 「仕方ないか……まとめて引きずって、兵士にでも引き渡すか」


 普段ロープ代わりに使っている植物の蔓で一団を縛り上げ、十数人をそのまま引きずっていく。

 流石にちょっと重かったので、カイセが普段自身に掛けている〔制限〕を一段階外して引きずる。

 盗賊達の服がボロボロになっていくがそこは流石に知らない。

 ただし裸になられるのは困るというか本気で目の毒なので、そこは加減して引きずろう。

 おっさん共の裸なんざ見たくはない。



 ――そしてそのまま三十分程歩くと、目的地に辿り着く事が出来た。


 「あれが〔王都の門〕かぁ……流石にデカいなぁ」


 普段が大自然の中で暮らしているカイセは、この手の建造物を見る度に少し感動するようになっていた。

 

 「止まれ!」


 そんな王都への入り口に近づくカイセを、当然ながら門兵が出向き静止させる。

 一人の男が十数人を引きずる構図は、どう見ても不審で止めるべき光景だ。


 「後ろのコイツらは全員盗賊です。道中で捕まえたので引き渡したいのですがお願いします」

 「盗賊?そこで待て。誰か〔鑑定機〕を持ってこい!」


 〔鑑定機〕は鑑定用のマジックアイテム。

 こういった然るべき場所に配備されている道具で、スキルによる〔鑑定〕とは違い、レベル差により弾かれる事もなく視る事が出来る。

 ただし表示項目は二つのみ。

 〔名前〕と〔職業〕だけだ。

 

 「――名は〔カイセ〕、職業は〔自由人〕か……まぁ問題は無いな」


 転生直後の〔未設定〕や〔なし〕を無職とするなら、〔自由人〕はフリーターのようなものだ。

 カイセは何かしらの職に付いている訳ではないが、物々交換の取引や、民泊での収入などがあったために〔自由人〕に変化したのだろう。


 「そっちはどうだ?」

 「……申告通り、全員盗賊だな。二人ほど〔名持ち(ネームド)〕も居る」

 「そうか。そっちは任せた。自由人カイセ、私に付いてきてくれ」


 カイセは言われるまま詰所の部屋へと案内された。

 そしてそのまま促されて椅子に腰かける。

 すると案内した門兵とは別の人物が対面に座った。


 「申し訳ないが少し話を聞かせて貰いたい。まずは何処から来た?」

 「聖教都市から」


 流石に魔境の森ラグドワからとは言えないため、一応間違いではない言葉を選ぶ。

 昨日の買い物もあるので、教会本部のある聖教都市から森の家を経由して王都へと来たと思えばルートとしては間違いではない。

 まぁ詭弁だが嘘発見器の類は無いため、顔に出さなければ問題は無いと思う。

 門兵が何か書き出しているが、恐らく調書か何かだろう。


 「教徒か?」

 「いえ、ただの一平民です」

 「聖教都市か……この距離を歩いてきたのか?荷物もそのバックと小袋だけか?」

 「途中までは《転移》を、残りは徒歩です。荷物は〔アイテムボックス〕を使えるのでそこに主だった物はしまってあります」

 「転移は自前か?」

 「一応心得があるので」

 

 ここも嘘はついてない。

 アイテムボックスはそのまま真実であるし《転移》が使えるのも事実。

 ただここで門兵は一つ思い違いをしている。

 常識をもとにして、転移を使ったのはスタート時の一度、旅路のほとんどを歩いてきたと考えている。

 だが実際は三度の転移で目前まで来て、歩きは三十分程度。

 カイセは当然指摘しないし、正直指摘しても意味がない。


 「転移にボックスか。両持ちなら商人なりどこぞのお抱えなりになれば大儲け出来るだろうに……何なら俺が国へ推薦状を書いてやろうか?」

 「いえ、そういうのにはあまり興味が無いので。残念ですが特別報酬(ボーナス)は他を当たってください」

 「そういう知識もあるなら、ただの無知な田舎者では無さそうだな。大人しく他を当たるよ」


 国は優秀な人材や特殊な能力(スキル)を持つ者を積極的に引き込むために、紹介者にも特別報酬(ボーナス)を支払う事がある。

 そう言った報酬を狙うには、人と多く接する門兵という役職は良い立ち位置なのかもしれない。

 この門兵も何処か手慣れた感があるので、今までも色んな者に声を掛けて来たのだろう。

 押せ押せで来ない辺りに引き際の良さを見て取れる。

 

 「それで、王都へ来た目的は?」

 「王都に住む知り合いに会いに来るついでに観光に来ました」

 

 個人的にはどちらかと言えば観光をメインにしたいのだが。


 「盗賊とは何処で遭遇した?」

 「ここから三十分ぐらいの場所ですかね。道から少し外れた場所ですが、寄り道をした所で潜んでいるのを見つけてしまって……仕方なく魔法で眠らせました」

 「あの人数をまとめてか……転移に比べれば劣るが、それはそれで相当だな。傷も無いようだし」

 「先手で全員眠らせましたから争いになってませんから」

 「便利なもんだ。そういう事が出来る魔法使いがここにも配属されてくれれば色々と楽になるんだがなぁ」

 「来るといいですね」

 「そうだなぁ……さて、それじゃあもう少し待っててくれ」


 聴取が終わったのか、カイセ一人を残して部屋から出ていく門兵。

 部屋にはカイセただ一人になったが、壁の向こう側に気配がある。


 (……《透視》かマジックミラーのような何かかな?見張られて、試されてるのか?やる気は無いけど変な事はしない方が良さそうだな)


 カイセはアイテムボックスから水を取り出し、一息ついてただ待つことにした。

 門兵は十分程で戻って来た。


 「待たせたな。盗賊側の確認が取れた。小物は一律で〔名持ち(ネームド)〕は手配書の金額で報奨金が支払われる。ほれ、この小袋の中に報奨金が入っている。金額を確認して受け取りにサインか指印をくれ」


 どうやら報奨金の確認と準備で席を立っていたようだ。

 盗賊は引き渡すだけのつもりだったのだが、お金をくれると言うのであれば素直に受け取らせて貰おう。

 金額は……大体民泊の時の収入二日分くらいか。

 王都での観光資金に充てるとしよう。


 「……確認した。それでは盗賊の処理はこれで完了だ」


 ようやく完了。

 面倒な拾い物のせいで時間を取られてしまった。

 だがそれなりの報酬は貰えたので、まぁ我慢しよう。


 「で、こっちは門兵(おれら)の本題だが、〔許可証〕は持っているか?」


 王都に出入りするための許可証。

 別に必須という訳ではないが、これが無いと町に入るのに一々税金が取られる。

 小さな町では使われていない制度だが、主要都市ではどこも採用されている税収制度だ。


 「無いので税を支払います」


 カイセは今しがた受けとった報奨金から税を支払う。

 ……実は隠密リーダーからの手紙には、〔王印の押された謎のカード〕が同封されていた。

 アレを使えば恐らくはフリーパスになるだろうが、そのまま王城直行コースが確定しそうなので仕舞っておく。

 王城へ出向くのは明日。

 今日は観光して、一晩眠って魔力も万全の状態に回復してからだ。


 「確認した。ようこそ王都へ」


 そしてようやくカイセは、王都へと足を踏み入れた。






 「――これから彼を解放するが、誰でもいいから一人監視に付けてくれ」

 「隊長、何か問題でもありましたか?」


 聴取を担当した隊長と、隣の部屋でその様子を見聞きしていた兵士が話をしている。

 内容は隣の部屋で待つカイセという男についてだ。


 「いや、問題が無いと言えば嘘になるだろうが、彼自身には悪意も害意も感じなかった。ただ……《転移》に《アイテムボックス》持ち。魔法もそれなりに使えるようだし、俺の《鑑定Lv.6》まで弾かれた」

 「隊長の鑑定がですか……となるとレベル7以上か特殊なスキル持ちですか」


 王都の外壁に設置された三か所の門の関所。

 そこには常時必ず一人は鑑定レベルが6以上の者が配置されるようになっている。

 本来どのような適性もスキルも、6以上になれば格段に数が減る。

 人材を集めている王国の王城、王都だから取れる手段ではある。


 「転移・ボックス・鑑定に盗賊を捉える実力……そうは見えないですね」

 「そうだな。だからこそ注意したい。見た目と実力が噛み合わない者はどうしても厄介事に巻き込まれやすい。その上で小事を大事にしやすい。彼に罪は無いが念のために注意はしておきたい」

 「そうですね、分かりました。念のため二人ほど付けます」

 「二人…そうだな、人選は任せよう」





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